ブレイク前夜はトガってた~森高千里「ミーハー」
最近ラジオで聞いて、耳から離れない曲を紹介したい。
1988年発表、森高千里の「ザ・ミーハー」である。
まずは一通り聞いてみてほしい。ちょっと長いがPVバージョンの方で。
どうだろうか。この個性的なサビ、もうリフレインしていることにちがいない。
アイドルブームが下火になりつつあったころに遅れてデビューしてきた森高。彼女がブレイクすることになったのは、この個性的な言葉遣いの歌詞からだった。
お嬢様じゃないの わたしただのミーハー!
だからすごくカルイ 心配しないでね
お嬢様じゃないの わたしただのミーハー!
若いうちがはなよ 普通の恋 つまらないだけよ
昭和のアイドルは文字通り森高で終止符が打たれた。
今でこそ自分の本音を吐露するアイドルは珍しくないが、当時ここまで自分でさらけ出すアイドルはいなかったのではないだろうか。アイドルはその名の通り”偶像”から、人間宣言したような感じだ。
宣言と言えば、翌年1989年に発表されたアルバム「非実力派宣言」もなかなか斬新である。タイトルチューンを聞いてみよう。
生まれつき違う あのタイプと
悪いけど私は 歌がヘタよ
でもやるしかないの ごめん
我慢してね 私
実力は関係ないわ
実力は縁がないもの
実力がないわいいわ
実力がすべてじゃないもの
”実力”という言葉が18回も登場してきてゲシュタルト崩壊しそうだ。
自分の立ち位置をメタな視点で先回りして表現している。このダサい振り付けや派手なコスチュームも”いわゆる”アイドルを演じているかのようだ。
90年代に入り、”私がオバさんになっても”で大ブレイクを迎えるのであるが、それ以前の80年代の森高もなかなかトガっていて今聞くと面白いと思う。洗練されてはいない。でも、なぜか耳に残るのだ。