
未来キャッチャー
気の抜けたサイダーを捨てた。(捨てようとした)けれども、突然現れたグラスがすべてを受け止めていた。呑み込めぬ現実が、澄んだままこちらを見ている。
くすぶった煙草を投げ捨てた。(捨てようとした)けれども、突然見知らぬ者の唇が現れて、煙と誘惑のすべてを引き継いで行った。
「もういらない」
黒い歴史を破り捨てた。
次の瞬間、どこからともなく和パスタが現れて闇を受け止めた。それはきざみのりとなって再生されている。湯気を昇らせパスタはおもてなしの渦を巻いている。いったいそれは何の優しさなのだろう。
「何も捨てられない」
誰かが先回りして保険をかけているようだ。
(私の心は頭から決まっているのか……)
めまいを覚えて橋の上から落ちた。
水面が揺れる。
揺れながら分解されて土に変わる。
綿毛のように体が軽くなる。
生暖かい風の抵抗。
結論の遅延。
システムの再構築。
ズーム。
馬の背中が私の身体を受け止める。
(私もやっぱり捨てられない)
景色が変わり始める。
新しい土地で生き直すのだ。
「私は馬に乗れるんだな」