【連載】負の世界遺産 10選 ①ビキニ環礁核実験場
はじめに 負の世界遺産とは
海外旅行に行く際、ぜひ抑えておきたいスポットといえば各地の世界遺産ですよね。日本では富士山や姫路城など、世界に誇る風景や建造物が登録されています。直近ですと、2019年に大阪の古市・百舌鳥古墳群が登録されました。
一方で、「負の世界遺産」という言葉を聞いたことはありますか?
世界遺産の多くはその自然や風景、遺産の美しさを誇り、過去を称え、未来へその美しさを継承することを目的としています。
しかし、中には人間の過ちが産み出した遺産も存在します。
例えば日本では、原爆ドームがそれにあたります。
画像:https://www.hiroshima-kankou.com/world-heritage/world-heritage/dome
原爆ドームは、日本人なら誰もが知っている通り、第二次世界大戦や原子爆弾の悲惨さを象徴する建物です。平和の大切さや、核廃絶を世界に訴える遺産として、1996年に世界文化遺産に登録されました。
このように、人類が犯した過ちを記憶に留め、教訓とするためにカテゴライズされたものが負の世界遺産と呼ばれており、世界中に点在しています。
負の世界遺産は、ユネスコで明確に定義されているものではありません。本連載ではWEBサイト「世界遺産オンラインガイド」を参照し、負の世界遺産一覧として挙げられている遺産の中から厳選したものをご紹介します。
<①ビキニ環礁核実験場>
画像:http://whc.unesco.org/ja/list/1339
先ほど原爆ドームを例に取りあげたので、今回は同じく核兵器関連で世界文化遺産に登録されているマーシャル諸島のビキニ環礁核実験場を紹介します。
ビキニ環礁は第二次世界大戦後、冷戦の幕開けに伴い、アメリカが現地住民を移住させ計67回の原爆実験を行った地です。一連の実験は、広島で投下された原子爆弾7000回分に匹敵したとされ、環礁の地質や自然環境、人々の健康に甚大な被害をもたらしました。
ここでは、第二次世界大戦では使用されなかった水素爆弾の実験も行われました。1954年3月1日にビキニ環礁で実験された水爆「ブラボー」の威力は広島型原爆の1000倍とされ、「ブラボー・クレーター」と呼ばれる穴がその威力を証明しています。
静岡のマグロ漁船「第五福竜丸」も、ブラボーにより被曝し、半年後に乗組員の一人が亡くなりました。近年では高知県の漁船も当時被曝していたことが明らかとなりました。
広島と長崎の悲劇に加え、アメリカのビキニ環礁での水爆実験は世界的な反核運動の機運を高め、2010年に世界文化遺産に登録されました。
原子爆弾による放射能の健康被害は、直接被曝した人たちだけでなく、その子供や放射能を浴びたものを口にした人にも広がっています。今でも放射能による健康被害に苦しんでいる人、自然を取り戻そうと活動している人がいます。
広島の原爆ドームやビキニ環礁を守ることは同じ悲劇を繰り返さない、という人類の強い決意でもあります。
過去や現状を知ることも大きな一歩です。第五福竜丸に関しては、日本で多く報道されているので、ぜひ調べてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ヘッダー画像:https://worldheritagesite.xyz/media/212/
参照サイト
・https://worldheritagesite.xyz/bikini/
・http://whc.unesco.org/ja/list/1339
・https://www.asahi.com/topics/word/%E3%83%93%E3%82%AD%E3%83%8B%E7%92%B0%E7%A4%81.html
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