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漂流する
なかば無理やりにひとりのじかんを作ったけれど、
家にひとりの居場所のない者にとって
外でそういう場所を確保するというのは
想像以上に大変だった。
今でも漂流している。
ただただ何の目的もなくぼーっとさせてくれ。
理由も聞かずに逃げさせてくれ。
認知症の母の脳のように
いま目の前にあるものと若い時分の記憶と
映像の向こうで誰かがつぶやいた言葉が
絡み絡んで
得体のしれない何者かになってしまわないうちに。
私の本棚に私のものではないものが
あまりにたまりすぎて
私の本が見つからない。
そんなことはお構いなしに
ヤギは片っ端から本を食べ続けている。
いずれ私の記憶も薄れていくのだろう。
ヤギには本は本でしかなく、
私も他人もない。
私は何から逃げたいのだろうか。