ドラマ「95」第三話を見た話
衝撃のラストであった。
これは原作未読の多くの人がそうだっただろうと思う。
一夜明けてXをさらって見たけれど、多くの人が翌朝まで引きずって鬱ていて、デスヨネー、ミナサン、ナカーマ、と謎の外国人風に思った。
物語としては有無を言わさず完全にそうなんだけれども。
何気に第三話で一番実感したのは、「趣味の合う監督さんでありがとう」だった。
物語が好みだったり、役者さんが好みでも監督さんと趣味が合わないと、結構なフラストレーションを感じる。
これはもう向こうのほうがプロなのだから、完全に受け手側の好みの問題なんだろうれど、私はわりとソレがあるワガママな視聴者である。
このドラマに関しては、比較的趣味があう監督さんとスタッフ陣の皆様ぽく感じていて嬉しい。
ズブの素人なので、どこからどこまでがどういう役職のお仕事の範囲かまでは存じ上げないけれど、些細なところで好きな感じがポロポロ散見されるし、逆に何かに引っかかったり気になったりせずに見ていられて、物語に没頭できるのがありがたい。
今回、一番それを感じたのも奇しくもラストシーンからエンドロールへのつながりだったのだけれど…。
95年の不穏な映像と音を挟み、膝を抱えて世界を拒絶するQからの、廊下、からの、声が重なり、みたいなあの流れと、アップとか、暗さとか、尺とか、よくわからないけれど、そういう諸々。
たぶん撮り方が好みなせいでただでさえエグい物語が余計にこたえてしまった…。
それに加えて、私の好みのど真ん中にいる髙橋海人があの演技なもんだからそりゃあQに感情持ってかれて一緒に心臓バクバク状態である。
たまったもんじゃない…。
一話、二話をじっくりと見せることで個々のキャラクターをこちらにしっかりと理解させておいて、特にQの複雑な内面や幾重にも重なる心情と、変わりつつある今という時期を、海人くんの解像度を持ってこれでもかというほど見せておいて、そこからの、アレだ。
一度上げた視線、音量を上げる指先、漏れた小さな呻き、自分を握りしめる腕。
得体の知れない初めての恐怖感を一緒に感じてしまい、ずっしりがっちり心がやられてしまった。
(なんでQのお姉さんはあんなに登場シーン少ないのに、アレだけのインパクトを残せる桜井日奈子さんなんかなと思ってたから、めちゃくちゃ納得した…そして、鈴木仁さん、密かにスタイルの良さに慄いていたのだけれど、宝来の翔よりは小物っぽいけどそこそこ中心にいそうなイキがった嫌な感じのキャラもいい塩梅で、やっぱり配役もお見事だなぁとは思った…)
そして、そんなシーンからの、あのエンドロールだ。
超絶胸糞のシーンで終わり、それを拭うかのような笑顔の撮影裏が添えられ、かつ、キンプリの新曲moooove!!の2番が流れるという大盤振る舞いである。
ちょっと待って2番じゃん、ちゃんと聞きたい、てかみんなめっちゃ楽しそうじゃん…!という混乱。
絆されそうになって無事に情緒不安定を来した。
監督さん、握手してください。
ちなみに、Qが決意表明する時の逆光具合も好きでした。
海人くんの演技力についてはもう言うまでもない。
…けれど、やはりnoteを書く以上自己満全開で少し語らせていただこう。
時間経過と共に変貌する目つきと、それでも残る隠キャ具合のバランスがたまらない。
あの背の丸め肩といい、浮かべる愛想笑いといい、視線の彷徨い方といい…。
かと思えば1シーン1シーンの芸も細かい。
雑誌の撮影時の戸惑いと嬉しさの混ざった愛想笑い、翔の家で不穏なことを言われた時の不安そうな佇まい、仕上がった雑誌を眺めてしまう時の表情、セイラと2人で話をした時のキョドり具合…。
解像度の高さに痺れる。
Xでも先に書いたけれど、セイラが水に飛び込んできて、水色に染まったセイラを見た時に、まさに”息を呑む”を体現してたのにはびっくりした。
大好きだ。
ちなみにあの水中の撮り方も好きだった。
Qと翔は色味があるのに、セイラだけ青に染まっていて。
一番死に近いところにいるかのような。
松本さん演じるセイラのあの儚さも見事だと思う。
キャラクターで言うと、やっぱりすごいなと思うのが中川大志くんの翔だ。
そもそものキャラ設定が見事だし、それを演じて実現させている中川大志くんもすごい。
イキがった子供たちの中でも、頭ひとつ出ているキャラを成り立たせている翔がお見事である。
間違いに気づいたらすぐに認める素直さもあるし、「仲間」に対しては誠実だし、あの家族設定から複雑な幼少期を過ごしたであろう背景を考えると、人を見る目、特にオトナを見る目はきっと随一なんだろうと感じる部分もある。
下手に頭が良すぎるがために、勝手に世の中背負ったつもりでいる使命感みたいなものがあるのも感じるし。
これは確かに若くないと持ち得ない青いやつだ、と見てて思う。
それを感じた上でも十二分に魅力的で。
ついでに言うと、海人くんとの身長差も、翔とQの並びとしてとてもいいし、翔がQの肩を抱く時の身勝手感もものすごく「翔っぽさ」が出ててお気に入りだったりしている。
もちろんそれに軽々と引き寄せられる海人くんの「Qっぽさ」も併せていい。
内面的にもQが引き寄せられる魅力に説得力がないと成り立たないので、翔の存在はまるっと見事だなぁと毎回感心している。
ちょっと蛇足になるが、今回、翔の母親が出てきてはっきり言ってしまったことで、実はこのお話が「”ダサい大人になるな”と喚くダサくイキがった子供達の物語」であることが割と明確になってしまった。
何をしたって結局親の脛をかじっている子供だろう、という、彼らにしてみたら一番痛いところを明確にされていた。
この視線がさりげなく入ったのも割とツボであった。
ここまでの流れ(細かな伏線回収)を思うと、このお母さんが出てきたことも今後何かの伏線だろうかと身構えている…。
そして個人的にとても好きなのが現代のQのシーンだ。
オトナな演技のタイマン勝負してるみたいな。
安田顕さんと桜井ユキさん、テーブルを囲んで話しているだけでアレだ。
お二人も演出も撮り方もいい。
ここにきて急にサスペンス染みてきた撮り方に変わったのもワクワクする。
あの現代シーンが挟まるバランスもまたばっちり好みである。
95年と現代の唯一の共通項であり、時空を繋ぐのが喫茶店というあの場所なのも相変わらずいい仕事をしてる。
moooove!!の2番。
かっこいい。とてもいい。(語彙力)
廉くんと海人くんの入れ替わりが激しいのに違和感ないのもとてもいい。
個人的にはキンキ先輩の技を思い出してしまった。
(あの先輩たちは1文字ずつという離れ業まで披露していたけれど)
いつもよりは激しい入れ替わりに2人ならでは、デュオならではを感じでちょっと興奮してしまった。
1番とは違うアレンジで聞かせる2番、最高だ。
かっこいい。とてもいい。(語彙力)
そして相変わらず海人くんの歌う英語に弱く、とことん気持ちいいところに当ててくるあのリズム感とグルーヴの虜なのでもう既に心はスタンディングオベーションである。
エンディング、エンドロール、ありがとうであった。
今回のドラマはここにきて物語的にだいぶ鬱が入ってきたけど、作品としてはめちゃくちゃ熱いと思う。
海人くんが求められ、選んだ作品。
本当に色んな意味で攻めてるしチャレンジングなドラマだと感じてる。
けど、こういう作品に求められるのは役者としての力量を認められているのとイコールで間違いないのだろうし、実際にプロデューサーさんも明言していた。
ドラマの出来が好みで嬉しいという一面だけでなく、ここまででも十二分に主演が与えられたその期待に応えているんじゃないかと感じているので、そういう感動もあって、一ファンとしてはとても嬉しいし楽しいし、出会いにありがとうな気分である。
海人くんの「攻めてる」発言には、一話目、二話目でも納得したつもりでいたけれど、あのレベルで「攻めてる」と思っていた私は相当に甘かったということを今回痛いほど思い知った。
実はこれ、当初思っていたより、かなりの覚悟がいる作品じゃないかなと今更ながら慄いている。
それに臆せずチャレンジしてくれて、これだけのものを見せてくれていることに個人的には盛大な拍手を送っている。
なにせこの作品に携わった海人くんの成長が既に垣間見えている。
とことん素直な人だなぁなんて思いつつ、その成長具合の著しさには感心する。
成長期であり、かつ、過渡期であったとはいえ、私が見せてもらったたった1年でこれなのだから、きっと今後はもっともっといい男になっていくんだろうという予感がすごい。
ドラマの展開ももちろん楽しみだけれども、それ以上に海人くんの今後がものすごく楽しみだ。
私なりに長く楽しませて頂こうと、思っている。
*毎度のことならがら、偉そうな口調で語っているとはいえ、あくまでもど素人が趣味趣向をぶちまけてるだけなのであしからずご了承ください。