![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65406319/rectangle_large_type_2_8abaab4a1dbe6f6aa42cd487cfba01ac.jpeg?width=1200)
零細起業の経営実務(40)いくらかかる?ラボの立ち上げ
起業を志す研究者さんへ、リーゾの経験をお伝えするシリーズ。
今回は、研究者さんからのご質問にお答えします。
先日、将来起業したいと考えているというバイオ系研究者さんとお話をしていたところ、
「実験室を作るのにぶっちゃけどのくらいかかりますかね?」
と聞かれました。
うーん、気持ちはわかりますが、ぶっちゃけすぎ・・・。
現在、仕事で使っている実験機器類は一切持っていけないと仮定して、ということなので、それならリーゾと同じ状況ではありますが、やりたい実験の種類によって、必要な機器や設備が違い、従って必要な費用もぜんぜん違ってくるので、なんともお答えしようがないのが正直なところです。
それを踏まえて、リーゾの立ち上げ時を思い出してみると、やりたい実験は、イネの栽培と交配は別として、
・イネの葉からDNAを抽出する
・それを鋳型にしてPCRをかける
・PCR産物を電気泳動する
・泳動後のゲルを撮影する
という、美食同玄米の育種に必要な一連の作業でした。
これらの実験をするのに何が必要かな?と想像しながら、欲しい機器をずらずらと書き出しました。次に、カタログをめくりながら、新品で購入した場合の価格を書き出していきました。
それを合計してみると・・・軽く1千万を超えてしまいました。
勤め人だったころの研究費としてなら「ふーん」程度の金額でしたが(なんてぜいたくだったんでしょう)、自分の財布から出て行くお金なら話はまったく別。ものすごい痛みを感じる金額です。
一瞬、絶望感に陥りましたが、すぐに気を取り直して、お金がないなら頭を使おう!とゲーム感覚で低コストラボを立ち上げた経験談は、すでにメルマガでお伝えしたとおりです。
(零細起業の経営実務(13)バイオハックで低コストラボ
http://www.rizo.co.jp/suisui59.html )
リーゾの場合はお金がなかったのでそうしたわけですが、逆に考えれば、2千万もあれば新品を買ってラボをスタートできる、ということにもなりますね。
ただし!実験機器って、買って終りじゃなくて、お高い機器には「保守契約」や「定期点検」が必要で、それがまたお高いことも多いんです。ランニングコストもよく考えないと、予算オーバーになりかねません。
シーケンサーのように、性能はどんどん上がり、価格はどんどん下がる機械もありますし、使用頻度も研究機関とは違ってくるので、購入自体が賢くない場合もあります。
それよりは、最新の機器を持っていて、メンテナンスもしっかりやっていて、データに責任ももってくれる受託業者に外注する方がずっと安上がりで、しかも確実、と個人的には考えます。
話をまとめますと、ラボの立ち上げに必要な費用は、実験の種類によって様々だし、手持ちのお金とその使い方に対する考え方によっても変わってくるけど、リーゾのような実験なら2千万もあれば十分と言えるかと思います(リーゾはその5%も使ってませんが・・・)。
以下、聞かれてもいないのに蛇足で書きますが、まじめな方ほどきちんと「準備」して起業しようとされる傾向があります。でも残念ながら、どれだけ勉強して、どれだけお金を貯めてから始めれば必ず成功する、というのはないんですよね、。準備に時間をかけるより、リーン・スタートアップ方式で、まずは走り出してみると、ほんとうに必要なことは見えてきます。
大事なのは、継続できること。低空飛行でも、超低速でも、健全に継続できてさえいれば、それはもう「成功」とみなされるのがビジネスの世界みたいです(10年目のリーゾの実感です!)。
(2018年8月1日配信のすいすい通信より)
「すいすい通信」
https://rizo.co.jp/merumaga.html