【横柄な客はNG】カスハラ対策で従業員を守ることが事業者の利益に繋がる理由
1.カスハラとは?
カスハラとは、カスタマーハラスメントの略称で、顧客や取引先などから事業者に対して行われる、理不尽な要求や暴言、脅迫などの行為を指します。具体的には、以下のような行為がカスハラに該当します。
不当な値引き要求
従業員に対する暴言や脅迫
業務妨害
無理な要求
セクハラ
これらカスハラの現状について調査結果が公表されました。
2.カスハラの被害状況
日本の労働組合の中で最も組織人員が多く、産業横断的な組織であるUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)が、2024年6月5日、サービス業の組合員3万人を対象に行ったカスハラに関する調査結果を公表しました。その主な内容は以下となっています。
2年以内にカスハラ被害を受けた人は46.8%。
カスハラをした客の年代は60代が29.4%と最多で、要求内容は謝罪、商品交換などが目立つ。
この調査について専門家の分析結果も公表されており、その主な内容は以下となっています。
スーパーやドラッグストアなどにおいては、女性従業員に対して、60代の男性客によるポイント制度関連のトラブルが多い。
パチンコ関連や医療・介護・福祉分野においては、女性従業員に対して、60・70代によるセクハラが比較的多い。
このような状況の中、対策に乗り出すケースも目立ってきました。
3.カスハラ防止の取組み
東京都は全国で初となるカスハラの防止条例を制定するべく検討を進めています。また、JR東日本グループは2024年4月26日、カスハラへの方針として、暴行や威圧的な言動、土下座の要求をする方への対応はしないことを公表しました。
さらに、電力小売り大手の東京電力エナジーパートナーは、カスハラの具体例として、人格否定、差別的発言、SNSへの投稿をほのめかした脅し、従業員の個人情報の開示要求などを明示し、これらに当てはまる場合、電話の応対を中断したり、警察に通報したりするといった方策をとることを公表しました。
このような対応は個人店にも広がっており、Xには横柄な顧客には販売しない、タメ口での注文は料金を上げるなどとした店舗の張り紙の投稿も見られます。
カスハラは昔からあったにもかかわらず、なぜ現在においてこのような取組みが進んでいるのでしょうか。
4.カスハラ対策が利益につながる理由
前述のUAゼンセンの調査では、カスハラが従業員に及ぼした影響について以下の内容が公表されています。
「いやな思いや不快感が続く」50.5%
「腹立たしい思いが続く」15.1%
「すっきりしない気持ちが続く」8.9%
「同じようなことが起こりそうで怖い」8%
「心療内科などに行った」0.8%
これらを原因に退職してしまう従業員もいます。よって、前述のJRや東京電力など事業者の対応は、このような悪影響から従業員を守る姿勢の表れと言え、従業員満足度の向上に寄与すると言えます。
労働力不足の克服が課題となっている現在、人材の流出は経営に致命的な影響を与えます。よって、流出してしまう原因を可能な限り潰し、従業員満足度を上げておかないと、人手不足は深刻化するでしょう。
これにより、残った人材の業務負担は大きくなり、業務品質の低下に繋がり、競争力を失っていくことになります。事業者がカスハラ対策をとることは、貴重な労働力を確保し、市場で生き残るための条件となりつつあります。
あるガソリンスタンドに勤務するスタッフは、顧客からパンク修理を依頼されました。ですが、穴の開いている位置が修理可能な箇所ではなかったので、それを丁寧に説明したところ、その顧客が突然怒り出し、暴行を受けました。
この件を上司に相談したところ「とにかく穏便に済ませろ」と言われ、泣き寝入りをせざるを得ず、結局彼は退職してしまいました。このように従業員を守るつもりのない事業者からは、どんどん人材が流出してしまいます。
ここで、歌手の三波春夫氏が発したとされる「お客様は神様です」の真意について触れておきます。
5.三波春夫氏の「お客様は神様です」の真意
三波春夫オフィシャルサイトによれば、この言葉は三波氏が歌う時の心構えを表現したもので、お客様に喜んでいただくことを第一義としていた彼の心情を表しています。
三波氏にとっての「お客様は神様」とは、神前で祈るときのように、雑念を払い澄み切った心で歌うという思いが込められており、「お客様は神だから何をされようが我慢して媚びなさい」という意味ではありません。
彼にとっての「お客様」とは、聴衆・オーディエンスを指します。しかし、このフレーズが誤解されて使われる場合、「お客様」は店舗や交通機関の利用者、営業先のクライアントなどであり「お客様イコール神」となってしまっています。
カスハラは、深刻な社会問題であり、法整備や企業の取り組み、個人の意識改革など、様々な対策を講じることで、カスハラのない社会を実現していく必要があります。特に事業者が生き残るためには、従業員への教育・研修を充実させ、カスハラ相談窓口を設置するなど、カスハラ防止のための体制を強化する必要があります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?