ツインレイ小説第二部より抜粋㉑
彼が塾を開ける時間は日によって違うけれど、それでも、まだ子供たちが来ない時間帯とか、あるいは子供たちがみんな帰った後とか、そういう仕事の合間合間に、彼の気持ちが入ってくることがあった。
今、私を想っていること。
ただの一人の男として、遠い目をして私のことを考えていること。
私を抱きたいと思っていること。
触れるまでもなく、濡れていることが分かるから、だから私は気付く。
最初の頃は、怖かった。
あまりにも大きな彼の気持ちが、覆いかぶさるように襲ってきて、台所でお皿を洗っていた私は、立っていられなくて床に座り込むしかなかった。
怖くて、泣きながら、「待って、ちょっと待って」って言うことしかできなかった。
今は、私も慣れてきたし、そこまでのことはなくなったけれど、それでも、それは、私の性欲だとか、そういうものではなくて、むしろ、何で今こんな時に、こんな所で、みたいに、私の都合なんてお構いなしにやってくるのだった。
その日、最近あまりできていなかった棚の拭き掃除や書類の整理していたら、やってきて、彼は、私を抱きたがっていた。
私は手を止めて、寝室に、行く。
彼に、身も心も、委ねる。
あったかい愛が注がれることもあれば、強く抱きしめてくることもあれば、やさしく触れてくることもあったり、時に、彼は泣いていたりも、する。
どれだけ私を求めているか、早く一緒になりたい、自分だけのものになってほしい。
結婚生活のこと、塾の経営のこと、彼が抱えてるもの、お金の不安。
私も一緒に泣いている。
だから最初から言ってるでしょう?一緒にやっていこう、って。一人で抱えないで、って。
私は彼に伝える。
全部、全部、分かってるから、って言って抱きしめる。
そうして私は、右手の中指を口に含む。
ゆっくりと、左右上下に舌を這わせる。
指の付け根まで、包み込むように咥える。
扇情的な姿を見せて、勃てることもいいけれど、私は、もっと、安らぎを与えたかった。
だから、あったかく、咥えて、彼に愛を送った。
待って、これ、ダンナにもしてるの?って彼は、身を離す。
私は、とろんとした目のまま、彼の声を聴いている。
私は、咥えるのは好きだった。若い頃から。
ヤだ、ホントにもうダンナとしないで、って言ってくる。
気が狂う、って。
そうして私たちはまあるくなってつながって、そこには何にも足りないものなんてなくて、完全で、完璧で、私たちは、二人で美しい丸となって、宇宙に浮かんでいた。
いつになったら、本当に、こうできる?って彼が言う。
今すぐだっていいよ、って私は言う。
誘ってきても、何言ってんの、とか言ったりしない。ちゃんと、受けとめる、うん、って言う、そう伝える。
彼はまた、グチグチ言ってくる。
僕は何にもできてない、自分が不甲斐ない、何でこんなに愛してるのに愛し合えないの?って、また家庭のことや、お金のことを言ってくる。
さっきまで泣いていた私の目は乾いていた。
それは、あなたが何とかすることでしょ?って私は言う。
何とかしなさい。本当に私が欲しいのなら。
口説いてみなさい、私のこと、本当に。
初めて、彼に、私は言う。
パートの時間が近付いてたから、私はシャワーを浴びに、部屋を出る。
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