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『怪物』を見て
映画『怪物』を見た。
書き殴りだが、感想と、今思うことを簡単に書き残しておく。
劇中のセリフ。
「君は敵に襲われると、体中の力を全部抜いて諦めます」
「痛みを感じないように」
早織(湊の母親)と、依里くんは似ている。
本当は悲しんでいいのに、怒っていいのに。怒らなければならないのに、考えない、見ない、忘れる、諦める。
それが、本当の、1番の地獄なんじゃないだろうか。一番悲しいんじゃないだろうか。
自分を守る為の一種の方法だったとしても、それはあまりにも悲しすぎる逃避だ。
湊と依里がしていたのは、逃避行なのだろうか。
2人の純粋で楽しい時間は確かに2人だけのものだった。2人だけのあの空間で良かった。
つかなければいけない嘘と、気付かなくていい嘘と、気づきたくない嘘、気づきたくない真実、知りたく無かった真実、そういうものを目の当たりにした時、人は逃げるんじゃないだろうか。笑顔で、逃げるんじゃないだろうか。心の中は泣き出していて、怒りで溢れているのに。
人は隠せてしまう。いとも器用に。
動物のように本能のまま生きていたら、上手くいかないことを知っているから。賢いから。
でも、それは違う。私たちは怒っていいのだ。怒って、悲しんで、恨んでいい。人に憎しみを抱いてもいい。
それらを全て捨てた時、人は人ではなくなる。
あの校長だってそうだ。依里くんだって、早織だってそうだ。みんな、人じゃないみたい。
捨てないで。本当のあなたの気持ち、本当のあなた自身をどうか捨てないで。諦めないで。この世界や人間に絶望する前に怒って。どうか怒って。感情を露わにして。
でも、これは綺麗事で、世界には諦めないとやっていけないようなそういうクソみたいな事実が溢れていて、無理して笑っていないと自分まで崩れてしまうようなことが沢山あって、諦めないと、もっともっと自分が苦しくなるようなことが沢山ある。
何がそういう人を救うのか。何が、救ってくれるのか。