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緻密なドット、鋭角な手触り【Gravity Circuit雑感】

以前からじんわり気になっていたゲーム「Gravity Circuit
どっかしらで触れるつもりだったのだが、フリープレイを漁っているときに運良く再会したのでプレイしてみることとした。

いわゆるロックマンライクな2Dアクションで、主人公のロボット・カイがステージを巡って8体のボスロボットと対決する…という内容のゲームだ。
2Dアクションは大好物なので言わずもがな面白く、お気に入りの一作にも食い込むだろうという感覚もある。しかしただクリアして終わりは少し寂しいので、フルパワーの感想記事よりはざっくりめに感想を書いていこう。


懐かしのドットグラフィック

色味の淡さが良い

Gravity Circuitでまず一番に惹かれたのは、SFCやGBAを思わせる緻密に構成されたドット絵だ。近年用いられるドット絵というのはプレイ状況やムービーシーンに合わせて1ドットごとのサイズ感に若干の変化が生じたり、あるいはUIのみ近代的になっていたりすることも多いのだが…

本作ではキャラクターUI、オプション、リザルトなど全ての画面で1ドットの比率が全く同じであり、それ故に1ドットの小ささを活かしたダイナミックなカットインが炸裂している。これがとにかくカッコいい。
通常のゲーム進行ではこまごまとしたキャラクターが動くレトロな味が出る一方で、重要な場面では巨大で滑らかなイラストとして描かれるため、ゲーム全体で見ても古く錆びついたような印象が表れない
インディーズらしいフォロワーライクな作りがされつつも、しっかり異彩を放つ画面作りが気に入っている。

ボス戦突入時の巨大カットイン

敵にも壁にも使えるフックアクション

フォロワー作品たる本作における固有の面白さは、カイが放つフックショットにあるだろう。あらゆる壁や天井に突き刺してターザンのように跳躍することはもちろん、撃破した敵の残骸を掴んでぶん投げる攻撃も可能だ。
この”敵を再利用”するシステムがとても爽快感があり、撃破→捕縛→撃破…というループを生んで目まぐるしいスピードで敵を蹴散らすこともできる。

プレイ開始当初はカイの通常攻撃のあまりの弱さに苦心させられたが、この投擲アクションを活用してもらうために意図的に弱くされていたのであれば納得だ。この手のゲームにしては珍しくビームなどのショット攻撃を持っていないことも、このアクションが強力であるためだろう(一応フック直当ても可能)。

愛嬌のあるビジュアル

本作のキーである8体のボスロボット(通称サーキット)たちは機械でありながらそのどれもが丸みを帯びたキュートなルックスで、90年代アニメのような強烈なデフォルメがかかったデザインから本作は一層”懐かしいモノ”のひとつとして見えてくる。

ボスとしてそれぞれ特徴的な能力を持っているのはもちろん、性格にも差異があり、一方のキャラがふざけたセリフを喋っているときにカイの目に深い影が入る(白けている)ようなコメディっぽい演出も多分に詰まっている。
カイをサポートする司令官や技術者、医者といったロボットたちもその属性をステレオとして含んでいる愛嬌のあるデザインで、キャラのほとんどに一定以上の印象を持てている点にキャラデザの良さを感じている。

経験者向けの尖った難易度

本作は”ロックマンライクな2Dアクション”と前述したが、フォロワー作品であるがために難易度もやや高めに設計されている。
トゲに触れて即死…はさすがにないが、被弾一発が中々バカにならず、1マスサイズの小さな足場を連続ジャンプする場面も多々存在するのでジャンルを軽くかじった程度のユーザーというよりは、2DACTを根っこまでやり込むユーザー向けであるように感じた。
ボスまでの道は”歯ごたえがある”で片付けられるが、収集要素といった脇道に逸れた途端に急に牙をむいてくる点は若干の不和を生んでいるようにも思う。

また、こちらの操作に対するキャラの動きは良くも悪くも非常にレスポンスが良く、ジャンプやブレーキなどが入力したその瞬間に反映されるために、逆に制御が難しくなっている。散々同ジャンルを遊んでいる自身でもあまりにもテキパキと動くことを要求されるために、ときどき息が詰まるような印象を受けた。

こういった2DACTでは若干の滑りや慣性といったものが働く程度の方が存外フォローが効きやすいこともあるのだが、本作にそれを求めるとトゲを踏みまくって痛い目を見ることだろう(自身もそう)。
逆に言えばそうしたイタズラめいた挙動がないために、微細な小ジャンプを噛ませていくような動きはとてもやりやすく、ゲーム全体でのテンポの良さに繋がっているのも事実だ。

消える足場の真下に無数のトゲ

つまるところ

Gravity Circuitはロックマンシリーズなど往年の2DACTの影響を強く受けながらも、独立した遊びと2DACT好きを貫く鋭いプレイフィールを備えたゲームだった。

後半に進むほど矢継ぎ早なアクションを求められるためにジャンルをそれほど触らないユーザーに強く襲い掛かるが、そうした古臭さも含めてリスペクトの宿るタイトルでもある。スピードランモードや縛りプレイの内蔵もあるため、妥協を許さないやり込みを求めるような2DACT好きにこそ届いてほしい作品と言えるだろう。
このようなオーソドックスな2DACTは何気に最近触れていなかったので、久々に濃い味付けを楽しめて個人的にはとても満足いくモノであった。

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