ビー玉 ~閑話 独り言
昨年もそうだったけど
ラムネが売られている
駄菓子屋さんでなくて
スーパーの飲料水売場
子供の頃
財布を持っていたかどうか
バッグを持ってたかどうか
覚えていない
たぶん、手の中に
お小遣いを握りしめて
近所の駄菓子屋さんに
駆けていった
おかっぱ頭の少女
映像のように
セピア色の中に私がいる
まだエアコンが自分の部屋になく
日焼け止めクリームもない
漆喰の黒髪が額にかかって
汗でくっついていた
しゅわしゅわ弾ける音と
炭酸が喉を通るときの
ちょっとだけ痛いような
ピリッとするけど爽やかで
体温が5℃くらい下がった気になって
「ふぅー」
ラムネが飲みたい
それもあったのだけど
中に入っているビー玉
少女はコレが欲しかった
欲しくて欲しくて
なぜか仕方がなかった
きっと《できないこと》を
少女が可能にしたいって思ったんだ
だって取り出してる子はいたから
まるで宝探しをして
金貨を発見したような
誇りたかい顔をして
「エヘン」
満円の笑みをしてたの覚えてる
昨年ラムネを買った時に
どうにかしてビー玉を、と
どれだけの時間か費やして
少女みたいに汗をかいて
昔みたいに手が痛いだけ
瓶ごと割ってしまえば簡単だ
昔もそんなこと思いついてた
田舎の道で瓶を投げつけても
大目にみてもらえる時代
せいぜい年配の人から
「こらー」
だけど意味がない
そうすることはね
意味がない?
欲しければ
どんな方法でもいいのにね
少女はそれが正当法じゃないんだってよ
ビー玉は何10個かが
網ネットに入って売られてた
魅力を感じなかったの
それらとラムネ瓶の玉は
全然《存在と意味が違う》
少女の中ではね
だけど...もしも取り出したとして
その薄いブルー玉をどうしてた?
きっと何日かは机の上にのせて
にやにやと一人で笑ってたかも
それとも《取り出した誇りも嬉しさも》
だんだんと稀薄になっていき
何処かになくしてしまっていたのかも
なくしたらいけないと
机の引出しの奥にしまい
何年か後に見つけて
思い出していたかも
アラフィフの《少女》は
今年もラムネ瓶を試そうかどうか
くすくすと笑いながら迷っている
(重複投稿)