太陽の縁rjm of the sun

リム(rjm)です。 2人で創作しています。 怪奇数奇譚、童話、短歌、落語調のお話など様々な物語りを載せています。 よろしくお願いします。

太陽の縁rjm of the sun

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最近の記事

怪奇数奇譚(其の拾)ー焚き火の蜃気楼ー

塾の帰り道、一本の細い道路を歩いていると、焚き火をしているおじいさんがいました。 僕は、珍しそうにしながら横目で見て通り過ぎようとすると、おじいさんは手招きしてきました。 なんだろうなぁと思いながら近づくと、おじいさんは焚き火の中からアルミホイルで包まれたアツアツの焼き芋を渡してきました。 びっくりしながらも小腹をすかしていた僕は、喜んでおじいさんと半分こに分けて食べました。 そのうち玄関からおばあさんがやってきて、温かな緑茶を持ってきました。 僕は丁度喉が渇いていた

    • 怪奇数奇譚(其の玖)ーお月見日和ー

      穏やかでよく晴れた夜の日、僕が望遠鏡を覗くと月が二つあった。 実際に見ると一つしかないはずなのに、望遠鏡の中では寄り添うように二つの黄色い月が並んでいた。 月にはちゃんとウサギもいて、杵と臼で餅をぺったんぺったんとついていた。 できあがった餅は、またうさぎがコロコロと手のひらで転がし一口ほどの餅を作った。 それを大きなお皿に乗せて、なんと月でお月見をしていた。 お互いの月を眺めながら、あちらこちらで宴会を開いている。 月に住むウサギもお月見がしたくて、月をもう一つ

      • 季節のお話ー秋のお彼岸ー

        あたかも夏の線香花火のような彼岸花が、気がつけばそこら中に咲いていた。 満開とも言えるほどで、赤い絨毯があるようだった。 不思議とお彼岸の日には、毎年必ず咲いていた。 季節外れの異常気象が多々発生する中、花は季節を読んで咲いたのだろうか? それとも、人の心を読んでくれたのだろうか? 白や黄色や淡いピンク色の菊の花に、青空と同じ色のスターチスをお供えの花束にして、私は彼岸花が並ぶ道を真っ直ぐに歩き、お墓へ向かった。 そういえば、あの時もよく晴れてたなぁ、とか あの時あの人は

        • 童話ーあの日のセルフタイマーー

          僕には、おじいちゃんもおばあちゃんもいなかった。 だから、学校の友達が、たまにおじいちゃんやおばあちゃんに会いに行った話を聞くと、少し羨ましかった。 僕が物心つく前に、ずっと昔に亡くなってしまったらしい。 「おじいちゃんとおばあちゃんが欲しいのかい?」 僕が古いアルバムを広げていると、アルバムの間から枯れ葉の体をした虫が、ひょっこりと顔を出した。 丸い顔に可愛い黒目がこちらをにっこりと見ていた。 僕は驚いて、持っていたアルバムをバサバサッと落としてしまった。 ぺち

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        • rjm怪奇数奇譚
          10本
        • rjm季節のお話
          4本
        • rjm童話
          23本
        • rjm短歌
          3本
        • rjm落語調
          2本

        記事

          童話ー僕の夏をあげた日ー

          夏の日の暑さが和らいだと思ったら、また暑い日が続いた。 秋の虫が鳴いたと思ったら、まだ蝉が鳴いていた。 冷房もつけるし、扇風機は回すけど、アイスノンで頭を冷やしながら寝るには、もう冷たすぎると感じる。 「氷はいりませんか?」 眠ろうと横になった僕に、尋ねる声が聞こえた。 びっくりして声のする方を振り向くと、小さな妖精がつぶらな瞳でこっちを見ている。 ティッシュのような薄い布をいくつも巻いてターバンのような帽子もかぶっている。 「氷はいりませんか?」 妖精はまた尋ね

          童話ー僕の夏をあげた日ー

          童話ー隣人は風見どりー

          私は、この小さな街で一番大事に作られた。 沢山の願いが詰まった温かな身体に生まれた私は、誰に教わるでもなく、人の願いを聞き届ける魔法が使えた。 それは、人の願い事を直接叶えてあげられない代わりに、叶えるために手助けができるものだった。 例えば、失せ物を探している者には、それを思い出すきっかけを与えた。豊作を望む者には、作物の芽に大きく実るよう語りかけた。平和を望む者には、空に穏やかな天気が続くよう願った。 私が立っているこの教会には、様々な願いが一番多く集まった。 時代

          童話ー隣人は風見どりー

          童話ー僕と変な生き物ー

          草の分け目から、翠色に光る何かがこちらを覗いてくる。 クローバーの雑草が頭に生えている。 モサモサとした生き物だ。 まん丸の大きな翠色の目が二つ、こちらを興味津々に見つめている。 僕は大きな虫網を片手に、ぼーっと立ってその生き物を見つめていた。 ヤドリギに似ているその生き物は、ヤドリギには無い目が付いていた。口がありそうなところは、髭の様に草が生えている。 大きな木々がまっすぐ伸びた雑木林で、僕は一人でカブトムシやアゲハ蝶なんかを捕まえようとしていた。でも、虫かごはすっから

          童話ー僕と変な生き物ー

          童話ー風向きー

          まんまるの大きな月が空に浮かぶ頃、僕は屋根の上で真っ直ぐに立っていた。 まるで一直線の黒鉄の棒のように、そして家を守る兵隊のように、真っ直ぐに立って空を見上げていた。 昨日は大きな台風が近づいていて、荒れた空だったのが一転し、今日は穏やかな夜だった。 「こんばんは!今日は風が穏やかですね」 隣の石造りの屋根の上から、その人は僕に向かって挨拶をした。 僕は、顔だけを向けて返事をした。正確には、体を向けるには不自由だった。体のあちらこちらはギシギシ音が鳴るし、足を動かすには少し

          短歌ー歴史ー

          大一の 大万以ちて 負け戦 背く背にも 大吉の旗 日暮らしの 風に戦ぐ 大葉かな 茜に染まる 雲去来

          短歌ー春ー

          櫻花 宴の誘い 華やかに 嗜む酒に 淡花吹雪 風薫る 舞い飛ぶ雅 櫻道 迷いて行くは 風のみぞ知る

          童話ー夏の帰り道ー

          いつもの帰り道だけど、いつもと違う帰り道でした。 もうすぐで夏休みなのです。 男の子はルンルン気分で黒いランドセルを背中に背負い青い手提げ袋を片手に歩いています。 明日は、校庭にある自分の朝顔の鉢を持って帰ります。男の子の朝顔は、毎日お水をあげて大切に育てているので、誰よりも早く花が咲きそうでした。多分、赤色の朝顔です。家に持って帰ったらきっと近いうちに花が咲きます。大切に育てた朝顔をお母さんに見せることができると思うと、もっと嬉しくなりスキップを踏んで歩き出しました。 緩や

          童話ー夏の帰り道ー

          童話ーからだの音ー

          口は喋りたがっているから、モゴモゴする。 耳は聞きたがっているから、ムズムズする。 鼻は嗅ぎたがっているから、ピューピュー言う。 目は見たがっているから、ショボショボする。 お腹が空いているから、キュルキュルする。 足は走りたがっているから、ペタペタする。 手は繋ぎたがっているから、君の手がいる。 今日も明日もその次も、起きて寝てを繰り返す。 今日もキラキラ星とおやすみ、明日もサンサン太陽とおはよう。

          童話ーからだの音ー

          怪奇数奇譚(其の捌)ー人形人間ー

          人間は大抵、生まれてすぐに名前をつけて貰う。 その名前を好む、好まざるに関係なく、当たり前のように生涯、何処へ行くにも持ち歩いて、初めからその名前が当たり前であるように振る舞い続ける。 話は横道に逸れるが、子供の頃、誰もが一度は手にしたことがある人形、これを手にした日、この人形につけられた名前を何の躊躇もなく口ずさむ。 名前ってなんだろうか? 人間は、自分を何かの枠に嵌められたり、決めつけられることを殊更に嫌う性癖がある。 にも拘らず、心の中では何らかの評価を求めている。

          怪奇数奇譚(其の捌)ー人形人間ー

          童話ー窓の中の窓ー

          男の子の部屋にある窓には、中にさらに窓がありました。 おかしな事に、その奥にはもう一つ窓がありました。 窓は扉のように開いたり、パカっと箱を開けるように開いたり、男の子は次々と窓を開けました。 最後には小さな窓がありました。同じくらい小さなレースのカーテンも付いています。 片目をつむってよく覗き込むと、窓の奥には小さな人間が夜ご飯の食事の支度をしていました。 僕はなるべく静かに呼吸をして、鼻息でカーテンが動かないように気をつけました。 小さな人間の一人は、キッチンでシチューの

          童話ー窓の中の窓ー

          季節のお話ー夏の夕立が来たー

          毎年夏の日にはよくある光景です。 あんなに昼間晴れていたのに夕方になると俄かに空が立ち曇り、おどろおどろしい光を放つ雷雲がやってくるのです。そう、みんなはこれを夕立と呼んでいます。 夕方に起こるものだと思っていたのですが、夜中になってもピカピカゴロゴロ、怖くて眠れやしません。 昔から言われているのが、雷が光るとおへそを取られてしまうということを誰もが知っています。 雷様が取るのはおへそを取るのは何故でしょうか。コレクションでしょうか。それとも昔の誰かが言った単なる迷信なのでし

          季節のお話ー夏の夕立が来たー

          怪奇数奇譚(其の漆)ー夜にやってくる友だちー

          僕がお布団に入ると、友だちがやってくる。 「ねえねえ、もう寝るの?一緒に遊ぼうよ」 僕の友だちは、いつもそう話しかけてくる。 「イヤだよ。もう寝る時間なんだから」 僕はお布団を掴み顔まで覆い隠した。友だちはとてもしつこく遊びに誘ってくることを知っていたから。 「何して遊ぶ?ゲームする?トランプでもいいよ。それとも…夜だから静かに遊べる かくれんぼにしようか?」 僕は首を横に振って壁際を向いて目をつむった。友だちは何やらガサゴソと、僕のおもちゃ箱を漁っている様だ。 なんとも迷

          怪奇数奇譚(其の漆)ー夜にやってくる友だちー