読書感想③
しゃばけシリーズ
【こわい】
妖からも、人からも忌み嫌われ居場所のない"狐者異(こわい)"と出会うお話。
職人の腕が驚異的に上達するという妙薬を持ってきた"こわい"。
若だんな含め4人の人間(最終的に5人になるが)がその薬を欲しがる。
若だんなは、友人であり菓子作りの下手な菓子職人・栄吉のためだったのだが、
「自分の力で成功する自信が必要なんだ」と本人から薬は要らないと言われ、諦める。
だが、他の諦めきれない人たちが、"こわい"の不幸に巻き込まれていく。。。
この話はとても切ない。
"こわい"は存在しているだけで周りを不幸に巻き込む。
絶対に関わるな、と若だんなの周りを固める妖たち。
昔から若だんなを何よりも大事に守ってきた妖たちだからこそ、その若だんなに不幸を招きかねない"こわい"の存在が心底"怖い"。
周りから存在を嫌がられるのは、「カワイソウ」かもしれない。手を差し伸べる者も昔は居たそうだ。
だが受け止め切れた者はいないという。
"こわい"は例えば、溺れている自分を助けにきてくれる者をがんじがらめにして一緒に沈んでしまうのだ。
助けて、たすけて、タスケテ。。。その気持ちばかりで、
自分も助けてくれる人も不幸にしてしまうのだ。
救われない存在"こわい"。
若だんなが最後手を差し伸べるが、聞く耳を持たずどこかへ行ってしまう。
もし"こわい"が若だんなの手を取っていたら、若だんなも不幸になっていたのだろうか。
でももし素直に手を取っていたら。。。
助けを受け入れる心の余裕が少しでもあったなら。。。
不幸に慣れてしまっていた"こわい"はその時、やっと救われていたのではないかと、私は考えてしまう。
でも、答えはない。