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”ゲームの水”を凝視する回
ゲームのグラフィックを語る上でよく取り上げられている「水」「海」という要素。”綺麗な水”をイメージすることは容易だが、ゲームはそれを様々なアプローチで描写している。
持っているタイトルから選出したシーンに限るが、どれも個性があって面白かったのでその辺を喋っていきたい。早速スクショ多めで行こう。
スーパーマリオサンシャイン
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ハードはGCと相当昔なタイトルながら、水の美麗さといえばこのタイトル、という人も多いだろう。
水面より上から見ると透き通ったエメラルドグリーンの海が美しく見えるが、いざ潜ると水面は揺れる透明な天井のように映る。本作の水は全て「照り返し」「海底」のたった2層で構成されているのだ。
水をテーマにしているぶん妥協できない描写を、限られた容量で表現している点が面白い。潜る前の遠目ではしっかりと鮮やかな南国の海に見えるし、潜った後は一段濁ったフィルターがかかることで沈んでいる実感が湧く。
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入り江のステージでは海底が見えないほど深くなっているが、こちらも地面に直接色付けをすることでグラデーションが表現されている。照り返しと色鮮やかさ、この2つだけで海を描き切る発想力が恐ろしい。
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パーツがたった2層ながら、同じ要領でサンセットのシーンも美しく描いている。使い回しが効き、かつ単体で効果的。仕組みが分かるほどに見事な表現方法だ。
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温泉ではそもそも照り返し”のように見える”アニメーションが固定で水面に張り付いている。湯気も出ている白んだ水面は非常に暖かく見えるし、遊んでいる分には全く気に留まらない(自身も今回初めて知った)。どうなってんだこのゲーム…凄すぎる…
スーパーマリオギャラクシー
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こちらはマリオ(カメラ)の近辺だけ可視化される水面。タイトルひとつにつき水の奥は「見えるか、見えないか」のどちらかであることが多いので、このように中間的な描き方は興味深い。
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別のステージでは水がまるでゼリーのように固まったり、宇宙空間の空色と色味を分けたり。場面ごとの視認性を重視したバラバラなつくり…よく見なければ意外と気付けないものである。
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スーパーマリオオデッセイ
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オデッセイは水をテーマとしたエリアごとに気合の入っているポイントが異なり、滝の国「ダイナフォー」に流れる大滝は激しい高低差から着水するころにはほとんど霧のようになる。近づくと画面に飛沫が跳ね返ったり、滝単体の表現にめいっぱいのリソースが振られている。
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湖の国「ドレッシーバレー」は水面がシャボン液のように虹色に光る。色数が多いために泳いだ際の波紋も目まぐるしく色を変え、エリア全体の華やかなイメージを一発で感じられる。
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海の国「シュワシュワーナ」ではサンセットでの海の美しさに重きが置かれ、滝、湖の国と違って細かい波紋や海底への光の反射などゲームとしてよりも現実の海として美麗な描写にこだわっている印象を受ける。
こちらもギャラクシーと同様に場面ごとの描き分けがありつつ、GCのころから視認性が最重要であることも見えてくる。万人受けするタイトルゆえの遊びやすさを追求しながら進化も見えるのが面白い。
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Xenoblade(Definitive Edition)
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こちらは水底が完全に不透明なタイプ。水の揺らめきが異常にきめ細やかで、鏡面反射もあまり起こらない。水というより油っぽいイメージで、寄りで見るとやや不自然でもあるが、引きでの絶景がメインのタイトルなので遠目からの印象に力を入れているということか。
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ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム
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ゼルダの水底も基本的に不透明だ。そもそも水中に潜れるゲームかどうか、というのを視覚的に理解させるためにそうしているはずなので当然といえば当然なのだが…
潮の満ち引きや滝など白っぽい飛沫のアニメーションが特徴的で、一部の幅が広い滝では乱れる水の流れが直接水面に描かれたりもしている。
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一方でリンクが肩ほどまで実際に入って行けるような浅い水面は透明度が非常に高く、水の揺らぎによる水底の歪みも丁寧に描写されている。以前の記事でも浅瀬には少し触れたが、恐らく本作は水の扱い方は世界全体で変わらず、単純に水底を”浅いか、深いか”でしっかり分けて作っているようだ。
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ピクミン4
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水の表現手段はいろいろあれど、ピクミン4には特にリアリティーがあると言える。水中から見上げた水面は透明感よりも隔たりを強く感じ、水面のちょうど狭間に視点を置いた際の上下が分断されたような絵面もまさに現実のようであった。
この水中も人間サイズからしてみれば足首ほどの水たまりでしかないものの、この作り込みがミニチュアとしての魅力をさらに強めている。
タイトルが扱うグラフィックによって”水らしさ”はそれぞれ異なるが、これほど他人事でない水もそう見られないだろう。
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原神
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原神では本来水中に潜ることができないが、水の国「フォンテーヌ」に限りその制限が取り払われる。フォンテーヌの水中は完全な透明…よりもハッキリ色づいている印象を受け、エリアごとに真っ青、あるいは黄緑と表情を大きく変える。
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元々水に潜れないタイトルながら後発で水中を実装したことが意外な上、その潜れるエリアでも水面は不透明を貫いており、”潜る”操作を始動として使わなければ水中には入れない。ずっと用いてきた水面の鏡面反射と水中表現をトレードオフにせず、両者のいいとこ取りをするやり方が特徴的だ。
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鳴潮
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鳴潮の水に対する底知れないこだわりは写真だとどうにも伝わり切らないが、この一枚だけでも凄まじいことをやっているタイトルなのは分かるかと思う。
水底への光の反射、精細な潮の満ち引き、ひいては立体感のある波の動きなど…水ひとつに命をかけているような緻密さに圧倒される。ゲームの水面はだいたい均一であることがほとんどなので、これほど立体感のある揺らぎを見せる水面はかなり珍しい。
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以下2枚も含めたエリア「ブラックショア」の海面は時間ごとに全く異なる顔を見せ、昼は透明感のある空色に、夜は青白く光り輝き、朝焼けは両者の特徴を併せてうっすらと光を帯びる。タイトルに”潮”を用いているのも納得のこだわりようだ。
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以降は「リナシータ」の風景。ここでは水が流れ着く最下層が雲海のようになっていて、水底が一切見えなくなる。全体で見て高低差の激しいエリアとして雲の上にいるように感じられる独特な作りだ。
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ボスの出現ゾーンでは水の上を歩くことができ、そちらは逆に透明度が極めて高い。リナシータ下層においてこの一ヶ所のみ通常の水なので、普段とは違うギャップある魅力として記憶に残りやすくなっている。
水草の葉先にいたるまで見通せる水面の穏やかさも見どころだろうか。
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つまるところ
対応機種や作品が目指す完成像によって水の表現も様々で、そのどれもが違うアプローチで美しい水を形作っていることが何よりも楽しいポイントだ。普段からこんなにしつこく水を凝視する必要はないだろうが、それでも開発側の水に対する力の入れようには時間をかけて楽しむ魅力がある…と勝手に思っている。
暇があれば誰も見ないような細かすぎる部分をじ~~っと見つめるのも面白いかもしれない。ロケハンがむっちゃめんどくさかった