読書メモ36「カラー版名画を見る眼Ⅰ─油彩画誕生からマネまで」
高階秀爾さん、お名前くらいは私でも聞いたことがあった。
絵画を見るのは好きだけど、あんまり詳しくはなくて
見た時に胸に広がる感触が心地いいので
何だろうあまり言葉にするのを好まなかった。
同じようなテンションで絵を見る恋人とは
よく美術館に行った。
まあ彼は障害者手帳を持っていて無料なのと
そもそも介助がないと一応不安だったのもあってだけど
本当によく美術館には出かけた。
横浜美術館の近くに住んでいたのもあるか。
たくさん行ったから
「彼の好きそうな絵」
が分かる。
彼も私の好きそうな絵が分かる。
「これが好きでしょ?」
とお互いに言うのは全部当たる。
意外なものを好きだと言うことももちろんある。
その意外さに自分も驚くことも。
今も1人で美術館に行っては
「ああ、これは彼が好きな作品だ」
と思う。
その絵の絵葉書があれば、それを今も買う。
「発作が起きそうな絵」というジャンルが
てんかんを持つ彼にはあった。
心に何かが広がるんだろう。
そういうものを「感じる」のが
彼と私の「絵を見るスタンス」だった。
絵にはモチーフがあって、意味があるらしいよと
どこかの美術館での解説で見かけて
2人でそれを探しながらみるのも楽しかった。
そういう「感覚だけの鑑賞からの脱却」の助けになるのがこの本。
高階さんって難しいこと言ってそうな顔だと思ったら
全然やさしくて、美術への愛に溢れた文章。
これは次のも買わねばならない。
他の人の解説本もたくさん、あれこれたくさん出ていて
本屋さんですごく悩んだんだけど
高階さんの本を買って本当に良かったと思う。
微に入り細を穿つようなのは、感覚鑑賞から出るには
私にとっては不向きだと思う。
お腹いっぱいになるし、着物警察みたいじゃん。
というか着物警察みたいだったらどうしようかと思いつつ開いたこの本はそんなこともなく、
やさしく導いてくださるものであった。
食わず嫌いしててすみません。
「美しいものを嫌いな人などいて?」
─ララァ・スン
おしまい
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