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『国産初のリレー式計算機 FACOM138A 起動実験見学!』 ROBO La NIGHT NEXT(仮)2021 1stイベントレポート

Noteにメディアとして投稿するのは初となります。

みなさんはじめまして!
私たちはROBO La NIGHTと題し「ロボティクス×○○○○」をテーマに、創ったり・学んだりを楽しむコミュニティーです(でした)。私、蒲田の富士通というITベンダーに務める加藤と、用賀の松山工業という工業用素材商社の代表を務める鵜久森さんとでゆるやかに開催しています。一昨年から活動をスタートし様々なイベントを展開してきましたが、2021年はさらにその活動の幅を広げるために「ロボティクス」の枠を外すこととしてみたいと思っています。

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■新生ROBO La NIGHT NEXT(仮)が目指すこと

 
今年の活動テーマはずばり「多様性」。
そしてリアルなイベントにこだわる。
この2点を追求していきます。2020年はオンラインイベントでどうにかこうにか凌ぎましたが…私たちがやりたいことは、リアルに現場で、現物を見て、体験してこそ、その価値を実感することができると思うのです。

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とはいえ世界はCOVID-19。ですから、この状況が見えるまで不本意ながら少数でのFacebookグループでの活動という制限を設けさせて頂きます。

まずはこれまでの活動に共感いただいた方々をグループにお招きし、再び多くの方々をお招き出来る日が来るまでコミュニティーを温め続けます!ですので、大変申し訳ありませんが、下記の点をご留意いただければ幸いです。

①コロナ禍が終息するまで、他の方の招待はお控えください><。
②イベントは人数制限があります。ご参加頂けない場合があります><。
③状況によりイベントが延期、または中止になる場合があります><。

ほぼ全ての企画で人数制限が想定されます。間違いなくご参加できない方がたくさん発生してしまいます…。ですので、参加頂けない方にも楽しんで頂けるよう、このようにメディアのカタチでレポートをお届けしていきます。

『国産初のリレー式計算機 FACOM138A  起動実験見学!』

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さて新生ROBO La NIGHT NEXT(仮)の記念すべき1回目は『国産初のリレー式計算機 FACOM138A  起動実験見学!』。2021年4月23日、松山工業の皆様そしてROBO La NIGHT NEXT(仮)の皆様と、私加藤が所属する富士通の川崎工場テクノロジーホールへ行ってきました。

JR南武線 武蔵中原駅から徒歩1分。

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日本を代表するオシャレタウン武蔵小杉からひと駅とは思えない、(様々な意味で)ゆるやか駅。そしてザ、企業!ザ、工場!感あふれる敷地へ…

私は基本蒲田勤務なもので、社員としてたま~にここに出入りする程度の生活をしているので全然知らなかったのですが、野鳥がやってくるレベルの池が敷地内に、実はある。

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■富士通テクノロジーホール

富士通の技術と情熱に触れる-
将来を見据えて開発された多くの技術。人々に愛され続けている製品。脈々と受け継がれてきた、お客様起点の発想。人と人を結びつけ、社会的なテーマを解決する新しいサービスを創り出す。富士通テクノロジーホールには、私たち富士通の尽きることのない情熱が溢れています。時代を代表する製品から世界で活躍する最新のICTまで、心ゆくまでお楽しみください。
ー公式HPより抜粋
https://www.fujitsu.com/jp/about/corporate/facilities/showrooms/technologyhall/

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まずは数分間の富士通が考えるテクノロジー&サービスヴィジョン 的な動画をとっくりと観ます。見事なボウリングのピン配置で座りました。

■まずはヒストリーゾーンへ

富士通の原点ともいえる、電話機。

当時モノヴィンテージ品です。デザインがいわゆる普通の黒電話ともちょっと違って、とても優雅なラインを描いています。現状お写真にあるものが全てです。小キズなどございますが、主観ですが大変保存状態は良いと思います。ノークレーム、ノーリターンでお願い致します。お値引き交渉はございません。

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■そもそも、リレー式計算機って何よ?

富士通の原点が、ここにあるー
いや、富士通どころか、これは日本のコンピューターの原点であり、日本のIT産業の原点と言っても過言ではない産業(稼働)遺産であります。
  
ここ川崎工場にて動態保存されているモデルはFACOM138Aと呼ばれています。もう1台、実は富士通の沼津工場にはFACOM128Bが同じく動態保存されています。沼津工場のほうにも、ぜひ機会をみて行きたいと思っています。

1940年代、真空管式とリレー式のコンピュータが開発されていました。戦後、コンピュータの国産化を富士通にあって力強く推し進めた富士通の技術者池田敏雄は、当時わが国で主流だった真空管式でなく、富士通が得意としていた電話交換機に用いられる「リレー」という部品を応用し、より高度化したリレーを使った開発を目指しました。理由は、当時の真空管の動作があまりにも不安定だったからです。そして国産初の実用リレー式計算機FACOM100を開発することに成功したのでした。
  
富士通のコンピュータの生みの親が池田であり、その遺産がFACOM128BとFACOM138Aということになります。(公式HPより)

https://www.fujitsu.com/jp/about/plus/museum/relay/
  

言い方を現代風に表現すれば…  
FACOM100は零号機
FACOM128Bは初号機!!
この川崎工場にあるFACOM138Aは弐号機!!! (笑)

「所詮、零号機と初号機は開発過程のプロトタイプとテストタイプ。 けどこの弐号機は違う。 これこそ実戦用に造られた世界初の本物のエヴァンゲリオンなのよ。 制式タイプのね!」

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…とまぁそれはともかく、このリレー式コンピューターを用いて初の国産旅客機YS11の尾翼設計が計算されるなど、このプロダクトは日本の戦後産業の発展に、日本の歴史に、間違いなく貢献しているのです。

※YS-11についてちょいとだけ補足

いやー美しい機体だなぁ。
YS-11とは、戦後に開発された国産旅客機として今も唯一の存在です。なお基礎研究設計者には「風立ちぬ」の主人公のモデルとなった堀越二郎氏も!

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半世紀前の量産機が様々に使われながら最近は徐々に引退が進み、国内での現役は航空自衛隊の数機を残すのみです。2021年3月、その貴重な1機がまた一線を退きました。

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このタイミングでその基礎設計を行ったコンピューターに触れるというのも、なんだか縁のようなものを感じてしまい、グッときます。

※今回のお写真はご参加されたメンバーの皆様から提供頂いたものです。特にYS-11については、ご同行されたプロカメラマンとしてデビュー予定の梅村さんに提供頂きました。お問い合わせ・お仕事のご要望などございましたらコメント欄などにメッセージください^^

■いざ、起動実験へ

「では、早速やってみましょう」
電話機の次に、もうリレー式計算機のエリアへ。テンションがまだ上りきらぬまま、いきなりメインイベントが始まってしまう流れですが、みなさん順応して頂けてありがたい限り…。

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どーん!!!!この大げさでノスタルジックな筐体。イイ…。すごくイイ…。地球防衛軍かな

そしてテクノロジーホールスタッフの皆さんが、実に手慣れたオペレーションで起動シークエンスを行っていきます。

対ゴジラ作戦室かな

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「…そしてこれとこれをONにして、最後にこのボタンで計算を走らせます」と、説明のお姉さんのガイドで、鵜久森さんがスタート。カチリと、節度感のあるボタンを押すとスイッチが入り…計算する数式は、「円周率」を算出するプログラム。

この紙がプログラムになっていて…これを読み込ませます。信じられるか?これがフロッピーディスクやCD/DVDといったメディアのご先祖様なんだぜ?!おそらく、当時この穴を空けた位置だけを「むん!」と目を凝らして、「あ、ここが間違ってる」とか言える先輩が居たと思う。だって、かくいう私も、現場SE時代にはバイナリ画面を目を凝らして見て、「あ、ここが間違ってる」とか言えたんだぜ。

キーパンチ

そしてこのタンスのように整然と並ぶリレーが接点となり、01の信号として扱われるわけです。カチカチカチカチ…

りれー

リレー

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美しい…。

カチカチ、ガチャガチャとリレーがON/OFFを繰り返す機械音を立てながら円周率の計算を行うその様子は、ただただ圧巻。限りなく萌えます。いや、燃えます。

これが今我々が日々Youtuberの動画を見たり、くだらないことを呟いたり、メルカリとかでフィギュアを漁ったりしているパソコンやスマホ、そしてCOVID-19の飛沫シミュレーションなどにも一役買った、かのスーパーコンピューター富嶽のご先祖様かと思うと、ひとしおです。


あまりに私たちがその場から離れないので、アンコール計算をやって頂く。

アンコール

「では、次はこの計算をやってみましょうね。(ニッコリ)」
「ありがとうございます!(ニッコリ)」

小僧

リレーのひとつがサンプルとして取り出されており、目の前で現物に触れることができました。結構ずっしりです。

■保存プロジェクト

60年前の製品が今でも安定して稼働している状態は実は奇跡でも何でも無く、定期的なメンテナンスと技術伝承が行われているからに他なりません。

なお、富士通では2007年からこの「リレー式計算機」をこれからも稼働させ続けようという全社プロジェクトが組織されました。定期的なメンテナンスはもちろん、その技術を新たな世代に伝えていく活動が行われてきました。(ということを、社員のワタクシも今回の企画を機に知る。もったいなさすぎる…。こういうの、もっとPRしていきましょう、広報の人たち!)

FACOM128Bは2019年に、FACOM138Aは2020年に無事製造後60年稼働を達成し、本プロジェクトは2020年をもって完結しました。 もちろんこれからもリレー式計算機の稼働継続に努めていきます。とのこと。おぅっ!がんばっていきましょう!

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なんせプレートが「昭和」。フォントもとっても味わい深い。プレートを止めているネジすら愛おしい。60年前に、誰かがこれを留めたんだぜ。

棚卸し

棚卸しの財番管理シールの量の、おびただしさたるや。誰かが毎年、棚卸しをちゃんとしてきたんだぜ。

■その他の激ヤバ展示たち

メインイベントとして予定していたリレー式計算機の起動実験ですが、もちろんこれだけではありません。テクノロジーホールにはリレー式計算機の当時の設計書 (手書き)原本やマニュアル類も保存されています。

設計図

手書きの設計書は、当時の技術者が費やした情熱がそのまま注ぎ込まれていて、オーラが…間違いなく紙面からオーラが静かに、しかし確実に発せられています。本当にずっと見ていることができます。(ちなみに、国立科学技術博物館にはMAZDAサバンナRX-7の実物大ボディの断面R設計書が展示されていまして、あれも大好きです。私加藤はあれをまる半日見ていたことがあります。)

その他にもOASYSワープロやFM-TOWNS(!懐かしい。このへんは知ってるぞ。。トランペットが欲しい黒人の少年状態で、家電量販店で遊びまくっていたぞ。歳バレるけど)など、テクノロジーが進歩しどんどんパーソナルなデバイスへと進化していく様子や…

カセット

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「実はこんなこともやってます」シリーズ 海底ケーブルのブースター

海底

光ケーブルといえど一定区間ごとにブーストをかけないと途中で減衰してしまうため、太平洋を横断する光ケーブルには約100kmごとにこのブースターが間にかませてあるのだとか。世界規模でこれを手掛けているメーカーは世界に4社。うち2社がウチとNECさんなのだそう。たいへんな水圧に耐えるための構造になっているため、これまたテクノロジーの結晶なのです。

■最後はスパコン「京」&最近のテクノロジー体験へ

実は、今回訪問するにあたって事前打ち合わせをテクノロジーホールの皆さんとさせて頂いたのですが、「たぶん、このリレーコンピュータからTOWNSあたりで止まってしまい、皆出てこなくなるとおもってます」とお伝えしていましたが、まさにその通りで…もう本当にこのへんでおなかいっぱい。ただ、「せっかくなのでできるだけ他の展示物も観て頂きたい」という加藤とスタッフの皆さんの希望もあり、やや急ぎ足で次のゾーンへ。世界に誇るスーパーコンピューター「京」のラック1台がまるまる展示されている部分で、また皆さんの足が止まります。

京

企業秘密な部分もあるため、ここあたりからは詳細なお写真はありません、ごめんなさい…。こちらで皆さんが食いついていたのは…その基盤ユニットの「溶接」の精度。「こんな綺麗な溶接痕、なかなか見ないぞ…」とひそひそ語りあうメンバー。さすがはROBO La NIGHT NEXT(仮)の皆様。観点がそこ。

京の展示に加え、近々「富嶽」のラック展示も予定されているそうです。展示が更改されたら、今回ご参加出来なかった方もごいっしょにまた来ましょうね。

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ひとの動作をものの見事にセンシングし、体操競技の採点に活用しているシステムデモンストレーションにも、とても興味をもって見て頂きました。これ、ぜひTOKYO2020の体操採点に使ってください!IOCそしてJOCのみなさん。忖度なしでセンシング、採点できますよ。

■まとめ

わずか1時間あまりではありましたが、社員の私でもなかなか見ることができない貴重な歴史展示に触れることができた時間でした。「富士通?パソコンとかエアコンとかの会社でしょ?」という皆さんの認識は決して間違っていないのですが、世の中の特に社会基盤とカテゴライズされる金融機関様の基幹システムや、それこそ国防や政府官公庁様のシステム、交通系システム、治水システム、工場や流通現場の管理システムなどなど…ありとあらゆる分野の「止まったらタダでは済まない」部分のシステムを企画、開発、納入から保守まで一貫して担当させて頂いている会社でもあります。そのほとんどは、みなさんの目に触れることはほぼありません。世の中の裏の裏のほうでひっそり動いている、水道管のようなもの。

かのリレーコンピューターが製造されてから60年が経過しているわけですが、実際にインターネットやスマートフォンで様々なモノゴトがコンピューターでそしてオンラインで処理されることが一般的になったのは世界的に普及し天下統一したWindows95をひとつの目安と考えても、たかだか25年ちょっとで、実は数えられるくらいの年月しか経過していないのです。その長いようで短い年月の中で当たり前のように稼働しているネットの世界の裏側では、日々試行錯誤しノウハウを積み重ねている名もなきエンジニアたちの仕事があってこそ。と、これを機にほんの少しでも思って頂ければ嬉しいです。

そして、これは私たちIT業界に限りません。缶コーヒーのCMだったでしょうか?「世界は誰かの仕事で出来ている」というキャッチフレーズのCMが、私は大好きでした。今こうして電気が止まること無く各家庭に届くのだって、スーパーで新鮮な野菜や魚がいつでも買えるのだって、宅急便が1~2日でほぼ全国に届けられるのだって、傷んだ道路が夜中の工事でいつのまにかキレイに舗装し直されているのだって、全ては誰かの仕事で成り立っていることです。私たちはそういう世界で生きています。

冒頭にも書きましたが、2021年の活動テーマは「多様性」です。多様性といいますといわゆるSDGsとかなにかものすごく大層なことや、性的マイノリティな人たちに理解がありますよ!とか大上段に構えないといけないような、何か大変なことだ、というイメージを持ってしまいがちではないでしょうか?でもそんなことはないと思うのです。世の中には実に様々な事があって、様々なひとがいて、様々な仕事があって。その知らないこと、観たことがないことに一歩踏み込んで観てみる。体験してみることから始めてみる。これって「多様性」を考えるうえでのとても大きなファーストステップだと思うのです。それが楽しみながら体験できたら、こんなに素敵なことは無いと私たちは思うのです。

いかがだったでしょうか?

最後面倒くさい話をしてしまいましたが、「多様性」を軸にこれからもいろいろな場所やモノ・コト、まじめなものも、B級サブカルなものも、たくさん体験していく機会をつくっていきたいと思ってます。次回は5月下旬頃に企画を予定しています。乞うご期待!

記念

そして、お忙しい中わがままを聞いて頂いたテクノロジーホールの皆さん、本当にありがとうございました!

最後まで読んで頂き、ありがとうございました^^


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