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[こうして転職経験記]うっかり文系新卒と設計会社①
ルソーの描く人は皆、少し地面から浮いているように見える。
無表情なのも相まって、彼らの感情は読めない。しかし、心ここに在らずでも存在している姿にかなり助けられるのだ。
「ここにいないみたいだね」と先輩から言われたのは、設計会社に入社して2年目。
自分の「うっかり」な性格が、社会で生きるには大きな欠陥であることがやっとわかった頃だった。
「うっかりさん」で過ごした青春
恥ずかしい話、小学生から高校生にかけて提出物を「うっかり忘れる」ことは当たり前であった。
ドリルの提出は守らない。教科書の入ったリュックを丸々忘れて登校後に気づいたこともあったっけ。
美術の授業で、今日までと言われていた作品を家に忘れてきてしまい、あわや評価ナシとなる危機もあった。
時に叱られ、時に飽きられ、時に同情される日々。
自覚してからは多少改善に向けて動けたものの、大抵のうっかりは無意識下で行われるため溢れ玉は出てきてしまうのである。
正確さの求められる仕事
設計会社での作業は、ミスの許されない機械の図面作成がメインだ。
図面作成はとにかく正確さが求められる。寸法や図形の形をちょびっと間違えるだけでも大きな損害につながってしまう。
人と関わりが薄いと思い選んだ業界は、自分の性質と相性が最悪だったのだ。
入社一年目は元文系で未経験ということもあり、多少ミスがあってもそれほど言われることはなかった。
自分と同じく文系出身者が多く活躍する部署に配属されたこともあり、ミスがあっても「いつか慣れるよ」と優しく諭してもらえる。
社外の人と関わることもほぼなくこれなら続けられそう、と呑気に考えていたのだ。
気遣いしいで文系の自分が見つけた活路
そんな業務態度であったが、会社に貢献できる部分はしてこうと頑張る姿勢は忘れないようにしていた。
理系分野では敵わない自分が積極性を見せられたのが社内会議だった。
社員の声をなるべく取り入れようとする会社であったため、会社の方針会議には社歴を問わずに参加可能であった。
自分の行動で信頼を失うことをなんとか取り返そうと動いてきた私と、意見を求められる場の相性はよかったらしい。
会社の課題を出され、それに応える、それを続けていくうちに、「できるやつかもしれない」認定を得ることに成功した。してしまったのだ。
ミジンコほどの自信は、会社からの期待が高まるごとに増していく。
同時に、失敗するかもしれない後悔もちょびっと。
それでも自分の本性がバレるまでは、求められることを考え言っていこうとどんどん意見の機会は増すばかりであった。
こうして理想だけを語ってきたツケの返済は、入社二年目に大きく回ってくることになる。