CAMPFIREコミュニティ「VMV開発」ストーリー
こんにちは。株式会社Rockakuの森田です。私のことを全く知らない方もいらっしゃると思うので、本題に入る前に簡単に自己紹介をさせていただきます。
森田 哲生/株式会社Rockaku 代表取締役
1978年生まれ。編集プロダクションや広告制作会社を経て、2007年にコピーライター事務所「Rockaku」を創業し2012年に法人化。広告制作から、オウンドメディアの企画・編集、ライティング業務全般、企業やブランドの根幹に関わる理念やコンセプトづくり、セミナー講師など幅広い仕事を手がける。
さて、それでは本題です。2022年1月、CAMPFIREコミュニティが株式会社CAMPFIREとは別に、独自のVISION・MISSION・VALUE……いわゆるVMVを発表。本プロジェクトにおいて、プランニング、ファシリテート、クリエイティブを担当させていただきました。
発表されたVMVはこちらになります。
今回のこのnoteでは、CAMPFIREコミュニティの新たなブランディングに向けた動きを社内外のみなさんにより深く理解していただくために、CAMPFIREコミュニティのチームメンバーではない私の視点から、開発ストーリーを記していく……という趣旨で書かれています。少し長い話になると思いますが、興味があるところからでも、ご一読いただければと思います。
なお、詳細はCAMPFIREコミュニティの公式noteでもご紹介しています。
INDEX
01 事業部として独自のVMVをつくろうとした理由
まずは大前提として共有しておきたいのですが、CAMPFIREコミュニティは独立した「企業」ではなく、CAMPFIREの中にある「一事業部」です。
CAMPFIREにも歴としたMISSIONやVALUEがあり、コーポレートサイトでも公開されています。では、なぜ、一事業部が運営母体である株式会社CAMPFIREとは別に、独自のVMVをつくろうとしたのか。まずは、この点について紐解いていきたいと思います。
そもそも、CAMPFIREコミュニティとは、日本のクラウドファンディングの先駆けとして知られるCAMPFIREから派生した「CAMPFIREファンクラブ」というサービスがその原点です。因みに発足時の記事はこちらです。
CAMPFIREのクラウドファンディングが期限付きのプロジェクト支援であるのに対し、ファンクラブはクリエイターやアーティストといったつくり手自身を定額制(サブスク型)で継続的にサポートしていくかたちが特徴です。この「CAMPFIREファンクラブ」が、数年間で独自の発展を遂げ、2019年6月には名称も現在の「CAMPFIREコミュニティ」に刷新しました。
その後も順調に発展を続け、もはや単なるクラウドファンディングの派生サービスではなくなりつつあったこと。そして、その先で、描きたい未来が見えてきたこと。
一方で、CAMPFIREという大看板を背負いながら「何が違うのか」を問われるようになってきたこと、後発の競合サービスも出現しはじめてきたこと……さまざまな要因が重なり、自らの指針をつくる必要性を強く感じるようになった……というのが、今回のVMV開発の背景になります。
02 社内有志で開発をスタート。しかし……!
CAMPFIREコミュニティのメンバーは2020年の4月頃、社内で有志を募り、独自にVMVの開発に乗り出しました。ただ、その議論は難航したそうです。後から当時のワークショップやディスカッションの資料を見せていただきましたが、そこにはなみなみならない熱量と苦悩の形跡がありました。
↑当時のディスカッションの形跡の一部
これはCAMPFIREコミュニティに限った事ではありません。社内メンバーで熱い気持ちをもってVMVやコンセプト開発にトライして、その熱量が故にまとまらなくなってしまった……というケースは実際に少なくないんです。しかし、これは決してネガティブな事ではなく、むしろチームが健全であるという証拠だと思っています。だって、それだけ自分たちのことを考え抜けるって、その時点でめちゃくちゃいいチームじゃないですか。
この点に問題があるとするなら、自分たちにとってのVISION・MISSION・VALUEの位置づけを整理をする前に、熱い気持ちで、「我々のVISIONとはこうではないか?」「いや、こっちの方がVISIONぽくないか?」という議論をはじめてしまっていることだったりします。
何より、自分たちのことを表現することが一番難しいんです。そして、通常業務を進めながらのプロジェクトは、どうしても進めにくくなっていきます……実際、CAMPFIREコミュニティでも同じようなことが起きていました。
かくして、CAMPFIREコミュニティは、「プロに相談してみよう」という結論に達し、コピーライター事務所であるRockakuへコンタクトをとることになりました。
03 VMV開発のカギは「目線合わせ」と「関わるメンバー」
このプロジェクト窓口を担っていたのは事業責任者の村田さん、デザイナーの長さん、PRスタッフの3名からなるチーム。まずはこの3名の方々とさまざまなディスカッションを重ね、プロジェクトのプロセスを組み立てていきました。
初期段階で私が重要視したのは、「目線あわせ」と「関わるメンバー」です。
「目線合わせ」
つまり、外部からコピーライターとして関わる人間は、事業やプロジェクトの経緯を知らない状態からジョインします。よって、同じ問題意識を持つために、背景や経緯をしっかり共有する必要があります。
「関わるメンバー」
これは、大きく言えば経営層が舵を取り、上意下達で進めていく「トップダウン型」か、チームのメンバーを巻き込んでいく「ボトムアップ型」かという判断です。今回は、議論の末、窓口である3名と私とが軸となりつつも、メンバーの意思も取り込んでいけるような「ハイブリッド型」を念頭に入れて、計画を組んでいくことに。
早々に全員参加のキックオフMTGを開催し、私がジョインすることや、プロジェクトの進め方を共有し、ワークショップや投票などの協力を呼びかけることで、約3ヶ月に及ぶプロジェクトが幕を開けました。
なお、今回のプロジェクトは、コロナ禍であることとは関係なく、すべてオンラインで完結しています。全国に散らばるメンバーがフルリモートで独自のチームワークを発揮しているCAMPFIREコミュニティらしい進め方だったと感じています。
04 自らを定義し直すための「問い」を立てる
キックオフMTG後、最初に実施したのがメンバー全員参加による「コミュニティの再定義ワーク」です。
前述したCAMPFIREコミュニティの成り立ちや、機能、運営状況などを見渡したとき、私は、いきなりVISIONやMISSIONを考えるのではなく、サービスとしての、あるいはチームとしてのアイデンティティを探り、言語化する必要があると感じていました。
しかし、「みなさんのアイデンティティは何ですか?」と、そのまま質問を投げかけてしまったら、質問が漠然としすぎてしまい、思考も議論も進まなくなってしまいます。
だから、初期段階では敢えて抽象度を下げ、具体的なものに光を当てていく方がいいと考えました。そこで着目したのが、「CAMPFIREコミュニティ」のアイデンティティそのものであるサービスネームに冠されている「コミュニティ」という言葉です。
CAMPFIREコミュニティにとっての
「コミュニティ」とはどんなものであるか?
それを、さまざまな隣接サービスと比較し、重複する点、異なる点を議論することで再定義していくワークショップを提案し、実行しました。
↑こちらが実際に行われたワークショップのボードです。クラウドファンディング、オンラインサロン、広義のファンクラブ、サブスクリプションサービス、宗教などと比較を行い、「CAMPFIREコミュニティにとってのコミュニティ」の在り方をあぶり出していきました。
さらに、CAMPFIREコミュニティとして「どんな人たちに目を向けていきたいか?」「どんな反響があったらテンションが上がるのか?」など、顔や声やシーンが具体的にイメージできる質問を続け、回答を集めていきました。
05 ブランド定義と「レターワーク」
最初のワークショップを経て、その中で出た膨大な言葉や視点を集約した結果、さまざまなことが見えてきました。例えば、サービスの原点であるCAMPFIREの精神はしっかりと受け継がれていること、「継続性」がアイデンティティになっていること、共同体としてコミュニティオーナーも、参加するメンバーも、プラットフォーム側も、すべてが平等な関係性を持ち続けていくこと、オンラインサービスでありながら、あくまでも人間と向き合って仕事をしていること……など。
これらを元に「コミュニティの定義」をプロトタイプとして制作しました。これは、約20人からなるCAMPFIREコミュニティのメンバーから発散された言葉や視点から、「あるべき姿」を導き出すという最初の言語化作業となりました。
ポイントは、いきなり短いセンテンスをつくるのではなく、多様な要素をグループ化して、ブランドとしての輪郭を描くこと。ちょうど、星座が描く図像と星の関係に似ています(この例え、通じるかな……)。因みに、今回つくったこの定義は、後にVALUEの原型にもなっています。
そして、この定義を元に、今度は「語り」をつくります。よくナラティブなどと言われるモノですが、私の場合、これを「レターワーク」と呼んでいます。何をするかというと、ここまでの過程を踏まえて、ブランドの人格、背景、想い、届けたい相手などを仮に設定して、自己紹介を含んだ手紙を書くんです。
↑こちらがその試作の手紙です。初期のワークショップで得た視点や言葉を、一つのブランド、ひとつの人格からどう語るか?また、外部からやってきた人間としてきちんと消化・吸収できているか?といったポイントをすり合わせていく重要な作業です。
なお、この「レターワーク」を原型として、新しい「ABOUT US」もつくられました。
06 過去、現在、未来を構造化する
さて、ここまでのワークで見えてきたものを時間軸で見ていくと、「過去及び現在のCAMPFIREコミュニティの姿」ということになります。実際の業務を通じて体験したこと、感じたことが答えになるよう、問いを設定しています。これらは多くの場合、MISSIONとVALUEをかたちづくる素材になっていきます。
難しいのはVISIONです。VISIONをかみ砕いてざっくり説明すると、「メンバーで共有し、目指していく未来の風景」といった感じでしょうか。つまり、まずは未来について話し合う必要が出てくるというわけです。
しかし、ここでもいきなり「どんな未来を描きたいですか?」なんて問いを立てても、抽象的で方向性が定まりにくくなります。そこで、私が最初に用意したのが、CAMPFIREコミュニティが存在しなかった世界(過去)→リリースされ利用されている世界(現在)→さらに発展していった世界(未来)→より広がっていった世界(もっと未来)を構造化することでした。実際にその際に描いた図はこんな感じです。
ポイントは「CAMPFIREコミュニティが存在しなかった世界」から描くこと。ここを起点にすることで、根本的な存在価値が可視化されるんです。また、そこが可視化されれば、その延長上にある未来はぐっと共有しやすくなります。このようなかたちで視覚的に「未来」を共有した後、「その未来がどうあってほしいか?」についてディスカッションを重ねていきました。
07 プロトタイピングから投票、そして集約へ
過去・現在・未来の構造化とディスカッションを進めた結果見えてきたのは、CAMPFIREコミュニティが、「自らの意志や力で世界を変えたい」といったいわゆるVISIONとして企業が掲げることの多い方向性ではなく、「ユーザーであるプロジェクトオーナーやそれを支えていくメンバー、一人ひとりの生き方や人生を変えることで、その結果として、世界や文化をより豊かにしていきたい」という意思でした。
このあと、再度、「事業部であり、プラットフォームでもあるCAMPFIREコミュニティにとってのVISION・MISSION・VALUEとはどうあるべきか?」を整理し、最終段階の意識合わせをしていきました。
この時点で、私が設定したMISSION・VISION・VALUEの素材はすべて揃ったと判断し、ここからはプロトタイピングに入ります。まずは8案ほど制作し、窓口メンバーと精査。そこから調整と選別を進め、最終的に4案に絞り、オールメンバー参加による投票を行いました。そして、2度にわたる投票とディスカッションの結果、決定したのが冒頭でもご紹介しているVMVになります。
08 完成はスタートラインでしかない
駆け足でプロジェクトを振り返ってみましたが、いかがでしたでしょうか。CAMPFIREコミュニティという熱くて優しいチームの来た道と、進んでいこうとしている道を、ひとりでも多くの方に共有できたら幸いです。
今回のプロジェクトを通じて、VMV開発は、それこそCAMPFIREコミュニティが提供しているようなオンラインサービス開発とよく似ていると再認識しました。「ローンチしました!」というニュースははじまりに過ぎず、本当の価値を問われるのは運用フェーズに入ってからです。ましてや、VMVが組織内で成果を上げるには、開発の何倍もの熱量と労力が必要になります。
私は一旦、このプロジェクトから離れますが、CAMPFIREコミュニティのVMVは、これから「開発」から「運用」へとフェーズを進めていくことになるでしょう(だから、今後、「デバッグ」が必要になったら、いつでも声をかけてほしいとお願いしています)。
長くなりましたが、引き続きCAMPFIREコミュニティをよろしくお願いいたします。
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