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GROWモデル VS 8フレームアウトカム
コーチングで多用される「GROWモデル」と、NLPで使われる「エイトフレームアウトカム」。一見似ているように思えますが、実際に扱ってみると異なる点も多くあります。この記事では、両モデルの概要と特徴、そして実践上の使い分けを交えた考察をまとめます。
1. GROWモデルとは
GROWモデルの構成要素
G (Goal):目標設定
R (Reality):現状把握
R (Resource):目標達成をサポートする資源
O (Option):行動選択肢の検討
W (Will):行動の意思決定・実行宣言
通常は「GROWモデル」という呼び名で定着していますが、本記事で取り上げているように「Resource」を別途強調する場合、Rが2つになることもあります。いずれにしても、セッションの流れが分かりやすく、ビジネスや個人の目標設定など幅広い領域で活用できる汎用的なモデルです。
GROWモデルのねらい
クライアントが明確なゴールを設定する
今の立ち位置とのギャップを認識する
解決策・資源を洗い出しながら、実際に行動に移せるようサポートする
コーチ側としては、各段階でクライアントの発言をしっかり傾聴し、必要に応じて質問を深めることで、「抽象的な目標」を「具体的なアクション」に落とし込むプロセスを支えます。
Point:
・GROWは汎用性が高く、どんな目標にも対応しやすい。
・コーチの質問力次第では深堀りも可能だが、時間がかかる傾向も。
・「Resource(R)」をどれだけ引き出せるかがカギになる。
GROWモデルについての詳しくは、リンクを幾つかお示ししておきます。
2. GROWモデルの基本質問
実際のセッションでは、以下の基本質問をベースに、多様な質問を組み合わせて進めます。30〜40分程度かけて丁寧に対話していくことが多いです。
Goal: あなたは何を目標とする?
Reality: 目標達成を10点としたら、今は何点?
Resource: 目標達成に使えるもの、サポートしてくれる人やスキルは何?
Option: 残りの△点を埋めるために、どんな行動案がある?
Will: いつ、何から取り掛かる? それをどのように実行・継続する?
実践上の留意点
現状と目標のギャップが大きい場合は、目標を細分化する質問をするなど工夫が必要。
リソースを引き出す際は、“過去の成功体験”や“周囲のサポート”など、視点を増やす質問が有効。
セッション時間が限られる場合は、Optionの部分をシンプルにすることもある。
Point:
・質問ごとにクライアントの気づきを促すのが重要。
・実際には各ステップごとに複数の質問を組み合わせる。
・時間制限やクライアントのリソースが乏しい場合は、別の補助質問を用いるなど柔軟性が求められる。
3. エイトフレームアウトカムとは
NLPコーチングのフレームワークの一つとされますが、文献によっては掲載がなかったり、出どころがはっきりしない点もあります。そのため、“和製NLP”の一部の流派で活用されている可能性もあり、海外文献ではあまり見つからないという特徴があります。
エイトフレームアウトカムの特徴:
質問の順番が固定で、寄り道質問をあまりせず淡々と進める。
15〜20分ほどで一通り回せるため、「短時間コーチング」に適している。
NLPの基本概念である「五感イメージ」や「意味付け」の要素が強調されている。
Point:
・時間が短くても迷走しにくく、確実にゴールへアプローチしやすい。
・出どころが定かではないため、“NLP本流”というより派生モデルの印象。
・目標達成後の未来像や行動イメージの具体化がメイン。
4. エイトフレームアウトカムの質問
あなたは何を目標とする?
目標が達成できたら、どのようにわかる?(五感イメージ)
目標達成は、いつ、どこで、誰と創る?
目標を手に入れたら、人間関係や周りへの影響は?
目標を達成するために使えるものは?
現在、成果を止めているものは?
目標を手に入れたら、あなたにどんな意味がある?
いつ、何から取り掛かる?
エイトフレームの進め方:
順番は変えず、基本的に上から順に質問を投げかける。
クライアントの現状に深く踏み込むより、未来をイメージさせる質問が多い。
質問同士が互いに予測しにくい順序になっているため、クライアントの“思考の化学反応”を狙いやすい。
Point:
・短時間で未来イメージを引き出し、目標達成後のビジョンを描きやすい。
・質問の順番が変えられない分、コーチのアドリブが制限されやすい。
・余計な寄り道をせず、迷走せずに進められる利点がある。
エイトフレームに関する参考情報です。
5. 両モデルの図示例
両モデルについて、現状を左下、目標を右上に配置して図示すると、例えば、以下のようになると思います。
GROWモデル: 現状 (Reality) を明確にし、そこから目標 (Goal) までのギャップを分析し、リソース (Resource) を活用しながら行動 (Option & Will) を設計するイメージ。流れは直線的で分かりやすい。
エイトフレーム: 質問の順番がやや飛び飛びで、行ったり来たりする印象がある。目標→未来イメージ→周囲への影響→現在の制限…など、多面的に目標を眺めつつ行動を決める流れ。
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こう見ると、GROWは、まずは目標と現状のギャップを把握した後に、どう達成するかを考えていくような、分かりやすいモデルだと思います。一方で、エイトフレームは、だいぶあちこちを行き来する構成に見えます。
一方で、このGROWの分かりやすさはセッションを運営するコーチ側にとって、という部分が大きいのかもしれません。私も最初にGROWモデルでコーチングを受けた時には、「今、どの部分の話をしているのか」が、緊張感もあって分かりませんでした。ですので、クライアント側からすると、GROWもエイトフレームも、分かりやすさの体感としては、変わらない可能性があります。
Point:
・GROWは構造がシンプルで、コーチ側にとって流れを作りやすい。
・エイトフレームはクライアント視点でイメージを拡張させやすいが、順序が読めず予想外の気づきが生まれやすい。
・可視化すると双方の特徴がよりクリアになる。
6. 質問事項を比較すると
GROWモデルを基準にエイトフレームアウトカムの質問を当てはめると、エイトフレームは未来イメージ(五感)と“手に入れたときの意味付け”を強調しているのがわかります。一方、GROWは現状分析や具体的な行動選択肢の洗い出しをじっくり行う構成になっています。
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Point:
・エイトフレームは未来の肯定的イメージを作るのに特化し、GROWは現状分析と行動設計に強い。
・並行して使うことで、より立体的なセッション設計も可能。
・「どこで深掘りしたいか」によって、活用するモデルや質問をカスタマイズできる。
7. どう使い分ける?
基本的にはGROWモデルを使いつつ、必要に応じてエイトフレームの質問を取り入れるやり方が、良いのではないかと考えています。
時間に余裕があり、クライアントとじっくり対話する場合: GROWモデルをベースに、エイトフレーム的な「未来ビジョン」や「周囲への影響」「内面的な意味付け」の質問を追加すると効果的。
短時間(20分程度)で“ブレスト的に目標と行動をまとめたい”場合: エイトフレームをそのまま順に進めるとシンプルにまとまる。
クライアントの現状が複雑で、ゴールやリソースが曖昧場合: GROWモデルをしっかり使い、RealityとResourceを丁寧に聞いていくことで足場固めを優先する。
短時間でも深い気づきを得たい場合: エイトフレームの“予期せぬ順序”が思考を刺激することもあるので、その特性を生かしたいときにはエイトフレームを積極活用。
Point:
・「迷走リスクを減らしたい」「短時間で成果」ならエイトフレーム。
・「丁寧に状況を把握して具体策を深堀りしたい」ならGROW。
8. まとめ
最初は「GROWモデルとエイトフレームアウトカムは似ているのでは?」と感じられたかもしれませんが、実際に並べてみるとかなりアプローチが異なります。
GROWモデル: 現状と目標のギャップ把握を重視し、実行計画を綿密に立てる。
エイトフレーム: 未来のゴールイメージを先に強烈に描き、そこから逆算する。
いずれのモデルも「ゴール指向」であることは共通です。コーチとしては、その時々のセッションの目的や時間枠、クライアントの思考傾向やモチベーション状態に応じて、相互に補完し合うように活用することが望ましいでしょう。
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