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五歳のあなたのために、今のわたしができることは。

文学フリマ札幌が開催された日、実家に遊びに来ていた五歳の姪っ子、めいちゃん(仮名)と一緒に絵本を読みました。

私が激推しした絵本は、「うしわかまる」。幼少期に特に好んで読み込んだ名著です。

源義朝を失い、愛する子供たちを守ろうとした常盤御前の覚悟や、牛若丸の聡明さとスター性、武蔵坊弁慶の忠実さ、絵本には書かれていないけれど、平家が滅亡したのちの、兄である源頼朝との確執などを熱く熱く語りました。五歳のめいちゃんにとって不適切なエピソードは、もちろん伏せて、です。

ちょっとマニアックすぎたむずかしかったかな……?

いえいえ。めいちゃんは、目をまん丸くしていろいろと質問をしてくれました。

めいちゃんは、最初、髪の長い牛若丸が女の子だと思っていたようで、平安末期の男の子の服装について、まずお話をしました。弁慶がお坊さんだということは、挿絵から読み取ることができていました。

最も答え方を迷ったのが、「このおじさん(平清盛)がわるいの?」という問い。「ねえちゃんは、おじさん(平清盛)がわるものだとはおもっていないよ」と、私の素直な気持ちを伝えました。

物事を多面的に捉えて欲しかったからです。
「この人が悪い」と決めつけることで、「この人」を支持する人全員の顔に、安易にバツ印をつけて欲しくないから。人は一人一人違うから。集団として人を見て欲しくないから。正しいものも、間違っているものも、見る角度によって変わってしまうから。世の中の流れにのまれて、自分を見失って欲しくないから。

私の横で、「ふーん」と呟くめいちゃんの横顔に、成長を感じました。
夏ピリカグランプリ2022でピリカ賞を頂いたあの日、当時三歳だっためいちゃんと終日一緒に過ごしました。笑って泣いて叫んで、あんなに大暴れしていた怪獣さんが、今や牛若丸の数奇な運命に思いを馳せています。

五歳のあなたのために、私ができることは、こんなことしかないのだけれど。

種から芽が出て伸び、咲く日を夢見て、ねえちゃんはあなたと一緒に本を読み続けたい。


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