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トンネルを抜ける Day5 / チキンの丸焼き

 1日だけ書けなかったから、今日は2日分を連続で。どうにか365日書いてみたいから。自分の1年を俯瞰してみたいから。

  31日の土曜日は、朝から昨日のタニガワとの楽しい時間の余韻を引きずりまくっていた。タニガワであろうと、誰であろうと、家に来る客人達との時間は自分にとって何物にも代えがたい。どうしてかくも楽しい時間は、淡雪のようにはかなく消えていくのか。それを思うのは、翌日に宴のあとの片付けをしている時。テーブルに残る皿やグラス。タバコの吸殻。人がいた気配。人がいた証。寂しいけど、嫌いじゃない。

 楽しすぎた時間を予想していたのだろうか。土曜日を1人で過ごすのを不安だと思ったのだろうか。週の半ばにすでに連絡をしていたのは、自分の中学、高校の恩師。恩師と言っても担任についたことはないのに、何故か可愛がってもらっていて、今では親子のようにご飯を食べに行ったり、旅行にも行く仲。退職をした後、彼女は英語の家庭教師をして暮らしている。

 病気持ちと言うこともあり、そしてこの暑さもあり、なかなか遠出ができない先生に何をお持ちしよう。そうだ。彼女が大好物なチキンが良い。自分の自宅からはそれなりに距離がある馴染みのチキン屋に買いに行った。1人で全てを切り盛りしているマスターは、今日も1人、淡々と仕事をしていた。いつものように、世間話をし、チキンが焼き上がるのを待った。

  丁寧に焼かれたチキンの丸焼きは、恩師の胃袋をいつも通り鷲掴みにし、彼女が作った付け合わせとも見事にマッチし、私達は心ゆくまで食事を楽しんだ。私が高校の頃、素敵な彼氏がいるらしいとかそんな話が生徒の間に広まったこともある彼女。未だに本当のところは親子のように仲良くなっても、そこには触れてはいない。教師と言うよりまるで凛としたアーティストのような風貌の彼女も、もう70歳を超えた。

  オリンピックのサッカーを2人でボーッとみているときに彼女が言った。「やっぱり、1人で見るより、誰かとユニフォーム一つにとってもああでもない、こうでもないって言いながら見るのは楽しいねぇ」。普段だとあまり気に留めない言葉かもだけど、いつもよりなんだか耳に残った。







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