前回の記事(2)では、グロリアの訴え(平凡な女性である私は、理想の男性と付き合えないのではないかしら)を聞きながら、彼女の持っているであろう非合理的ビリーフ(そんな最悪な状況には耐えがたい!)をアルバート・エリスが探索していく対話を見て頂きました。
今回は、その続きで、グロリアがそこを起点にビリーフを更にこじらせていませんか、とアルバート・エリスは対話を進めていきます。彼はここでは「破局的思考」と呼んでいるものについて、切々と説いていっています。
破局的思考の概念導入と真実との切り分け
さっそく、対話の続きを見ていきます。
このパートは、ほとんどをアルバート・エリスが語っていますね。実際の動画を見ると、エリスも身振り手振りを使いながら、あたかもレクチャーのように語っているのが分かります。グロリアは、この時点では眉間にしわを寄せて真剣に聞き入っている様子です。
アルバート・エリスは、グロリアの語っていることに多分の真実が含まれていることは認めながらも、「私は幸せになれない人間」という破局的な思考を抱いてしまっていませんか、と説きます。
この次の対話では、グロリアとしては、自分の立ち位置を明確化しようとしています。
グロリアの反論
言われっぱなしも嫌だったようで(?)グロリアは、自分自身の考えを明確にする形で反論を試みます。
グロリアは、この場面でバッグから煙草を取り出して、吸い始めます。かなりの速度で、あれこれ言われたのでストレスを感じたのかもしれません。
グロリア自身は、自分が「破局的思考」を抱いているとは思いたくなかったようで、自分の生き方の問題(自分らしくありたい)ですとか、前向きに努力をしている実感が欲しい、という形で反論を試みますが、そこに対してアルバート・エリスは、「結局、確実に手に入れたい、保証が欲しい、そうでなければ破滅的だ」と思っているのではないの?と更に追撃します。
すごいですねー。カウンセリングではない普通の対話であれば、相手はプンプン怒って、どっかに行ってしまいそうです。
自己受容感低下への指摘
ここで、会話はセッショントピックの本質的なところへと向かいます。自己受容感が低下していることが問題の根っこなのではないか、という形で切り込んでいきます。
ここまでの対話でアルバート・エリスが一貫して発しているメッセージは、「目の前の理想の男性との付き合いがうまく行かないと、それですべてが上手くいかないと思ってしまっていない?また、その一点が上手くいかないと、自分は価値の低い人間だと考えている節はない?」なのだと思います。
小括:セッションの流れの図示化とグロリアの抱いているビリーフ
まだセッションは続くのですが、ここで、グロリアの問題の本質的なところまでは辿り着きましたので、一旦、小括をします。
まず、セッションの流れを図示すると以下のようになります。
グロリアの当初の課題としては、「理想の男性の前では自分が劣っているように思えて恥ずかしい」だったのですが、そこに対して、非合理的ビリーフの存在を指摘し、また、それが破局的思考(自分には価値がない、幸せになれない)を生んでいるのでは、とアルバート・エリスは指摘をしました。
そこでグロリアに気づきがあり、自分の価値を低く見ているので、本当の自分らしさを男性の前で出せていない、という事に思い至った、というところまで来ています。
また、この時点でグロリアの非合理的ビリーフは以下のように分類されます。ここまで10分弱の対話なのですが、膨大な情報量ですね・・・
そして、上記の非合理的ビリーフが、以下の悪循環を生み出しています。
ここでセッションの前半まで来ました。後半は、ビリーフの書き換えを含む解決編へと入っていきます。続きは記事(4)で。