背中を押すパワー
どうしても箸が進まない。
そのような状態にはまる時がある。
前回の食事からは十分な時間が経過している。あれこれ思考を巡らせて、ずっとキーボードを叩いていた。だけど、胸がいっぱいだ。今日は駄目な日かもしれない。不安を引きずったまま、弁当箱の蓋を開ける。
中から現れた肉と玉葱には、黄金の味がかかっている。
重々しい箸を、その一切れにつけてみる。
(ああ、そうだ。これだ)
気がつくと休みなしに箸が動いている。
黄金の味によって動かされている。
(あの不安は何だったのだろう)
不安だから助かったのかもしれない。不安だからこそ今がうれしいのかもしれない。
考えてみればいつもそうだ。
何もできなくなったという時にそれは決まって現れて、何かをさせるようにするのだ。
そんな不思議な力によって私は生かされているようだ。