チープ夜空
「夜空なの。それにしてはチープな星ね。
もしや雨?」
そう見えるなら、
いっそ雨として認められるのもいい。
「やっぱり違うわね。
雨ならもっと繊細でなくちゃ。
傘もないし」
チャカチャンチャンチャン♪
「これを星と思えるかしら。
もしやふりかけ?」
そうだったかもしれない。
星よりもずっと降りやすい。
「いいえ違うわ。
ふりかけにしては彩りに欠ける。
誰がこれでごはんを食べる?
いっそのりの方が進みそうね」
チャカチャンチャンチャン♪
「これは夜空? これが星?
うそでしょ。ふざけているの?
これは砂ね」
「勿論そうです。時を落ちる砂を描きました」
「いいえ。砂にしては寂しい砂ね。
水を運ぶ商人もラクダも見えない」
チャカチャンチャンチャン♪
「やっぱりこれは……」
「虫です」
「意思も脚も節も見えないけど」
「言われてみれば」
「やっぱりこれはチープな星の夜空ね」
「はい」
否定されても、何かに化けることは叶わなかった。
星として出直すしかなさそうだ。
「早くなさい。夜が明けてしまうわ」