ロック・ポップスと影響し合うニューソウルアーティスト
今回は60年代後半から始まるニューソウルシーンにおいて欠かすことのできない、白人アーティストとのつながりについて触れてみたいと思います。
白人のロック・ポップアーティストと、この当時の黒人アーティストとはお互いに影響し合う存在でした。当時、キャロル・キングはデビュー当時のダニー・ハサウェイのアルバムを音楽関係者に配って回っていたようです。
最も有名なところでは、キャロル・キングが作曲し、ジェームズ・テイラーが歌って全米No.1ヒットした「You’ve Got A Friend」を、ダニー・ハサウェイ&ロバータ・フラックが歌いこちらも大ヒットさせたという事例。
70年代以降のキャロル・キングの作品はソウルミュージックからの影響を感じることができるし、ダニー・ハサウェイやロバータ・フラックのように白人ソングライターの曲を独自の解釈でカバーするアーティストも登場します。
両者は音楽的な部分の影響だけではなく、60年代後半から、既成社会への反発・反戦という動きは黒人・白人に共通して起こっており、ウッドストック・フェスティバルをピークに、その後はより内省的で個人的な詩の内容が多くなるのも共通している部分です。
アイズレー・ブラザーズも白人シンガーソングライターの感覚を取り入れたアーティストで、名カバーを多数残しています。
こちらは、スティーブン・スティルスの「Love The One You’re With」のカバー。オリジナルもアコギのカッティングといいハモンドオルガンの使い方にソウルの要素を感じる作品ですが、アイズレーのバージョンはオリジナルの雰囲気を残しつつ、よりグルーヴ感のある仕上がり。何と言ってもロナルド・アイズレーの歌が堪りません。
もう一つアイズレーで、こちらはキャロル・キングのカバー。名盤『つづれおり』の次に発表したアルバム『Music』より「Brother Brother」。この『Music』、個人的には『つづれおり』よりも好きで良く聴きます。名盤ですのでぜひ。
この「Brother Brother」自体、タイトルからも想像付くようにマービン・ゲイやダニー・ハサウェイなどのニュー・ソウルのアーティストの影響を受けています。
アイズレーは上にあげた以外にもトッド・ラングレン、ジェームズ・テイラーなど多くの白人アーティストのカバーを残していて、彼らの代表曲「Summer Breeze」も実はシールズ&クロフツという白人フォーク・ディオのカバーです。まさにアイズレーはカバー名人といった感じです。
アイズレーに負けていないのがボビー・ウーマック。彼も白人ソングライターの作品を多くカバーしています。
ご紹介するのはジェームズ・テイラーの代表曲「Fire And Rain」。
他にもビートルズのカバーなどを独自の解釈でカバーしています。また、ボビー・ウーマックは声質からオーソドックスなサザンソウルのイメージがあるかもしれませんが、作る曲はポップス・ロックなどの要素を取り入れた非常に洗練された物になっています。
今回は互いに影響し合う白人シンガーソングライターとニューソウル期の黒人アーティストとの関係性を、カバー曲ととも紹介させてもらいました。切磋琢磨する関係性、素晴らしいですね。
ソウルアーティストのカバーするロック・ポップス曲の名カバーはまだまだあるので、次の機会に紹介させてもらいます。
本記事で紹介した曲も含めたSpotifyプレイリストも作成しましたので、よろしければこちらも是非聴いてみてください。