かくして虚構の名盤は完成したのか?(「これはゲームなのか?展#2」出展後記)
2019年12月7日から12月15日までアーツ千代田3331にて開催されていた「これはゲームなのか?展#2」が無事に終了しました。前半は来場者の数がなかなか伸びずに少々不安がありましたが、出展者・関係者の告知活動が実を結び、最終日には本当に沢山のお客さんが会場内にごった返し、大盛況となりました。あらためまして、ご来場いただいた皆様に御礼申し上げます。私はこういったグループ展に参加するのは初のことで、他の出展者の手際良い設営や作品の見せ方に対するこだわりなど学ぶところが非常に多く、とても素晴らしい体験をさせていただいたと思っています。堅苦しい文章が長くなったのでタコの群れを挟みます。
(タコ群は本文と特に関係ありません)
さて、それでは私が出展した作品『虚構の名盤 或いはアナザー・ミューレンソウ』が結果どうなったのか、という発表をしていきたいと思います。この作品がどういう内容のものだったのか知らない方はこちらの記事をご覧ください。
まず先に推定参加者数を書いておくと、最終日が終わって自宅に持ち帰った「虚構のタイトルカード」の枚数をかぞえてみたところ、1,095枚ありました。会期の始めに私とスタッフで何枚か書いて置いておいた初期山札がありましたので、それを除いたとしてものべ1,000人以上の方がこの作品を「鑑賞」し「干渉」してくれたのだと考えられます。また、この作品に一人が参加すると「①山札から引いたカードを壁面に置く(壁面のカードと入れ替える)(一箇所変化)」「 ②一度に限り任意のカード2枚の位置を入れ替えることができる(二箇所変化)」という変化が発生します。②についてはやってもやらなくてもいいので、まぁだいたい体感75%くらいと考えて、「おおよそ平均2.5箇所変化/1人」となるわけです。推計参加者を1,000人とすると会期初日から9日目の閉会時間までで、壁面ではおおよそ2,500回の変化が発生し、最後の瞬間に至ったと考えられます。つまり、来場者の皆様が「見た作品」は、正確には全員が違う作品であり、参加者の数だけ作品の形が存在していたことになります。ロマン。圧倒的ロマン。途中で私も感じたのですが、これはもしかして多元宇宙(今風に言うとマルチヴァースってやつだ)の視覚化なんではないでしょうか。
と、作品を必要以上に壮大な感じでまとめたところで結果発表していきましょう。掲示順に左から紹介していきます。これを読んでいる参加者の皆様、あなたが書き残していった曲名は残ったでしょうかね。
このアルバムはジャケット、アルバム名、アーティスト名すべて洋楽(アメリカ)のヒップホップを想定していたのですが、結果はこうでした。考えてみると洋楽として成り立たせるには一曲でも日本語の曲名が入ってるとアウトですわな。結果的には浅草橋出身のネタ系ラッパー感が出ました。これはこれでアリ。SideBの5曲目も酷いけど並べてみると結構ありそう。ちなみにこのジャケットの顔の人は人工知能が自動生成した人でして、興味ある方はこちらの記事をご覧ください。
これもアーティスト名が「Raymond Bloom & Lisa」となっているように、70年代くらいの洋楽男女フォークデュオみたいな想定だったのですが、結果日本語の曲が多くなりました。思うにこれ、ジャケットが日の丸に見えるからなんでしょうねー。会期を通して割と詩的なタイトルが入れ替わり立ち替わり収録曲の座を取りあっていたような印象です。『そのあと、遠くで』とかとても良いじゃないですか。
インスト曲だけで構成されたエレクトロのアルバムというイメージで作ったジャケットです。こういう抽象的なジャケットの方が置かれる曲名の方向性が統一されていくのが興味深かったですね。『完全数-28-』とか『n角形』とか完璧ですね。『これが家か…』あたりで「ん?これ急に歌い出したな?」感はありますがw
これはかなり完成度高いですよね。「すべての爆弾の母」というバンド名は割と最近流行りの「それはバンド名なのか?」的な印象が出るようにつけたのですが、まぁ2010年代感のある収録曲が並んだかと思います。ちなみに会期中は基本的に私は介入せず、お客さんが入れ替えたり交換するときも黙って見ていたのですがSideBの1曲目『静かの海のセッション』は私が最初に例として置いたものでした。ずっと残ってしまって正直すまんかった。
バンド名に「ジャズ」と入れることで、ジャンルに寄った曲名が残るかと思いきや、全然そんなことはなく「フルヌード感」の方が「ジャズ感」よりも強く伝わるということが証明されたアルバムとなりました。とは言え、「なんか難解な音楽」という印象が共有されている痕跡が見られ、それが『偶像コンクラーベ』『癒着村の真実』などから感じられる「社会派音楽」感を醸し出しているのも興味深いです。尚、SideBの5曲目、6曲目(すげー文字小さいけど)がピカソに関するものですが、この絵はピカソじゃなくてエッシャーに影響を受けて描いたんだよ!!!
最終結果に「シナモン」「パン」「ミカン」などが残っていますが、実はこのアルバムは初日の時点で「食べ物」の名前が入った曲名が異常に集中するという現象が起きていました。3つほど食べ物ソングが並んだところで「これはもしや最終的に食べ物ソング集になるのでは……」という不安と期待がありましたが、結果良いバランスになりましたね。割とほんわか日常系を感じさせる曲名が続くのですが、SideBで急に『支配者の椅子』が出てくるのも好きです。あと、SideAの3曲目『茜を背負う』は今回書かれた曲名の中でも屈指のセンスだと思いました。誰か『茜を背負う』って曲作ってくれよ。
わかりやすい枠として用意したジャケットデザインでした(これちなみに写真のギタリストは私の実弟なのです)。写真の加工も70年代のロック感を出してます。それがかなり伝わっているように感じます。この作品の特性上、その時壁面に採用されているカード以外は山札となって伏せられているため見ることができません。どちらが先かはわかりませんが、『名前のない人間』というタイトルを見た人が呼応するように書き残した『名前はたぶんある』が、その後また別の誰かによって壁面に置かれたと考えるとすごい連携だな、と感じます。どちらもSideAとSideBの2曲目を飾っているのも素晴らしい。
一番難しかったのはこれかもしれませんね。「凶音戦隊ヒノレンジャー」というアーティスト名の元ネタは実在する「餓鬼レンジャー」「THE イナズマ戦隊」等を感じさせる思惑でつけたのですが、当然特撮の方を思い浮かべる方もいたようで。アルバムジャケットが「R」のデザインになっているため、「R」から始まる曲が集中しました。ちなみに「R」という曲名はかなりの方が書いてくれてました。SideAが『Rの意味』と『R』両方入っていてかなりしつこいw
もしかするとこのアルバムを想定して書かれた曲名が一番多いかもしれません。かなり人気のアルバムだったと思います。これは私もどういう音楽性かをあまり細かく想定しないで作ったジャケットだったのですが、結果的にものすごく『さよなら空中団地』っぽくなった気がします。SideBの5曲目が浮いてるように見えますが、バンドメンバーのうちのバカが一曲だけ作ったと考えるとむしろありそうに見えてくるのが面白いですね。地名シリーズは結構多くて『住みやすい街、府中』とか『港区が良い』とか震えるセンスの曲名カードが沢山ありました。結果、勝利したのは池袋か。尚、このジャケットの団地は文京区の真砂アパートだったりする。
これも難題でしたねー。気づいた方がいるかどうかわかりませんが、アーティスト名「DJ BIGPINK」のBIGPINKというのはザ・バンドの名盤『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』から取っており、アルバム名に「ヒッピー」と入っている通り、60年代リバイバルを目指すDJというイメージだったのですがさすがに伝わりづらかったか。最終的に採用はされてませんが『地味ヘンドリクス』という曲名を書いてくれた方には伝わっていたのかも。あ、そういえばSideAの1曲目『Purple Noise』もジミヘンの『Purple Haze』のもじりなのかな…。気づいてたよ!っていう方いたらTwitterにリプください。
はい、ということで最終結果でしたー。最終結果に残った計120曲を書いてくれた皆様、おめでとうございました。
そして反省点。カード置きにくかったですよね。自宅で全タイトルチェックしてたら『この紙が置きづらい』っていう曲名あって、ほんとサーセンってなりました。次回やることがあったら改善します。
ゆったりペースになるとは思いますが今後「虚構の名盤 全曲解説」なんかもnoteで書いて行こうかと思ってますので、よかったらTwitterともどもフォローしていただけると幸いです。今回はこんなわけのわからない実験のようなゲーム(なのか?)にお付き合いいただいて本当にありがとうございました!
よっし!!最後に宣伝だ!!!!
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■『ミューレンソウ』ゲーム情報
・プレイ人数:3〜6人
・プレイ時間:約30分
・対象年齢:13歳以上
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