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ウイスキーに釣られたら「天然高分子最後の秘境」を覚えて帰ってきた
意味はよくわからないがロマンを感じたんだ。
9月、ウイスキーの試飲ができるとのことで、サイエンスカフェ「ウイスキーとこれからの林業。~お木遣い感謝いたします~」に参加したら、木材利用を学んで帰ってきた話。
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試飲で自分好みのウイスキーが見つかるかと思ったんだ
私は、正直、ウイスキーの香りと味のギャップが苦手。
でも何かしらのストーリーがあれば飲めるかもしれない、試飲だから量も少ないだろうし、ウイスキーのことちょっと勉強できるかも、と参加した。
飲み比べたら、自分が飲めるものがみつかるかもと思ったんだ。
そしたら全く違うことを学んで帰ってきた。好みのウイスキーとかそういう話ではなかった。
サイエンスカフェって何?
参加したイベントは、CoSTEP(コー・ステップ)の受講生が企画・運営をするサイエンスカフェ。
サイエンスカフェは、科学の専門家とそうではない方々コーヒーなどを飲みながら気軽に語り合う場(日本学術会議より)。科学系のお話をお茶を飲みながら、リラックスした状態でおこなうイベントだ。
主催のCoSTEPは北海道大学にあるサイエンスコミュニケーション組織とのこと。大学にあるが学生がいる研究室ではなく、市民を対象にサイエンス関係のイベントやサイエンスコミュニケーターの養成を行っている組織だそうだ。
ウイスキーイベントだと思ったら樽のお話だった
9/20(金)夜、会場の北海道大学内の施設へ。
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ゲストは木材科学がご専門の北大農学研究院の幸田圭一先生。
今回のイベントは、ウイスキーに使われている樽を通じて、木材利用を学ぶ主旨。
木材利用というと木造建築や薪とか紙とか、そういう利用しか思いつかない。
昨今、注目されているのが「ウイスキーの樽」だそうだ。
樽はただの入れ物ではなかった
ウイスキーの色は、はじめは無色透明で、これを樽に入れることで木の色が付くことで琥珀色になる。色だけでなく、香りも樽に入れることであのウイスキーの香りになるそうだ。
しかも香りがつく過程は4種類の化学反応が関係してるとか!
添加反応:木から溶け出した香り。溶け出した香りはココナッツとか甘い香りらしい。
減法反応:嫌な香りが木を介して抜けていく
変換反応:樽内で起こる化学反応によって、それまで樽の中になかった化合物が生成される。果物の香りが作られる。
分解反応:木が分解されたときの香り。バニラやチョコの香り。
とにかく単純じゃないってことだな!とメモをしながら思った。
で、その化学反応のもとになる樽に使われる木が異なれば、当然、香りも変わってくるという話。
日本ならではのウイスキーをミズナラで
日本ではミズナラを使った樽で作るウイスキーの研究が進んでいる。
ミズナラは日本にとって、とてもとてもなじみ深い木。「日本ならではのウイスキー」をつくるために注目され、大手企業でも製造されている。
樽を作るために木材を輸入するのではなく、日本にある木を利用しよう、という文脈もあるらしい。
長年熟成したものは、お線香とかお香のような(白檀だったか伽羅だったか失念したが、高貴そうで画数の多いやつだ)、趣ある香りになるそうだ。
樽の違いを感じてみよう!
木材の違いを実際に感じようということで、4種をテイスティング!
このイベントのために先生や受講生がテイスティングをして選び抜いたとのこと。選ばれたのは「AMAHAGAN」。
AMAHAGANは逆から読んだら長浜。長濱蒸溜所さんのウイスキーだ。並んだときのラベルのカラフルさがかわいい。
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楽しみ方のメモがあり、そのとおりに試してみる。
①まずはそのまま
②加水(スプーンで1,2滴水をたらす)して香りを楽しむ
③お好みの配分を見つける(一般的な水割りはウイスキー:水=1:5)
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幸田先生が「経験したことのない香りはかげない」と言っていた。だから「○○のような香りが……」と言える人と「○○の香り?」とわからない人が出てくるらしい。
あと、違いがあるのに、それがわかるようなわからないような、表現できないもどかしさがあった。
これが私の感想!↓
バーボン樽:味も香りも、いつものウイスキー。 バーボンということは樽材はホワイトオークなのかな?バーボン作った樽の再利用。
ワイン樽:すっきり。香りはちょっと甘めのような?樽材はわからないが、ワイン作った樽の再利用をワイン樽というらしい。
ミズナラ樽:水っぽいバーボン(失礼過ぎる)。香りはお線香っぽいような、そうでないような。森の木。
山桜樽:キリッとしてる?香りが桜餅っぽさあるような、ないような。ぶわっと香った。
スマホでチャっと調べたら、バーボン樽に使われているのはホワイトオークが多いらしい。
オークはブナ科コナラ属の木の総称。ミズナラもブナ科コナラ属。親戚同士だ。ミズナラ樽のことを「水っぽいバーボン」と思ってしまったがある意味正解かもしれない。
香りは似ているのかと言うと、先入観もあるからか、ミズナラの方がお香っぽく感じた。
会場では山桜樽のものが人気のようだった。私も山桜樽好き。
今更ながら、ウイスキーは香りを楽しむお酒だと気づいた。楽しみ方がわかれば今後も楽しい。
AMAHAGANは名前も覚えやすい。飲んだことあるよ!って言えちゃうお酒ができたのも、嬉しい。
天然高分子最後の秘境!?
話が木材利用に戻る。
木材利用で紙とかに使われているのは「セルロース」という成分。木材の40~50%を占めている。その次が「リグニン」という物質で25%ほどを占めるそうだ。
で、2番目に多いリグニンはほぼ燃料に使われている。ほかの使い道、燃料電池とかも研究されているが……あまり進んでないらしい。
2番目に多い成分なら、研究材料としても豊富だし、木材だから身近だし、研究も進んで、活用方法見つかればめちゃくちゃ効率良く資源として使えそうな印象だが、ほぼ燃料利用(それはそれですごいと思うが)。
なぜか。
先生が「リグニンは構造が未だによくわかってないんですよ。」と、スライドに六角形がたくさん並んだ図を映す。六角形は確かベンゼン環とかいうやつだ。
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スライドはもっとたくさん繋がっていた。
構造”例”という表記で不明点が多いことが伝わってくる。
高校の教科書でみたものだって、せいぜい六角形が2,3個つながったものだ。それよりも遙かに多い数のベンゼン環が連なっている。画面いっぱいにベンゼン環が連結しているし、画面の外にもまだまだ繋がっているようだ。
先生曰く、リグニンの構造として、それらしいものは描けるが、実はこの形の隣はこれとパターンが決まっているような、いないようなで、全体像もよくわかっていないらしい。でもばかでかいのは確か、らしい。
ウイスキーの樽の中でどんな化学反応が起きて、どういう香りが作られているのかわかるのに、構造がわからないなんてことあるの!?先生の話を聞いていて、ちょっと信じられなかった。
木材に含まれているセルロースの次に多い。多いのに、構造がいまだにわからない。研究が終わらない。
そんないまだ全体像のわからないリグニンは「天然高分子最後の秘境」と呼ばれているそうだ。
解析技術も発達してるだろうに秘境と言われるなんて、ロマンある~~~~!!!!
(天然、高分子、も意味が思い出せないが、今回はなんかかっこいい響きの単語で良しとする。)
ウイスキーに釣られたら、リグニンのロマンをのぞいて帰ってきた夜でした。
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