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その時その場を経験せずとも襲われる郷愁~「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」

最近、なんとなく「新版画」の人気が高まっているようだ。その一人が吉田博であり、もう一人は川瀬巴水。
今夏、大田区の公立美術館でも展覧会があったが、SOMPO美術館も参戦(?)してきたので、こちらにも足を運んでみた。

川瀬巴水_チラシ_1

川瀬巴水_チラシ_2

自分の知る限り、SOMPO美術館で日本画の展覧会というのは実に珍しい。振り返ると2017年に吉田博展を開催してはいるが、それ以外には記憶にない。

巴水というと、東京名所図の連作が有名であるが、実に日本津々浦々旅をしていて各地の風景を作品にしていることが知らされる。日本の風景を収めた画家として川合玉堂の名が挙がるが、イメージだけに留まらず実際の土地を意識して表現したという点では巴水こそ日本の在りし日の風景を共通の記憶として留めさせた第一人者と言えるだろう。

当時巴水は、「現代の広重」と称されたという。
無理もない。東京や東海道の名所を題材とした連作も発表し、好評を博していたのだから。
しかし、広重はやはり浮世絵の世界に生きた人物だけあって、その作風は戯画的であり、とても乾いている。
一方の巴水はというと、本展のサブタイトルにもあるように郷愁に満ち満ちている。その土地その時代に生きたことのない現代人から見ても、懐かしく胸がきゅんとするような思いにさせられるのだ。
色使いの違いなのか、摺りの多さによるものなのか。同じ日本人というのに不思議なものだ。広重の時代は感じられなかった時代の移り変わりを、巴水は敏感に感じ取り作品に詰め込んだということか。

こうしてみると、吉田博は洋画出身だけあって西洋的なのに対し、巴水はあくまでも日本的である。それが現代の日本人にとっても受け止め方の違いになっているのだろう。

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