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第20話 チッタゴン

-ここまでのあらすぎ-
ミャンマーで働くコウジは、旅の途中で台湾人・エリーと出会う。
連絡を取り合う過程で気持ちに変化がおとずれていった。
エリーのヤンゴン滞在中にコウジは告白をするが、翌月ドーハにて改めて話をすることとなった。

コウジは日曜の午後も、特に用事がなかったらトレーダーホテルのバーにいた。
家にはwifiが通っておらず、高速インターネットが使えるトレーダーホテルが、コウジにとって行きつけのネットカフェのようなものだった。

コウジがパソコンをカチャカチャいじっていると、一人の白人が話しかけて来た。

コウジ:あれ・・・君は?・・・
白人(マックス):やあ、コウジ! 君とは前に会ったよね! 覚えているかい?

マックスはドイツ人で、かれこれ2回ほど会ったことがある。
1回目は、アメリカ人の友人に連れられ参加したマックス自身のWelcome Partyだ。
その時、コウジは初対面ながら、ケーキを持って参加したのだ。
マックスはこのコウジの粋な行動を覚えていた。

2回目は、別のパーティーで会った。
しかし、お互いfacebookや連絡先も交換していない、関係性といえば非常に薄かった。

マックスは、ふらっとバーに入って、コウジをみつけて近寄って来た。
ミャンマー生活が長いだろうコウジに急に質問して来た。

マックス:コウジ、チッタゴンってここからどうやっていけるか知ってる?
コウジ:チッタゴン?ってバングラディッシュの?

マックス:そうそう。そこに行きたいんだよ。
コウジ:チッタゴンは、直行便ないから、バンコク経由になるかな。 ヤンゴンからダッカにビーマンバングラディッシュ飛んでいるけど、デイリーじゃないし、便数考えたらバンコク経由かなぁ。

コウジはマックスの予定としているスケジュールを聞いて、フライトスケジュールや金額を調べてあげた。
結構タイトなスケジュールだった。

マックスは厳しいスケジュールだなぁと頭を抱えていた。

パソコンで調べながらコウジはマックスに聞いた。
コウジ:マックスはどうしてチッタゴンに行きたいの?
マックス:彼女がチッタゴンでNGOの仕事しているんだ。だから会いに行きたいんだよ。ちょうど向こうの親もくるし。

コウジ:そうか、いいねぇ
マックス:コウジは彼女いないのか?

キータッチのスピードが少しだけ緩んだ。
コウジ:いないよ。でも好きな人はいる。
マックス:マジか? 日本にいるの? それともヤンゴン?

コウジ:ドーハにいるよ。先日、ヤンゴンに来て告白した。
でも時間をくれって言われ、来月、ドーハに行ってもう一度話すんだ。

マックス:そうか、元々知り合いだったの?
コウジ:いや、今年の1月にドーハ ー ロンドンの機内で知り合った。彼女は乗務員なんだけど、コーヒーを僕のズボンに少しこぼして、それが出会いの始まり。次に会うのは3回目なんだ。

マックスはびっくりした目で質問を続けた。

マックス:それって次ドーハに行っても付き合えるってまだ決まってないんだよな?
コウジ:そうだね。でも行くんだ。もしそこでフラれても悔いはないさ。そこまで夢中になって追いかけた人なんて今までいなかったしね。

マックスは、目を輝かせながら、嬉しそうな顔をして言った。

マックス:コウジ、お前すっげーチャレンジングなことしてるな!
これもうドラマじゃねーか! それで、お前はまだ付き合えるかわからないのに、来月ドーハに行くんだろ? その彼女のために?

マックスの驚くような態度にコウジが逆に驚いたほどだった。

マックス:いやーめっちゃいい話きいたよ! ありがとうコウジ!
俺も、チッタゴン程度の距離でウジウジしてらんねーな!!

活き活きとしたマックスの表情をみながら、コウジは チッタゴンへのスケジュールと値段を教えてあげた。

マックスはお礼とばかりに、コウジにフライドポテトを頼んでくれた。

マックス:コウジ、ありがとう! 俺もチッタゴンで向こうの親に会うの緊張してたけど、お前の話聞いて元気出たぜ! じゃな!!

マックスは足早にバーを出て行った。

コウジは、マックスが頼んでくれたフライドポテトを一本一本ゆっくり食べて行った。


ドーハに向かう、17日前の話であった。


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