損害保険の命の値段
損害保険はリスクマネージメントの中のファイナンシングの一部で、リスクを損害保険に転嫁して、事故があったら保険金を受取る事です。
例えば、家に火災保険をかけて火事になったら保険金を受取り、
家の修理をする。
それでは、労災事故や交通事故で人が亡くなった時の「命の値段」は、どうやって決まるのでしょうか?
死んだ人は、保険金を受け取っても生き返りませんよね。
しかし、保険は保険金を支払う事でしか解決出来ないので、「命の値段」を算出しなくてはならないのです。
命の値段の算出基準
交通事故を例に、命の値段の計算方法を説明します。
交通事故の場合の命の値段の算出基準は3つあります。
「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士(裁判)基準」です。
基準が3つあることも、個人的には、結果の公平性が担保されていないので、おかしいと長年思っていました。
弁護士事務所がホームページで交通事故は弁護士に依頼したほうが損害賠償金が高くなると書いているのは、基準が複数あるからなのです。
もちろん「弁護士(裁判)基準」が一番高いのです。
それなら、「任意保険基準」を「弁護士(裁判)基準」に合わせれば良いと誰もが考えますが、この問題は損害保険業界で、今でも無視されています。無知な被害者が少ない損害保険金しか受け取れないのは、なんとも不甲斐ない事だと思います。
「命の値段」の算出方法
死亡による賠償金は大きくは2つあります。
「死亡慰謝料」と「死亡遺失利益」です。
「死亡慰謝料」は死亡した本人・家族の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
「弁護士(裁判)基準」では、一家の支柱 2800万円 母・配偶者 2500万円 その他 2000万円~2500万円とされています。
「死亡遺失利益」は次の計算式で算出されます。
基礎収入額✕(1ー生活費控除率)✕就労可能年数に対するライプニッツ係数
基礎収入額は、事故前の収入で、家事従事者や平均賃金より低い場合は、
平均賃金を使います。
生活費控除率は30%~50%を用います。
ライプニッツ係数は、賠償金は一時金で受け取るので就業可能年齢67歳までの中間利息を控除した係数を用います。
例えば、年齢40歳 妻・子供2名の4人家族 年収500万円の会社員が死亡した場合
「死亡慰謝料」
本人2800万円 妻200万円 子供100万円×2=200万円 合計3200万円
「死亡遺失利益」
500万円×(1-0.3)×18.3270=64,144,500円
「死亡慰謝料」3200万円+「死亡遺失利益」6414.45万円=9614.45万円
どうでしょうか。高いと感じますか?安いと感じますか?
私は損保マンとして約30年働いてきて交通事故や労災事故で数多くの死亡事故の支払いをしてきました。
「命の値段」を付けるのは、後味の良いものではありません。
死亡事故が起こらない世の中になることを望みます。