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時間単位年休の上限日数|気ままに労働雑感

最長労働時間規制や年次有給休暇、割増賃金などの見直しを検討してきた厚生労働省の有識者研究会は11月12日、“議論のたたき台”をまとめました。現行で年間5日間を上限としている時間単位の年次有給休暇について、上限を変更すべき特段の理由がないと指摘しています。他方、政府が今年9月に開いた規制改革推進会議のワーキンググループでは、育児や介護、通院のためなどに時間単位年休を取得したい場合でも、5日間を超えたら半日年休を利用せざるを得ないなどとして、厚労省に対し、時間単位年休の上限の撤廃・緩和を含めた積極的な検討を求めていました。

年休制度は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持・培養を図ることを目的に、法定休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与えるものです。そのうち時間単位の取得制度は、導入(平成20年)以前の年休取得率が5割を下回っていたことを踏まえ、年休の有効活用を促すために導入しました。
労使協定を締結したうえで、労働者が時間単位での取得を請求した場合、年に5日を限度に取得できます。
厚労省の調査によると、約4割の企業が導入しています。

有識者研究会におけるこれまでの議論では、「年休は1日単位での取得が原則であるという本来の趣旨を踏まえると、上限日数の拡大に踏み切るのは難しい」との意見が出ていました。
前述の厚労省調査においても、現在の上限日数(5日)が「ちょうど良い」と考える企業が7割に上り、「増やした方が良い」は17%に留まっています。労働者調査においても、「今のままで良い」(34%)が「上限を拡大すべき」(26%)を上回っています。

労働者の心身の疲労を回復させることが年休の本来の趣旨であることを考えると、時間単位年休の上限の拡大には慎重であるべきでしょう。
育児や介護などへのニーズに幅広く応えるのであれば、上限日数は維持したうえで、導入要件である労使協定の締結を不要とするといった見直しを検討しても良いのではないでしょうか。

労働新聞編集長

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