モノローグでモノクロームな世界
第四部 第二章
三、
誰かを好きになる事は、それだけで尊い事だ。
それなのに、その事を否定しようとした。
言えなかった。
言う事は許されなかった。
言えば、きっと彼を困らせるだろう。
きっと彼を失うだろう。
私は、そんな事で失いたくなかったのだ。
この世界で唯一の理解者を。
そうして、己の心を誤魔化すために、嘘の恋をした。
否、それは恋なんて言ってはならない程、醜い色をしていた。
それでも良かったのだ。
ただ、こんな愚かな感情を忘れられるならば。
誰に罵られても良かったのだ。
彼以外、ならば。
その日を最後に、私は顔を思い出せない男の元を訪ねる事をしなくなった。
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