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Photo by
ma_ruku
もうねむたいの
「もうねむたいの。」
これは
ももちゃんのまほうの言葉。
「そう、ねむたいんだね。」
この言葉があれば
いまオモチャをお片付けできなくても
ごはんをぜんぶ食べられなくても
おとうさんもおかあさんも
ももちゃんをそっと布団に連れて行ってくれます。
あるひももちゃんは
両方のみみにえんぴつを入れて遊んでいました。
歩くたんびにえんぴつが揺れてたいへんゆかいなのです。
そしてみなさんが心配したとおり
かべにぶつかってしまいました。
ももちゃんは耳があんまり痛いのに驚いて泣きました。
人生はじめてのいたさです。
かけつけたおかあさんも驚きました。
ももちゃんはどうして耳にえんぴつがささっているのでしょう?
おかあさんは
泣き叫ぶももちゃんを連れて
お医者さまのところへ行きました。
ももちゃんは緊張しました。
知らない先生に説明なしに痛いみみになにかをされるのはとても怖かったのです。
診察台で抵抗しましたが
取り押さえられました。
「もうねむたいの!」
危機一髪のところで
ももちゃんは思い出しました。
魔法の言葉を。
自分で自分のことを天才かと思いました。
「眠たかったらお家に帰ってから寝なさいね。」
お医者様は無慈悲でした。
このことがあってももちゃんは
耳にえんぴつをいれて遊ぶのはよすことにしました。
そして「もうねむたいの。」が通用しない世界について考えました。
そろそろ違う言葉を覚えなきゃな。
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