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『フランチャイズに加盟する前に読もう』5.飲食店生存率の謎

今回は、フランチャイズチェーンへの加盟について、相談窓口に来られた方とのやりとりも含めて、「飲食店生存率」を検討したいと思います。

相談者
飲食店の中でも個人店の生存率が低いって聞きますが、本当なんでしょうか?

わたし
そうですね、一般的によく言われていることです。ネット情報では実際に「飲食店5年生存率」といったキーワードをもとに説明されています・・


飲食店5年生存率の信ぴょう性

「飲食店5年生存率」という言葉をネットで検索すると、それを引用して山ほど自社の有利性を説明するフランチャイズ本部が出てきます。

また、5年生存率を切り口に様々な提案を行う経営コンサルタントもいます。まさに営業活動の常とう句となっています。

よくある引用の方法は「個人で店を開業した場合、5年後の生存率は30%前後で、FC店舗は70%程度生存している」というものです。

続けて、「だからFCに加盟する方が良い」といった論理展開です。

しかし、その根拠となるはずの統計は、飲食事業所の開業、廃業等は政府系の統計数値がありますが、FC店舗の廃業数はどうやって集計できるのか、基準が分かりません。

さらにこの生存率の出典元を明記しているところは極わずかで、出典元を示している場合は個人店の5年生存率のみを対象としています。

大体の場合は「・・・と飲食業界では言われています。」といった言いようです。そもそもこの数値ってどうやって集計できるのでしょうか、それが不思議でなりません。

私が関係したFC本部でこの統計を取っている企業やブランドを見たことがありません。運営企業が知らないデータをどのように集計しているのでしょうか。

そもそもFC店のオーナーがもしFC契約を解除して廃業したとしても、その店舗を次の加盟者に引き継げばその店舗は営業し続けるので閉店にカウントされません。

こういった場合、どういう調査をすれば、前オーナーの店舗が閉店したとカウントできるのでしょうか、全くもって理解できません。

わたし

曖昧な言葉や数値に踊らされて、判断を誤ることがないよう、論拠を見極め冷静に判断しましょう

相談者
分かりました、それにしても5年後に半分以上の個人店が姿を消すなら、やはりFC店の方が安心ということなのでしょうか

わたし
FC店か個人店かという判断は重要です。生存確率だけでなく、あなたがどちらの運営形態に向いているのか、それを検討されてはいかがでしょうか

飲食店5年生存率の中身を深堀り

先ほどの前提を加味して「飲食店の5年生存率、個人店は30%、FC店は70%」を検証してみたいと思います。

おそらく、この数値は大まかなイメージを共有するために一人歩きしているようです。正確な事実ではないものの、誰かが想像力を働かせて導き出したのだと思われます。

言い得て妙と言いますか、そうだろうねと何となく納得感があるから、これほど浸透したのだと思います、では現実はどうでしょうか。

FC店の多くは既に市場に受け入れられ、利益を上げている店舗の実績を元に加盟店を募集しているので、統一されたブランドのもと店舗を運営すれば、同じように受け入れられる可能性が高く、全く新しい業態よりは生存率が高まるのは間違いないと思います。

さらにFC加盟契約はそもそも5年、7年、10年といった契約期間が多く契約期間の途中でやめることができません

もし契約期間内に契約を解除しようとすれば、多額の違約金が発生するので、やめたくてもやめられないという事情があります。

なので個人店なら開店して直ぐに失敗したと思えば、早期に閉店し出血を抑えるということができますが、FC店の場合はどれだけ借金が膨らんでもやめられないという切実な問題もあります

私は33才のころまで11年間自営業をしていました。はじめの頃はバブル景気崩壊後とは言え、まだまだ外食が元気な頃だったので年収1,000万円を下回ったことがありませんでした。

しかし32才の時に出店した3店舗目が大失敗で、開店後1年半で閉店しました。あれがもしFC店で、例えば契約期間が5年間だったら、恐らく破産していたと思います。

幼い子供もいたので、破産する前に清算し、外食を一から学び直すためにFC本部に就職しました。以後20年以上、2社のFC本部で様々な経験を積みました。

FC店と自営業の特性の違い

革新的な業態やブランドを世に出すには、はじめは個人店主である創業者のオリジナリティやバイタリティに勝るものはありません。

また圧倒的な利益を上げるのもFC店よりも個人店の方が多いと思います。

FC店は売上歩率でFC本部にロイヤリティを支払ったり、様々な本部のサービスにフィーがかかっていたり、酒類メーカーなどからのリベートが本部に支払われたりする分、加盟店の利益が少なくなります。

つまり個人店なら経営者の利益になるものの一部が本部に還流する仕組みになっているので、本部のスケールメリットでコストダウンできる部分を差し引いてもFC店はコスト高だといえます。

なので事業が上手くいった場合は個人店の方が収益は大きくなります。

5年生存率の差をもってFC加盟を判断するのは無理があるということはご理解頂けたかと思います。

万が一、この法則が正しかったとしても、これは生存率の平均値を相対的に比較して優劣を論じているだけなので、あなたの店舗がどちらに転ぶかは分かりません。

5年生存率を信じるにしても、FC店でも5年後には30%はなくなっているということなので、もしFC店に加盟したとしても、30%もの確率で閉店の憂き目をみることになります。

私は天気予報で雨の確率が30%の日は折り畳み傘を持って外出します。30%はそれぐらいリスクのある確率だと思います。

わたし
あなたは、どんな仕事をしている時が楽しいですか、だれかに指示された通りに仕事をすることはお嫌いですか?

相談者
わたしは優柔不断で物事を判断することが苦手です。でも言われたことをきちんとやるので、上司にはよく褒められます・・

FC加盟or個人店の選択基準

個人店に向くのは、創造的な仕事が好きで、メニューやサービス方法を考えたり、お店の内装を考えたり、自由な発想で勝負するバイタリティにあふれたタイプです。

もちろん、何の実績もスキルもないのに出店するのは単に無謀なだけなので、そういうことを言っているわけではありませんが、FC店は本部の制約が多いので自分の発想で勝負したい方には不向きです。

FC店で成功されるタイプは、FC本部やスーパーバイザーから伝達されたことをきちんとやり切る方です。特別な発想やひらめきはあまり必要ではありません。

かえってFCチェーンとしての統一性を害する恐れすらあり、FC本部側からもあまり評価されないでしょう。

そうなるとFC本部からの最大限の支援を引き出すことができず、結局上手くいかないことが多いように思います。

FC本部に長くいて加盟者との面談を重ねていくうちにいつの間にか、FC向きの性格、個人店向きの性格というのが分かるようになりました。

加盟契約面談では、個人店向きだなっと思い当たると、FC店で起こり得る制約的な問題を詳細に説明させて頂き、そういった部分を飲み込んでやっていくという意思確認が出来なければ、加盟しないことをお勧めするようにしていました。

それほど、向き不向きというものは厳然とありますし、これを見誤るとお互いが不幸になるので、細心の注意を払っていました。

FC加盟or個人店の選択は、加盟を検討されている方の個人特性や性格、企業の場合であれば、組織風土といったことを判断基準にすべきでしょう。

相談者
FC向きの性格、自営業向きの性格というものがあるんですね、飲食店生存確率に惑わされ過ぎていました

わたし
加盟を検討される方は、人生をかけてチャレンジされるのですから、自分にあった仕事を選んで頂きたいと思います

リストランテ"TETSU"のホームページ


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