AI研究組織の社会実装機能を整えるお話
忙しい人向けの要約
この記事では、トップカンファレンス採択級のインパクトある研究成果を出すだけでなく、それらをダイレクトに事業成長に繋げられるよう研究組織の社会実装機能を整えるお話をします。
さんぎょうようやく
・AI Lab内に戦略室を新設して、事業企画、技術検証、知財戦略の3点を一気通貫で担いました
・1つの部門で3役をこなすと、事業、技術、知財の情報が集まるハブのような存在になりました
・これにより、研究を事業にミートさせるためのコーディネートができるようになりました
このような取り組みにより、リサーチャーが研究の楽しさと実用化の達成感を両方味わえるようなAI Labの実現を目指しています。
まず、あなた誰?
株式会社サイバーエージェントのAI Lab京都拠点に所属の岡本大和と申します。前職はオムロンで事業開発したり、LINEでComputer Vision Labの立ち上げ人を務めたり、NAVERでLINE WORKS OCR(旧CLOVA OCR)の研究開発を担ったりしていました。
2024年4月から戦略室の立ち上げに取り掛かり、長かったような短かったような、もう8ヶ月が経過しました。
なぜサイバーエージェントに入社したの?
AI Labへの戦略室の立ち上げを拝命して、私にドンピシャな役職だと感じたためです。また、京都拠点があるのも決め手でした。
まず、「AI Labの研究成果による事業機会創出と社会実装の加速」を目標に掲げて、4月からは知財機能の整備に取り掛かりました。その次に企画機能の整備を進めて、今は技術検証もあわせて事業・技術・知財の3点を同時に担う戦略室になりつつあります。
このあたりの戦略室の設立については、以前に執筆したコチラのnoteをご覧ください。
半年ほどやってみての手応えは?
手応えはあります、そりゃ勿論!!
ここでいう「手応え」とは、研究成果に関する特許を出願した点や、事業部とAI Labのコラボ企画を創出した点だけではありません。出願や企画をこなした件数以上に、「やるべきことを定義した」+「実行できる状態にした」という点に価値があったと考えています。
言い換えると、「AI Labの研究成果による事業機会創出と社会実装の加速」という目標を起点に、必要な取り組みを定義して、それらを遂行できるよう新しい仕組みや体制を整えた点が成果だと自負しています。
やってきたことの具体例
知財活動: そもそもの仕組みを整える
例えば、社会実装に向けて知財活動は絶対にやるべきです。そこで各研究グループの活動に入り込み、最新の研究状況を把握できるようにしました。さらに、法務部と連携して出願フローや案件管理を再整備しつつ、特許事務所様と顧問契約を締結して専門知識を取り入れられるようにして、社内外との連携体制を整えました。このように仕組みや環境を整えれば、あとは一所懸命に運営するだけです。実際、この半期で各研究領域から網羅性高く出願するといった成果を出せました。
企画機能: 事業部との連携体制を強化
企画機能については、独りでアイデアをこねくり回しても的を射た企画は作れないため、事業部との関係性構築から始まりました。関係性構築とは、単に親しい仲になるというだけの意味ではありません。戦略室のミッションと役割を正しく認識して頂き、技術視点や知財視点を取り入れるべきタイミングで戦略室に声が掛かるような関係性になる必要がありました。
ここでは、私のような研究者が自ら戦略室を担っているユニークポイントが活きました。AI技術の専門知識を背景に、事業を進めるために技術をどう設計するのかコンサルティングしつつ、具体的な行動計画まで一緒に作成できるので、それが事業部にとって戦略室に相談する理由やメリットとなります。結果的に「AIでなんとかできないかな」といった悩みがあると真っ先に戦略室に相談するといった共通認識が醸造されつつあり、相談が届く件数も順調に増えています。
一般的な戦略室と異なる点は?
ユニークネスとメリット
私のような研究者が戦略室を担っている点もユニークですが、もう一つのユニークポイントは事業企画・技術検証・知財戦略の3点を同時に担う点です。これらの機能をギュッと一箇所に集中させると、先端技術を迅速に事業に導入して社会実装したり、事業の早期段階で知財戦略を仕込みつつ知財権を獲得して技術を事業の推進力に転換したり、事業が進んだことによるフィードバックから先のニーズを予測して研究テーマを先取りしたり、といった事業・技術・知財の三位一体の取り組みが実現できます。
それぞれの機能を専属部隊が担うような組織に比べるとスケール面では劣るかもしれませんが、連携しやすさは比ではありません。なぜなら、従来は異なる部門が担っていた3つの機能が1箇所に集まっているわけですから、当然とも言えます。
あとは、やってみてから気づいたメリットもありました。知財戦略を担っていると特許相談を口実(?)に一緒に仕事をする人が多くなり、社内人脈が広がり、事業戦略や研究計画に触れる機会が多くなります。その結果、研究成果を事業に提案する機会が増え、事業戦略を研究計画に反映させる機会も多くなり、まるで情報が次々と新たな情報を引き寄せ、連携がさらに新たな連携を生むという好循環が生まれています。
言われるがままにする『御用聞』ではありません
ときおり「これって『御用聞』みたいなポジションですか?」と質問されます。回答は「NO」です。戦略室の役割は、言われたままにオーダーに応えるのではなく、何をするべきか事業・技術・知財の視点で定義して次の行動を超具体的にデザインすることです。
例えば「AIでこんなことできませんか?」と相談が届いたときに、もし「やってみます!」と二つ返事で開発に取り組んだら御用聞かもしれません。しかし、戦略室はこういったシチュエーションでは「それは今後どんな事業に育てる見通しですか?」「であれば知財はどうするべきか?」「それらを踏まえてAI Labでどんな研究計画を立てるべきか?」といった中長期視点で事業・技術・知財の目指す方向を一緒にデザインして、その上で最初にやるべきことを定義して行動に落とし込みます。
「AI Strategy & Planning」の誕生!!
以上を踏まえて、事業・技術・知財の3つの活動を同時に担う効果が証明できつつあるため、それを戦略室の役割として改めて定義しました。そして、名は体を表すかの如く、部門名を「AI Strategy & Planning」にしました。
事業企画・技術検証・知財戦略を一気通貫で担うユニークネスを、三位一体の活動が迅速にできるという強みに変えて、研究の楽しさと実用化の達成感を両方味わえるようなAI Labを実現して参ります。
この挑戦的な組織であるAI Strategy & Planningの、今後の成果にご期待いただければ幸いです。
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(2024.12.18追記)求人サイトが準備できました!!