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【連載小説】 日雇いと愛 エピローグ


僕は久しぶりに日雇いの現場に出勤した。

大型連休が重なったことと単位認定試験が終了して結果を待っているところだったので家にいてもやることがなく久しぶりに日雇いに行きたくなった。

日雇いの現場に行くと青井さんが声をかけてくれた。

「田辺君久しぶり。仕事続けてるの??」

「はいっ」

「なんか調子良さそうじゃん。元気そうでよかったよ」

「青井さんは追っている夢はどうなったんですか??」

「中々うまくいかなくてね。色々あったんだよ。それで来年、実家に帰ることにしたんだ」

「そうだったんですね」

「今は最後残っている仕事を終わらせるのと生活費稼ぐために日雇いやってるんだ」

「そうなんですね」

青井さんが東京で夢を叶えられなかったことが衝撃だった。東京来た若者は全員夢が叶うと思っていたけどそんなこともなかった。

「そういえば、住民税払ってる??(笑)」

「払ってますよ。あのとき青井さんに教えてもらって助かりました」

住民税の仕組みをインターネットで検索して自分で支払うようになってから、自分が稼いだお金が全て自分のために使えなくてガッカリしたことを覚えている。

けどそれらの税金があるおかけで私が区や市のサービスを受けられているってことも最近勉強した。

知らなかった頃はただただ怖かった。

青井さんと別れた後、私が現場作業をしていると以前私に肩パンをした男が働いているのを見つけた。

話をかけることは一切しなかった。

けど周りから少し煙たがられてるように見えた。あの人はまだ日雇いを続けているんだな。

現場作業終了後に山田さんに話しかけられた。

「田辺。お前最近見ないから寂しかったぜ」

「そうですか」

「冷たいな。あいかわらず。また居酒屋でも行こうぜ」

「行かないですよ。山田さんと居酒屋行っても割り勘じゃないですか」

「はっはっはっはっ。たしかにそうだ」

「僕は忙しいんですよ」

「そうかい。けど元気そうでよかったよ。お前はあっち側でもなかったけど、こっち側からも抜け出したんだな」

「前々から言ってるこっち側とかあっち側ってなんなんですか」

「シラねぇ」

山田さんは嬉しいそうだった。

私の解釈はあっち側とは地元が嫌いなくせに怖くて行動できない人。

こっち側とは東京に逃げてきても結局、なにも行動しない人。

って勝手に考えていた。

正解なんてないんだろうけどさ。私はこの人に意地悪をしたくなった。

「山田さんって大学とか卒業してるんですか」

「一応、大学院まで」

「えぇ。マジっすか」

「一応、東大」

「えぇぇぇぇぇっぇぇっぇぇぇ」

「そんな驚くなよ。人は見かけじゃないんだって」

私のこっち側、あっち側の解釈も間違っているんだろうな。

人生はこれだから面白い。

また居酒屋に行ってやってもいい気がした。

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