シェア
一ノ瀬 織聖
2017年9月23日 15:34
第三章 六8月25日(水) 恐らく私達は、皆、最初からどこか壊れていたのだろう。樋賀 砂奈も志摩 華唯も、もちろん、私、花園 風花も。欠陥品であった私達は、その欠けた部分を埋め合うように、お互いを求めた。そのピースは嵌まり合うことは無かったけれど。 私達はいつかこの関係に終わりが来ることを気が付いていながら、気づかないふりをして笑っていた。甘い甘い時の中に、どうしようもなく醜くて、
2017年9月23日 15:30
第三章 五 月明りを反射させる波しぶきの中に答えを求めるように、静かにそれらが繰り返すさまを私たちは何時間も見つめ続けた。「これは、慰めにしか聞こえないと思うけれど。」そう切り出した華唯を、月光の下で見つめる。バスの中で話していた時のような舌っ足らずな口調とは打って変わり、大人びた口調で話す華唯の横顔は、どこか寂し気だ。「花園風花は、砂奈の話をいつも楽しみにしていたわ。それは、変わらない
2017年9月23日 16:23
第三章 七 櫻井 道隆。一ヶ月前、探偵だ、何でも屋だと名乗っていた男は、一ヶ月後、私たちの前に現国の教師として颯爽と現れた。しかも、極めつけは怪我の為、一週間前から療養中である担任の代理として、私達1Bの副担任に就任した事だ。お陰で、その年最後に行われた期末考査は、過去最悪の出来だった。「いいじゃないか、それでも全体の十位なんだろ?ほら、見た前、君。こちらは、英語と数学以外、赤点だよ。」
2017年9月3日 22:24
第三章 『死にたがり、壊したがり。奇麗だから、さぁ、壊しましょう』一、 W学園に纏わる黒い噂!!! 県下有数のお嬢様校として知られるW学園。カソリック系のミッション・スクールとして、また、その有名大学への進学率の高さから、県内の受験生に高い人気を誇るこのW学園には、ある黒い噂が付き纏うのを、読者の皆様はご存知だろうか。 発端は、今から十年前の冬に遡る。高等部の校舎裏のテニス・コー
2017年9月7日 22:58
第三章 四 人を殺してはいけません。他人を殺してはいけません。自分を殺してはいけません。自分を殺してはいけません。そんな当たり前のことを壊そうとした。もう、何度も。それなのに、いつだって直前で止めてしまう。どんな方法でも、最後に必要なものは成し遂げようとする確固たる意志だ。そう解っているのに。明日から逃げたいと、もう何度も願っているというのに。それなのに、私はいつも直前で
2017年9月7日 22:40
第三章 三 私たちは今、学園から海へと向かうバスに揺られている。車内には私達以外に乗客は無く、静寂が支配する空間から逃れるため、私は窓の外を眺め続けた。波間に揺れる月光。ヘッドライトに照らし出される果てしなく続く黒い道。遠くにぼんやり見える町灯り。 学園発のバスは、ゆっくりと私達を乗せ、暮れゆく港町を駆けてゆく。「このまま、終着駅に着かなければいいのにね。」「このまま、どっか
2017年9月3日 22:27
二、 無機質になりたい。 たぶん、ずっと前から。透明になりたい。 たぶん、ずっと前から。有機体でいるのは、時々、凄く疲れるから。でも、無機質になることも透明になることも、出来ないって解っちゃったから、白と黒で塗り潰して、そこから本当の色探し。 見つからなかったら、今度こそ終わりだよ。ネオンピンクが眩しい看板の下で、君が笑いながら言っ