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まさか「赤と青のガウン」で研究に打ち込んだ学生生活を思い出して泣くとは思わなかった

海外生活のあるあるやプリンセスならではのハプニングを期待して開いたのに、論文執筆の苦悩がリアルすぎて胃が痛くなった。そして泣いた。

皇族の方のお話で、ただの国民でオックスフォードにも行っていない私がこんなに共感できるものなのかと衝撃を受けた本だった。


赤と青のガウン オックスフォード留学記
女性皇族として初めて海外で博士号を取得された彬子女王殿下による英国留学記。

赤と青のガウン紹介文 

話題になっていたので、会社の昼休憩を利用して「赤と青のガウン」を読み始めた。

海外と日本の生活の違いやプリンセスならではのエピソードを期待していた。もちろんそのエピソードも豊富だったが、オックスフォード大学での博士号取得のお話が主軸であり、だんだんと「研究に奮闘する学生」の話として引き込まれていた。

自然と自分が学生だったときの研究生活を思い出す。私は修士号で国内の大学で、難しさのレベルが全く違うけども。

がんばれと見守るようなつもりになったり、わかるわぁ〜と共感したり、そんなことあるの!?と驚いたりだとか。

調査の話ではピースが繋がっていく高揚感を味わいながら、論文執筆を進めるところでは自分の胃も痛くなりながら読み進め、とうとう博士号取得決定が決まったシーンでは私もとても喜んだ

そして、いよいよ彬子女王殿下が博士号取得決定の喜びを日本へ知らせる。しかし日本から、報告では博士号については伏せることになったと連絡がきてしまう。その連絡に、おめでとうの言葉もなく。

その決定になぜこんなにショックを受けたのかが綴られたあと、こう書かれていた。


でも、私の努力の結晶である博士号は、宮内庁の人たちにとっては、あまたある面倒な事務処理対象の一つでしかないのだと思えてならなかった。

赤と青のガウン(PHP文庫) 343ページ


ここを読んだ瞬間に涙がぼろぼろ出てきてしまった。

1人の研究者がこんな大変な過程を経て取得したのに、なぜそんな扱いができるのかという悔しさと憤りと悲しさ

私が経験した、研究の世界とそれを知らない世界での認識の差を突きつけられた、あの日の動揺

普段の仕事で誰かの大事なことをぞんざいに扱っていたことはないだろうかという罪悪感

そんなものが一緒くたになって、泣いてしまった。

もっと区切りのいいところまで読むのに十分なくらい、昼休憩の時間はまだ残っていたけど、ここで本を閉じてしまった。

もう、私の感情もぐちゃぐちゃである。

どうしてこんなに揺さぶられるのか。退勤して自宅で鬱々としていたいくらいであった。

・・・

本を読み終わり、数日経っても、やっぱりあのシーンを思い出してしまう。

なんだか落ち着かない。読み終わったのに、この本よかったとか感動したとかそういう感じにもならない。

そんな時に「ルックバック」(著・藤本タツキ)の映画がアマプラに追加されていた。

原作は漫画で、今年映画になり話題になったものだ。小学生の女の子2人が漫画家を目指して、進学しても脇目も振らず、全て漫画へ捧げて描いてかいて描き上げて……のストーリー。

Xで流れてきた「ルックバックで感動できる経験を持っている自分でよかった」の感想を思い出した。

あ、私もこれなのか……?となった。

研究していた学生の時の自分はもちろん、仕事をしている今の自分、本を読むのが好きな自分、感情移入していた自分……。過去から今まで、趣味から仕事まで、自分の経験丸ごとで受け取ったのだ。

落ち着かない感じ、気持ちが収束しない感じの原因がわかった気がする。

この本で研究の描写に、ここの一文に揺さぶられた自分を、もしかしたらそれを誇らしいと思っていいのかもしれないと思ったら、ようやく落ち着いた。

皇族の方のお話で、こんなに共感したり思い出したりするとは思わなかった。

気持ちがスッと落ち着いたら、他の方がどんな感想を持ったのかが気になったので、このnoteを書き終わったら見てこようと思う。




・・・

ちょっと聞いてほしい、どうしても叫びたい、ただただ好きなシーン。

私の1番好きなシーンはエリザベス女王陛下とのお茶会の章にある。(研究関係は多すぎて選べない!)


「エレベーターを降りると、大量のコーギー(女王陛下の飼い犬たち)がお出迎え。」

赤と青のガウン(PHP文庫) 114ページ


コーギー大好きで知られているエリザベス女王陛下。

大量のコーギーと表現されてしまうコーギーたちを想像してにまにましてしまった。

「たくさん」ではなく「大量」なのだ。

なんだか、にまーーーーっとしちゃいません?




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柴野あゆむ(しばちゃん)
お読みいただきありがとうございました!いただいたチップでセブンのあんまん食べます。

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