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#4-3 子供たち主体の振り返り ありのままを受け入れる:【教員インタビュー:大野沙絵子先生 #3】

みなさんこんにちは。リフレクションメソッドラボラトリー事務局です。リフレクションメソッドラボラトリー(以下RML)では「MAWARUリフレクション」というプロジェクトを行っています。

MAWARUリフレクションは、「リフレクションによる個人の気づきが周囲に循環し、社会を変える」をテーマに、教育にリフレクションを取り入れる活動を2016年から続けているプロジェクトです。(プロジェクトHPがありますのでぜひご覧ください。)
本記事では、MAWARUリフレクションで新しく始めた「教員インタビュー」の記事をお届けします。教育現場で、先生がどのようなことを考えているのか、とても面白い内容になっていると思いますので、ぜひご一読ください。
第4回の先生は、兵庫県で小学校教諭をされている大野沙絵子さんのインタビューです!いつものようにPodcastも用意していますので、ラジオ代わりにもぜひ聴いてみてくださいね。

リフレクションで課題に感じていることは?

リフレクションに何を期待するかによると思いますが、私としては、リフレクションによって子供達に思考を深めてほしいと思っています。

p4cの場合には、思考を深めるツールがあります。「もし・・・だったら」「反対に考えると?」「でも・・・だよね。」等です。それらの言葉をもとに、もう一段階踏み込んで、また違った視点で考えることができると、言いたいことや考えの軸が強くなる気がしています。
そこで、授業中には、「例えば・・」「〜と比べて・・」など、自分も仲間も考えを深められるようなヒントを活用するようにしています。

子供達みんなが深く振り返ることができたら素敵ですが、個人差もあります。そのため、振り返りを全体で紹介しあい、多様な考えをを共有できるようにしています。また、安全な場を作るということが何よりも大切なことと感じています。緊張や不安があると、のびのびと思いを表現するのは難しいと思いますので、セーフティな場をどう作るかということに毎日試行錯誤しています。

生井:考えを深める際、子供達によって個人差があります。そのため、皆が深く考えるには、どうすればいいのか。そこに課題意識があると聞いていて感じました。それは、学習場面でのことなのか、それ以外の場面でということなのでしょうか?

子供たち主体の振り返りをするには

どんな場面であっても、それぞれの場面にめあてがあると思うので、それに対する振り返りということは変わらないと思います。ただ、授業の中で「振り返りをしましょう」と言って振り返るだけでは、時間の制約もあり、考えを十分に深めるのは難しいところもあると思います。そこで、いかに子供達と対話する時間や表現する機会を生み出すかということが課題であり、日々苦心しています。
また、子供達にとって振り返りたいタイミング、立ち止まりたいタイミングがあり、教師側の想定しているタイミングだけではないと思っています。適切なタイミングで、子供達の状況にあわせて、振り返りをすることが大切であると思っています。

生井:教科書通りの振り返りではなく、子供達の学びの状況にあわせて振り返るタイミングがあるということ。
また、時間の制約、決められた状況ですと、一部の振り返りが上手な児童のみが深く振り返ることができる状況になってしまうということでしょうか?

はい。p4cのルールには、全員参加という決まりごとがあり、そのルールについては意識しています。毛糸のボールを対話する発言者に回していくのですが、黒板に個人の名前を書いたマグネットを貼り、発言するとマグネットを動かして誰が発言したかがわかるようにしています。ですので、子供達がのそれを見て、まだ〇〇さん発言していないからどうですか?と聞くことができます。ただ、p4cのルールとして、パスも認められていて、考えがまとまっていない時や発言できない時などはパスをすることができます。子供達は、そのルールから、「〇〇さんが緊張するかもしれないから、うん、とか、ううん、で答えられる質問をしてみたらいいかな。」などとお互いを思いやりながら対話できるようにもなります。

生井:全員参加というルールがあり、どの子の発言も大切にされる土壌があるということがわかりました。

発言していない児童は、「そろそろ回ってくるぞ…!」とドキドキするんですけど、「パス」と言っても問いに向かうきっかけが生まれますし、「次こそは…」と自分の考えをまとめていく過程で、主体性も育まれていくような気がします。少しゲーム感覚で、言葉を紡いでいくことや仲間と対話することを楽しんでもらいたいなと思っています。
 
生井:楽しいと思える感覚が大事ですね。

リフレクションにおいて何を期待するか?

山下:リフレクションにおいて深まる要素を大野先生がお話してくださったと思います。
例えば、「安心・安全な場の設定」「p4cを活用した深まる問いについて」「時間のゆとり」「振り返るタイミングは子供主体で考える」です。
そこで、大野先生が考えられる振り返りで何を期待するかについてもう少し詳しくお聞きしたいです。

単元、教科によっても違うと思いますが、例えば、先日の算数の授業では、あまりのある割り算の単元の導入場面で話し合いを行いました。なぜかと言いますと、今回の割り算では、これまで学習した割り算と何が違うのか?ということに気付いてほしかったからです。
あまりが出ること以外はこれまでの割り算と変わらないので、学習を活かせることを自信にしてほしくて、まずは、
「割り算はどんな計算だったかな?」との問いで進めました。
子供達からは、「同じ数で分けないといけない計算」「みんなが同じ数に分けられて、みんながもめない計算」「みんながなかよしの計算」等の意見がでました。
そんな話し合いの過程で、「同じ数ずつ分ける」という概念を共通理解することができました。
次の学習へ向かうときに、この概念を子供達がしっかりともち、考えを強くしていくために今までの学びを振り返る(学びをつなぐ)時間をつくりました。
また、生活場面ですと、班長やリーダーといった当たり前のようにある役割についても、「班長とは?自分達に必要か?」と意見を出し合い、皆で考えを深めることが大事だと思っています。
そんな中で、皆の意見が自分の期待していたことと違う結論に至った場合でも、目の前の子供達が考えていることなので、尊重したいと思います。リフレクションの結果は、あまり期待しすぎない。期待する姿があらわれるまで待ち、子供達のありのままの姿を受け止め、成長を積み上げていきたいと思います。

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本記事はここまでです。更新は毎週木曜日です。
第4回目もお楽しみに!

【大野先生インタビューの記事】
# 4 -1 大野先生インタビュー1
# 4 -2 大野先生インタビュー2
# 4 -3 大野先生インタビュー3(本記事)
# 4 -4 大野先生インタビュー4

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