ラスト五十文字だけ読んで、続きを書く。【梯子小説カルガモ】~卒ご査収の程~
300文字の小説、そのラストの50文字だけがあなたに手渡されました。
「続きを書いてください」
さあ、あなたならどんな小説にしますか?
カルガモ、はじめました。
日々、文章修練遊戯をする私たち。また楽しそうな遊びを見つけました。懲りないですね。今回のあそびはこちら。
”小説のラスト50文字だけ見て続きを書く”
限られた文字数の小説の断片を手掛かりにはしご酒のように次から次へ、ふらふら泳ぎの波紋はどんな物語になるのでしょうか。
名付けましたは「梯子小説カルガモ」。
さっそく楽しくあそびましょう。
カルガモのあそびかた
レッツカルガモ
あつまったものずき:みやり と 立夏
順番:立夏→みやり→立夏→みやり
梯子の50文字
ひとつめの50文字(立夏)
卒ご査収の程、自分が悪いんですけど、ホントは全部忘れて見逃してほしいです。宜しくお願い申し上げます。
↓
みやりが続き300文字を書き
ラスト50文字を立夏へ
↓
ふたつめの50文字(みやり)
件、アイドルの飛び降り自殺。妙に気になる。わたしは業務後、彼のあとを尾けてみたい衝動に駆られていた。
↓
立夏が続き300文字を書き
ラスト50文字をみやりへ
↓
みっつめの50文字(立夏)
いるうち悲しくなってきた。息が切れる、涙が出る。アイドルが死んだ。わたしは悲しいのかもしれなかった。
↓
みやりが続き300文字を書き
ラスト50文字を立夏へ
↓
よっつめの50文字(みやり)
か。言葉の重さを測る夜が始まる、七時間程度、間違いだとしても夜明けを睨むそんな時間がわたしを形作る。
ゴール!
さあ、ちゃんとつながっているのか
つなげたカルガモ
残業はまるで宇宙のようだ。
頭の中で輻輳するタスクたち。鳴りやまないチャットツールの呑気な通知音。白々と光るパソコンのモニタ。その光に照らされて淡く光るデスク上の乱雑な書類の山。
終電がなくなってせいぜい数時間なのに、もっと長く……、そう、なんだったら生まれた時から、ずっと自分がこうしていたような錯覚に陥る。
ひとりぼっちの宇宙船での旅。宇宙船の計器はピコピコと鳴りやまないがとっくの昔にイカれてしまっている。目的の星への経路は絶たれた。自分はこのまま永遠に暗闇の中、無重力の孤独を抱えて生きていくのだ。
以上何卒ご査収の程、自分が悪いんですけど、ホントは全部忘れて見逃してほしいです。宜しくお願い申し上げます。
彼はそう述べ、悄然としつつも足早に執務室を出ていった。
一言、その背中に何かを言う事はできたのだが、彼の言い訳にあった言葉が妙に気に掛かりそれができなかった。
「いまネットで話題になっているアイドルの飛び降り自殺のせいで、てんやわんやで」
いったい何のことだろう。いくらわたしが芸能系の話題に疎いと言っても、ただいま連日世間を騒がせているニュースは〇〇区の公立学校で立て続けに起きた猟奇的なあの事件以外には無いだろう。
わたしの知っているインターネット、彼の知っているインターネットの差分。公立学校連続猟奇事件、アイドルの飛び降り自殺。妙に気になる。わたしは業務後、彼のあとを尾けてみたい衝動に駆られていた。
──行こう。
わたしは社員証を鞄の中に突っ込んで、駆け足で会社を出る。途中社内サーバラックに刺さったUSBに足を引っかけた。バキッ。USBが儚く折れるような音がしたが、そこは無視した。会社を飛び出すと彼は、高架下の飲み屋が並ぶ通りをもうすぐ抜けようというところだった。通りを抜け、歩道橋を駆け上がる。歩いているはずの彼を何度も見失いそうになる。終電後なのにまだまだ人が多い。全員半ば酒に飲まれていて、ぶつかる、怒鳴られる、すいませんでした、ごめんなさい。謝ることには慣れてしまって何の感情も動かなかったのに、走っているうち悲しくなってきた。息が切れる、涙が出る。アイドルが死んだ。わたしは悲しいのかもしれなかった。
そしてわたしはふと思う。彼も、そのようだったのではないか。
アイドルはアイドルだ。
わたしのなかのアイドルは、わたしのなかのアイドルだ。
誰しもが集い別れる東京駅とは違う。わたしの別れはわたしのものだ。彼の別れは。
わたしは彼のあの顔が何だかとても複雑な、とても言葉では言い表せないようなものに感じた。
わたしは、あんな顔が出来るだろうか。
わたしは、あの顔が、あの顔は。
わたしは、わたしは。
明日が平日なのが全くもって事実であった。
彼の、「宜しくお願い申し上げます」が肉薄する。
彼はいったい何をしたのか、していないのか。言葉の重さを測る夜が始まる、七時間程度、間違いだとしても夜明けを睨むそんな時間がわたしを形作る。
感想戦(できあがりをたのしむ)
ちゃんとおもんない!
みやり ドッヒャー
立夏 (読み始めながら)なんかだいぶ事故ってそうで楽しい。
みやり 美味しいところを譲り合ってる気がする! ハヤブサよりカオスかもしれませんね。
立夏 (読み終わって)ホントだすげーもったいねー。何書きたいのかさっぱり分からん。ちやんとおもんないところが、ずっとおもしろい。
みやり 尖った言い方だとカード切り出せなかった。なんか文体的には物々しいのに、中身なんもなくてうける。
なに考えてた?
立夏 それぞれのターンで、どんなことを考えながら書いていたのか振り返ってみましょうか。
立夏 ラスト50文字にどれだけ情報を残すかが重要と思いつつ、むしろ情報が落ちた時にどうなっちゃうか見てみたかった。250文字好きに小説を書いて、ラスト50文字でそれまでの250文字の要約を書けば、筋が通るだろうとは思ったんだけど。代わりに(250文字の内容の)気配だけ渡す感じにしようと……。からの「卒ご査収の程、」です。察してくれるかなって。
立夏 「わたしは業務後、彼のあとを尾けてみたい衝動に駆られていた。」がすごく助かって、ああ、この後尾ければいいのねと分かった! 次の人が、続きに何を書けばいいかを示してあげるくらいがいいのかな。
みやり (ひとつめの50文字を読んで)登場人物的には二人だと思った。謝罪をしている方と受ける方、謝罪をしている方に何か含みを感じたので、それを広げたいなと思い書きました。考え方が違うとか見てる世界が違う的なニュアンスを出したいなと。
立夏 「いるうち」が託したかった言葉。これが50文字範囲に入るように後ろを削ったりした。いるうち、なので、なにかのアクティビティをしてるかも、とか伝わったらいいなぁって。それが何かはおかしくなっていいと思った。
みやり 具体的なところはきっと前900文字で出ている(と信じる)ので内面の抽象に落とそうと思いました。広めに受けれる感じで。
もし書き変えられるなら
立夏 改めて全文繋げて読んでみて思ったのが、今回は立夏→みやり→立夏→みやりと、パートが全部でよっつなのでシンプルに起→承→転→結と請け負って行くべきなんだね。なにも起承転結してないけど。
みやり 意外とふたつめまでは良い感じでしたよね。書き換えるんだったらどの辺ですかね?
立夏 自分が書いたみっつめで言うと、自分のパートの区切りでひとつのシーンを完結させてしまってたので、そこが反省。尾行してた「彼」に追いついて、再会するところまで書ききっておけばよかったと後悔しているからそこかなあ。方向を示すというか、もっと踏み込んで、次のパートの頭まで書いてあげる感覚があってよかったんだ。
みやり そうですよね、完全に見失うか追いつくかしないと。いやーこれ難しいな。でも、お互い(全文を)タネ明かしして読み直すところがめっちゃワクワクしましたね。
リスクを取ってカードを切れ!
立夏 とりあえず今回学んだことは、リスクを取ってカードを切れ、だな!!
みやり 切ったカードは場に残せ。後ろ50文字に入れろ。
立夏 リスク取らない結果おもしろくなるわけじゃないんだから。
みやり そうそう。ノーリスクでもリスクでもカオスになるのであれば宇宙とか行った方が良かった。
捨て身のリアリティ
立夏 今回カルガモ思いついたのでとりあえずやってみようの回、いわゆるテストプレイだったんだけど……。これ、逆に公開したくなったんだけど、してもいいすか!?
みやり いいですよ!
立夏 すごく出来が悪くてリアリティがあるからね。
みやり これがハヤブサの第一弾で(自分が)期待してたやつ。これぐらいチグハグになるかと思ってた。
立夏 ハヤブサは初回から結構ちゃんとできてしまったからな。我々はハヤブサで調子に乗ってしまった……。
みやり やっぱ(ハヤブサは原作小説という)柱というか思想見たいのがあるから。青空文庫の作品ベースなので。そこが軸になるのかもしれない。これマジで難しいですよ。難しすぎて逆にストレスがない。
もういっかい!
立夏 次やりませんか!? もっかいテストプレイ。次は(300文字から)200文字にしましょう。
みやり わかりました。順番変えますか?
立夏 はい。順番はみやりさんからにしましょう。
みやり 書き始めます。
~私たちの旅は続く~
ありがとうございました
感想戦の中で名前の出てきた「ハヤブサ」は私たちでよく遊んでいるカルガモのような文学遊びです。
小説を短歌に翻訳して、その短歌から小説を逆翻訳する。文字が変身していく様子をお楽しみいただけます。ぜひ。
今回のカルガモも、また遊んでいきたいなと思っています。最後まで読んでくださりありがとうございました!