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「違うこと」をしないこと #5


選択肢。

人生は選択の連続だ。

知ってます、知ってますとも。


でもあの頃、私は気付かなかったし、教えてくれる人にも出会わなかった。

たいがいは触れてきたものの中からしか選べないことも、触れてきていないものには選ぶ機会さえ訪れないことも。

無知って罪。

そう思う。

全部の壁にぶち当たるのだ。



夢を持ちなさい。

大人はそう言うけど、夢って現実的じゃないし、なんだか恥ずかしいものだと思っていた。

すごく大きいものじゃないといけないような気がしていた(スーパースターになることです!!みたいな)。

ここにほら、無知の罪。

違う違う、もっと身近で現実的なことでもいいんだよ、と自分に教えてあげられたらよかった。



ともかく私はおしゃれなカフェのスタッフとなった。

高校生のころ、初めて続いたバイトがファミレスだったし、そのあとしたバイトはパン屋さんだった。

2000年代初頭にカフェブームが起こり、あのころ飲食業はエネルギーがあふれていた。

面白い人たちがたくさんいたし、みんなとにかくとんでもなくカッコよかったのだ。

飲食の仕事にしか触れてこなかった私は、前線にたどり着くと圧倒的な能力格差に衝撃を受ける。


コミュニケーション能力、マンパワー、キャリア、、、みんなとんでもなくずば抜けていた。

何もかもが足りなかったし、そもそも私には頭の回転が足りない。

自分がHSPなんて知らない私は、対外用プラグスーツに着替え、対外用のスイッチを入れ、おはようございます!と明るく元気に振舞い、たくさん笑い、とにかく必死で働いた。

シフトに穴を開けないことと、中立な目線でいることくらいしか、ストロングポイントがなかった。

だって、こちとら頑張ってやっとこ普通を維持しているのだ。

ミスが絶えなくて落ち込むことも多かったけど、毎日楽しかったし、そこに所属することで誇れる自分ができあがった。


こうして、仕事の時はどうしていればいいのかわかってきた私は、自分を矯正し社会に適応させていく。

良い矯正だ、いいことだ(そう思っている)。


顔は上げていた方が素敵

姿勢がいい人素敵

よく笑う人素敵

声は高めが素敵

お酒は飲めた方が素敵

誘いは断らないのが素敵

臨機応変が素敵

ポジティブが素敵

ビジーでタフなのが素敵

・・・・・・・


こんな毎日に休日は魂が抜け、動けない。


本当の自分を閉じ込め、違う自分であろうとする日々はこの後も10年以上続くことになる。



         つづく。



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