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観てない映画の思い出

ずいぶん昔になるが
あれは元日のことであった。
実家には久しぶりに家族全員が集まっていた。
おせちを食べ終わると、
私は妹に彼氏との近況をたずねた。

「うん。変わりないよ。」
妹は応えた。

「変わりないってちょっとあんまり面白くない。クリスマスはどうしたの?」

妹はちょっと考えてから話し始めた。

「クリスマスはさ、二人でちょっと華やかな気持ちになりたくて、ミュージカル映画観に行ったんだよね。私が誘って。」

「いい映画だったんだけど。思ってたのと違ったよ。」

「どういうこと?」

妹が映画の内容を話し始めた。

はじめ聞いているのは私だけだったのだが、弟を含めいつしか両親まで聞き入っていた。

聞いてるだけで苦しい。
いいことほとんどない。
救いがないかのように思う。
いったいこの状況下で希望なんてどうやってみつけたらいいんだ。
辛いことばかり、それでも人は生きるのだ。強い。
どちらの選択がよいのか。
わからなくても選択の時は迫ってくる。

ふと気がつくと
正月早々
妹の語る映画の内容を聞き
全員が号泣していた。
話をする妹まで泣いている。

泣きながら
奇妙な光景だと私は思った。

こうしてその映画は私にとって
忘れえぬ思い出の映画となった。

その映画は
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」。

ご覧になったかたはおられますか?私はまだみることができないままでいます。

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