小説家になろう
「ここにいればなれると思ってるの?」
「別にそんなつもりはないですよ」
「甘いんだよ」
「はい?」
「そんなんじゃあ小説家になんてなれないね」
チャカチャンチャンチャン♪
「構いませんよ」
「静観の姿勢か」
「いや、本当にお構いなく」
「人の力は借りないってか」
「いえいえ」
「そんなに甘くはないんだよ」
「甘いとも思ってませんし」
「それが駄目なんだよ」
チャカチャンチャンチャン♪
「何がいけないんでしょうか」
「本当に小説家になりたいのか」
「なりたくないです」
「そんなんだからなれないんだよ」
「でしょうね」
チャカチャンチャンチャン♪
「逆になりたいものはあるのか?」
「なりたいものがあったことなんてないけど」
「ほらみろ。やっぱり小説家になりたいんだ」
「思ったこともないです」
「だったらもっともっと思わないと!」
「どうしてかな」
「君はそんなこともわからないの?」
「もうさっぱりわからない」
「自分を隠そうとするからわからないのさ」
チャカチャンチャンチャン♪
「何か買い被られてるのかな」
「そんなこと言ってる奴は小説家になれないんだよ!」
「なれなくていいんだって!」
チャカチャンチャンチャン♪
「決めつけるのはまだ早い!」
「小説小説ってあなたな何なんですか?」
「私はこういう者だ」
チャカチャンチャンチャン♪
「小説家メーカー?」
「私の仕事は小説家を作ること。その方が結果的にたくさん小説ができるからね」
「そういうものですかね」
「そういうものだ」
「自分で書いた方が早い気も……」
「ふふふ。やっぱり君は小説家の卵だな」
「ごめんなさい。他を当たってください」
チャカチャンチャンチャン♪
「わかってるよ。小説家は簡単に手の内を明かさないものさ」
「いいえ。人違いですから」
「時がきたら私をたずねてくれ」
「では、縁がなかったようですので」
チャカチャンチャンチャン♪
「いつでも扉は開いてるからな!」