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モノローグでモノクロームな世界

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2019年4月の記事一覧

モノローグでモノクロームな世界

モノローグでモノクロームな世界

第三部 第二章
一、
 「旅の一番の楽しみは、今まで知らなかった光景と自分を見つけることだ。」

そう話していたお祖父ちゃんの言葉を思いだした僕に、僕の優秀なトリプル・システムは些かの感情の高ぶりを僕に示していた。
扉の向こうに立っていた男と少女は、ついてこいと言わんばかりに僕に向かって片手を動かすと背を向け、歩き始めた。慌てて僕は小走り気味に門の中へと足を踏み入れる。靄が色濃く立ち込める景色にと

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WhiteNOise #07

WhiteNOise #07

僕達が密かに夢見た夢は夢のままで、

それ故に僕達は夢を見れたんだ。

モノローグでモノクロームな世界

第三部 第一章
三、
 鉄塔を抜け暫く歩くと、それまでの道のりの寂しい景色から一変した。
町を南北に貫く大通りの両端には、一分の隙間すらも許さないかのように、鉄パイプを組み立てただけの簡易な屋台が軒を連ねている。パイプからはどの店も真っ白な布をたなびかせている。その下で生きる人々は、皆、十月国で暮らす人々よりも活気に溢れているように、僕の目には映った。
 籠一杯に生鮮食品を詰め込んだ商人。珍しい布

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モノローグでモノクロームな世界

モノローグでモノクロームな世界

第三部 第一章
二、
 入国審査官をしていると、実に様々な人間と出会うことがある。特に入出国が容易にできなくなった現代では、入国審査の許可を求めて様々なアプローチをしてくる者が後を絶たない。
 弁解をするならば、僕が彼らから得た物は、全て決して違法な物ではない。ただ中々国内に居ては手に入りづらい物だった。無声映画や紙の書籍、それらデッド・メディアと言われる物。嗜好品や我が国では入手が難しい外国の製

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モノローグでモノクロームな世界

モノローグでモノクロームな世界

第三部
第一章
一、
 十月国からミナミまで高速メトロに乗り込むこと三十分。そこからサカイまでは目と鼻の先だった。

 サカイは九つの国に併設された独立した商業都市の総称だ。どこの国にも属さず、どこの国からも制限を受けない場所。サカイに暮らす者は、それぞれの国に併設されているサカイを行き来しながら、壁の外にある物資をサカイで売買して生計をたてている。
 サカイと国の間にある内壁には、併設する国の衛

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