フジコヘミングさんの追悼番組を見て〜壊れそうで壊れない演奏を聴きたくて
フジコヘミングさんの追悼番組が年末NHKでいくつか放送されており見入ってしまった。
いつかコンサートに行ってみたいと思っていたが、亡くなっていたことを知らなかった。いや、恐らくニュースで見てはいたが気にする余裕がなかった。過去にチケットを取ろうとするといつもソールドアウトだった演奏家の一人。チケットの取りやすそうな地方や海外まで追いかけていく気概はなく、ついに生演奏を聞くことはできなかった。
何年も何年も前のこと。池袋か渋谷かの音楽店舗でフジコさんのCDが試聴できるよう設置してあった四角いBOX。クルクルCDが中で回る様子が見え、その光景が今も目に焼き付いている。その前で、大きなヘッドホンを耳にして無心にカンパネラを聴いていたことを思い出した。
番組の中で、私は自分の弾くカンパネラが一番好き、他の人の弾き方は気に食わないというような話をしていた。
カンパネラなんて私からすると音が出せるだけですごい曲。
そこに魂を込めて演奏できる音楽家は一握りだろう。それが観客に届く演奏家はもっと少ない。
機械みたいに弾く演奏家は嫌いだと。ぶっ壊れそうなカンパネラでいいじゃないとフジコさんは言っていた。
この壊れそうで壊れない演奏を追求している演奏家の生演奏を今年は昨年より多く聞きたいと思った。ほとんどのプロの演奏は私にはその技巧が、技巧だとわからないほどに研ぎ澄まされているものばかり。それをほんの少しでも感じられたら良いなと。
ある曲を勉強すると、その曲を演奏するプロの演奏がそれまでとはあまりにも聴こえ方が異なることを学んだのが、昨年のレッスンでの収穫だったと思う。
フジコさんのピアノの音、彼女のいうぶっ壊れの加減の好みは人によって別れるところでしょうが、私はとても感銘を受けました。
リサイタルで着る衣装も素敵で、おそらく多くは彼女オリジナルの世界で一着の衣装のように見え、彼女にしか表現できない独特の世界観を全身で表現されているようでした。
来週からの仕事が始まる前にカンパネラ聴いてみよう。思えば何年も聞いていない。ピアノ再開してしばらくした今ならまた少し聴こえ方が違うはず。