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抱影
とても気が合う彼に薦められて普段は手に取らない本を手に取った。『抱影』はハードボイルド小説なんだと聞いた時、正直趣味ではないなと思った。ハードボイルドが何なのかよくわからないのに言葉の響きがあまり好きじゃなかった。
彼の頭の中を覗きたかっただけで『抱影』に興味はあまりなかった。その辺にあるなんてことない小説なのかな、などと思っていたのだ。(私は何様なのだろう)しかしびっくりすることに読み始めると惹き込まれて2日で読み終えた。ページをめくる手が止まらなかった。
読んでいるページを君に教えていたけれど、あれは全部好きな箇所でした。良いなと思った所をスクショして送り付けていたよ。あらすじや話のネタバレをするのは嫌いだから、ここには書かない。その代わり何を思ったかを書きたいと思う。
後半と前半で印象がだいぶ変わる本だった。最後まで読むことでしか得られない大人の情がそこにはあった。私はあんな大人にはなれないなとも感じた。住んでる世界の違いではなく、圧倒的に日々考えていることの重さや経験が足りない。こんな返しできないなと静かに思いながら読んだ。
君は出会った時から少し変わった言葉遣いをするなと思っていた。背伸びしているわけでもなく、子ども返りしているわけでもないのに、重くて芯がある不思議な言葉まわし。それはこの本のような世界と繋がっていたからで。
私が読んできたのが穏やかで綺麗な所だけを集めたものだったとしたら、貴方が読んできたのは人間の一生だったのかもしれない。色々なことを知らなくても辿り着いている答えが眩しくて、多角的なものの見方の癖は、他者の考えを想像できるからなのではないかな。
響子さんが亡くなった時、泣いてしまったけれど、一度も哀しんでいる描写がなくて、その代わりに人生を終えようとしているのがとてもとても怖くなりました。同じことしそうで。
登場人物では三田村さんが1番好きだった。筋が通ってて言っていることに齟齬がなく、会話の3手は先を眺めているような人だったから。手の届かない領域の人を好きになるんだよ、私。
読書感想文を書くとね、エッセイになってきちゃうんだよね。私の駄文で語りたくないなあ、浸っていたい。
タトゥーの話が出ると凄く嬉しそうだった理由がわかりました。私が入れる時は、絵が上手な貴方に頼もうかな。
おやすみなさい。