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怪奇数奇譚(其の拾)ー焚き火の蜃気楼ー

塾の帰り道、一本の細い道路を歩いていると、焚き火をしているおじいさんがいました。

僕は、珍しそうにしながら横目で見て通り過ぎようとすると、おじいさんは手招きしてきました。

なんだろうなぁと思いながら近づくと、おじいさんは焚き火の中からアルミホイルで包まれたアツアツの焼き芋を渡してきました。

びっくりしながらも小腹をすかしていた僕は、喜んでおじいさんと半分こに分けて食べました。

そのうち玄関からおばあさんがやってきて、温かな緑茶を持ってきました。
僕は丁度喉が渇いていたので、喜んでお茶を飲み、おばあさんと他愛もないお喋りをしました。

ふと、僕は前にこんな景色をテレビで見たことがあったことを思い出しました。

通り道で焚き火をし、通りすがりの人たちが暖をとっていた映像でした。
畑でとれたさつまいもを仲良くみんなで分け合って、ぺちゃくちゃとお喋りをしていました。
僕はそれが羨ましいなと思いながら、まじまじとテレビを見ていました。

またおいで、と最後に言われて、僕はのんびりと帰り道を歩いて行きました。

お腹も心もほっこりとしています。

でも、道端で焚き火をしてはいけないと言うことを思い出し、先ほどまでの出来事が急に不思議に感じました。

あの人たちは、こっそりと焚き火をして焼き芋を作っていたのだろうか?

僕はちらっと振り返ると、先ほどまでいたおじいさんもおばあさんも、焚き火さえもどこにもありませんでした。

オバケだったのだろうか?
僕は身震いして、足早にそこを立ち去りました。

帰ったら、お母さんに知らない人から物をもらって食べてはいけないでしょ、と僕がオバケにあった話よりも人から食べ物をもらって食べたことに怒られるところまでが僕のお話です。

オバケも人の温もりが欲しかったのでしょうか?

せっかくあたたまったのに。

ああ、ミステリー。

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