『未來のイヴ』ヴィリエ・ド・リラダン 感想
こんにちは。RIYOです。
今回はこちらの作品です。
ヴィリエ・ド・リラダン『未來のイヴ』です。この作品は1886年に発表されました。「アンドロイド」という言葉が世に向け初めて用いられた作品です。リラダンは名門貴族の末裔でありながら、生涯赤貧で過ごしました。父親の野心による資産崩壊の煽りを受け、没落貴族の底の底に陥ります。家財道具は全て強制執行官に運び出され、生活もままならない中、この作品を家具の無い部屋の床で書き上げました。
彼はフランス文壇における象徴主義の先駆者です。特に印象強いのは「理想主義」「ロマン主義」であると言えます。取り巻く環境が貧困に覆われて行く中、魂だけは高潔に「貴族としての誇り」を胸に抱き、文学の中に生きる為の「精神の糧」を見出したように感じられます。その彼を世に知らしめる立役者がボードレールです。文学作品へ向ける厳しい目は、「リラダンの高潔な魂の文学」を絶賛します。この事件は大衆に向けてではなく、フランス文学者達に大きくインパクトを与えます。
彼が大きく影響を受けたのは、ボードレールが勧めてくれたエドガー・アラン・ポーです。リラダンが元々持っていた「風刺の精神」は、ポーの「ダーク・ロマンティシズム」に刺激され、思想がより刺々しくなっていきます。それは僻みにも似た世間への攻撃的な「知性の押し付け」となり、ブルジョワたちの反感を買い、大衆へ受け入れられることはなくなっていたのです。
この作品にはリラダンの思想や苦悩や皮肉がぎっしりと詰まっています。また機械工学を専門としていた父親に与えられた知識も活かされ、アンドロイドの緻密な表現に大きな効果を与えています。内容としては古典SFです。この時代、つまり電球が灯り始めた時代、夢や空想が科学に今以上に抱かれていたのだと思います。この時代描写・人物描写がすばらしい。現代の日本の感覚で読むと理解に苦しむ思想は多々ありますが、彼の境遇含め、当時の時代背景を鑑みると大変興味深く読むことができます。
「神」「魂」「思想」こういった科学に相反するであろうことを科学で体現できないか、いや出来るというのがエディソン氏。精神と科学の戦いであるが故か、小難しい科学本の印象は少なく、「人間を定義するものは何か」という問題にフォーカスされていく。おそらくリラダンが描きたかった、もしくは伝えたかったものはこの定義を提起し考えさせることではないかと思います。彼はひとつの考えを結末にしましたが。
古典的な文体のため、読む人を選ぶかも知れませんが大変面白いので未読の方はぜひ、読んでみてください。
では。
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