#1-4 先生方、地域をつなぐコーディネーターで在りたい【教員インタビュー:浜田先生#4】
みなさんこんにちは。リフレクションメソッドラボラトリー事務局です。リフレクションメソッドラボラトリー(以下RML)では「MAWARUリフレクション」というプロジェクトを行っています。
MAWARUリフレクションは、「リフレクションによる個人の気づきが周囲に循環し、社会を変える」をテーマに、教育にリフレクションを取り入れる活動を2016年から続けているプロジェクトです。(プロジェクトHPがありますのでぜひご覧ください。)
本記事では、MAWARUリフレクションで新しく始めた「教員インタビュー」の記事の第4回をお届けします。教育現場で、先生がどのようなことを考えているのか、とても面白い内容になっていると思いますので、ぜひご一読ください。
お話を伺う先生は、兵庫県で小学校の先生をされている浜田啓久さんです!いつものようにPodcastも用意していますので、ラジオ代わりにもぜひ聴いてみてくださいね。
それではどうぞ!
リフレクションで今後どんな活動をされたいですか?
まず、大学院に行ったことで感じたことが二つあります。一つ目は、リフレクションをする教員が圧倒的に少ないということです。コルトハーヘンの玉ねぎモデルのように、先生自身が自分自身のやりたいこと、強みから行動しているのではなく、現在の教育環境「こうあるべき」「こうすべき」ということに自分の声を奪われていくる現状があるように思います。
ですので、コルトハーヘンの玉ねぎモデルの考えを皆で共有して、皆がリフレクションをしないといけないと思います。というのは実は自分の声だと思っていたものは、周りから与えられたものであって、まるで自分の想いのように錯覚してしまうのだと思います。ですので、それぞれが自己の強みを自覚しないと、環境の変化に耐えられないのではないかと思っています。
二つ目は、教育過程はもっと柔軟でいいということです。平成10年頃から総合的な学習の時間を作り始めた頃、現場の先生方は、まさに「どうしたらいい?」と試行錯誤の日々だったとお聞きしています。ただ「当時は、多忙だったけど、多忙感はなかった」という話を聞いたり、当時の教育書を読むと、なんかキラキラしているというか現場の先生が楽しそうに取り組んでいるような熱量を感じていました。
その頃は、まさに先生たち自身で学校教育を作ろうとしていた。要するに、教員自身の声や地域と向き合いながら、「この地域で何を教えたい?」「どういった立ち位置で子供たちに向き合いたい?」まさにコルトハーヘンの玉ねぎモデルのように、自分自身に向き合いながら、自分の内側から外側を作っていく先生方が多かったんじゃないかと思います。
そこで現場の先生方がもっと自分に向き合える時間や場を提供していく活動は今後やっていきたいと考えています。実際、現在でも総合的な学習の教科指導員として、淡路島で活動していますが、いろんな先生方の不安や困りごと、自分自身が感じている感情をまず出すところからはじめるようにしています。
生井:そういった場がないということでしょうか?
ないです。(ここまで子供たちのリフレクションの話をしてきましたが)今後は、むしろ先生方にもそういった時間や場を提供していきたいと思っています。例えば、言語に頼らない「感覚」や「感性」から言葉を引き出すことようなことも大切だと考えています。
今注目しているのが、対話型観賞やレゴシリアスプレイ等です。感覚や感性からアプローチして、その感覚や感性は、どこからきているのかを言語化していくプロセスがこれまでにはない自己への気付きを促すのではないかと考えています。
先生方には、そういった時間や場を通した対話を経験してもらう中から、コルトハーヘンでいうところの、世の中の物事を何かの虫眼鏡で見ていることに気づかせてあげられる教員になりたいなと密かに思っています。
生井:先生に対するリフレクションの場を作るということ、コルトハーヘンにおける玉ねぎモデルですよね。教員は、常に、外からの期待、こうすべきという環境にさらされていますが、環境と対峙する中で、もともと自分がやりたかったこと、ビジョンやアイデンティティといったものが潰れていってしまう。教員自身の内面から思い出していくというか強めていくということが大事で、ここにリフレクションを活用し、そういった場作りをしていきたいということでしょうか。
はい。その通りです。プロジェクトや行動を起こす時に、①「今の現状はどうなのか?」②「どんな理由でそうなっているのか?」③「私たちには、何ができるのか?」そういったプロセスがあると言われています。井澤さんという問い作りのワークショップデザイナーの方がおられるんですが、その方に教えてもらったことがあります。
『子供たちの行動も結局、誰かが、どこかで言っているような安易な発想しか生み出せないのは、①「今、何が起こっているの?」②「それは何が原因で起こっているの?」③「私たちには、何ができるの?」という行動までのステップがありますが、③「私たちには何ができるの?」を考える前に②’「私には、何がある?」というプロセスがなければ、先に示した③「私たちには、何ができる?」ということろには行きつかない。』と言っておられます。自分の強みや自分の興味関心に自覚があるからこそ、活動が打ち上げ花火にならずに、継続してやっていきたいと思うライフワークになっていくわけです。そのあたりも含めて、自分自身の内面に向き合うことができる、そういった気付きを促すことができるような教員になりたいですね。
生井:なるほど、教育にリフレクションといいますが、教員自身の強みに目を向けてこそ、「何ができるか」に繋がっていくということですね。
山下:コアリフレクションというお話がありましたが、浜田さん自身の強みは何ですか?
私自身は、自分自身の強みについては、わりと自覚しています。それもリフレクションカードをしていて気付いたんですけど、私が一番好きなカードがあるんです。それは、「どんな助けがあればよさそう?」というカードです。私は、そのカードに救われたんです。
教育現場では、自立、自立と教えていますが、自立とは、「そもそも、一人で生きていけるわけがない」という前提が必要です。インドには、「私たちは、常に、誰かに迷惑かけている」という前提から、「あなたも、(迷惑をかけた相手に恩返しできないかもしれないけど)その分、周りに恩返ししなさい。」という教えがあるようです。
日本の学校では、「人に迷惑をかけるな」と教えがちですが、それは、そもそも前提して間違っているというか、「私たちは、生きている限り誰かのお世話になっている」という前提で、「その人に恩返しできなくても、誰か別の人に恩返しをしてもいいんだ」というマインドセットが必要だと思います。その部分への気付きが私の強みと繋がっているというか・・
要するに私の強みは、「人に頼る力がずば抜けて高い」ことです(笑)
このことは、皆に言われることなんですが、「あなたってひとたらしだね。良い意味で。」と言われるぐらいです。それから私自身は、先頭に立ちたいとあまり思っていません。子供たちに前に立ってほしいといつも思いますし、「今回は、この人の手柄にしてあげたいな。」とか、やっぱり裏方が好きなんです。人を輝かせることは好きだし、得意だし、誰かに頼るということが得意なんです。
教師の役割には、いろんな定義があると言われますが、私は、コーディネーターという役割が私の強みとしてしっくりきます。誰かと繋がっていく楽しみや喜び、誰かに繋げる楽しみや喜び、おせっかいも含めて、そこが強みなんです。ですから、これからの私のビジョンとしては、「地域のコーディネーターという立場で、いろんな先生を繋いでいきたいし、社会と繋がっていく教員でありたい」と思っています。
生井:リフレクションについての質問で、リフレクションの実践、リフレクションとの関係、リフレクションを通じての変化、これからのビジョン等、多岐にわたってお話いただきました。改めてありがとうございました。
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本記事はここまでです。浜田先生のリフレクションに関する想いが伝わるとてもよいお話だったと思います。
改めまして浜田先生、お話くださってありがとうございました!これからもリフレクションカード共々、一緒にリフレクションを探求していきましょう
次週からは、また違う先生のインタビュー記事が始まりますので、来週もぜひお楽しみに!
【浜田先生インタビューの記事】
#1 -1 浜田先生インタビュー
#1 -2 浜田先生インタビュー
#1 -3 浜田先生インタビュー
#1 -4 浜田先生インタビュー(本記事)
インタビュイー 浜田啓久さん
インタビュアー 生井・山下
MAWARUリフレクションメンバー
(執筆:山下、一部編集:中島)