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難関大受験のおすすめ参考書・勉強法(英語編)

数学や物理と違い、英語は中学生の頃から大の苦手であった。単語を覚えるのが大嫌いで、規則性のわからない文字列を大量を丸暗記しなければならないのが苦行でしかなかった。大学受験生になってもそれが変わることはなく、現役で京大に落ちたのも、浪人時に数学、物理、化学で圧倒的な成績をとり、東大実戦と東大オープンでA判定が出たにも関わらず東大を受験しなかったのも99.9%英語のせい(正確には好きな科目しか勉強しなかった自分のせい)である。

なんなら京大に受かったときも英語の点数は酷かった。実力が伸び始めたのは大学に入ってからで、今では洋書を読んだり、論文(と言うにはあまりにも拙いが)を書くのにもそれほど苦労しなくなった。リスニングも洋画を字幕と吹き替えなしで楽しめる程度にはマシになった。スピーキングはまだまだ発展途上だ。

そんな私でも英語が多少なりともできるようになったのは、やはり浪人時に竹岡広信先生に習ったことが大きいだろう。そんなわけで私は竹岡信者であり、今回の記事は少々偏った内容になっていると思われる。また、数学や物理、化学と比べて英語は今も苦手なので、比較的浅い内容しか書けないのは勘弁してほしい。


参考書

いつも通り、使った参考書をまとめておこう。

  • 必携英単語LEAP

  • 英文法の核

  • 大学受験のための英文熟考

  • 竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本

現役時も塾には行っていたが、数学、物理、化学は自習のみで点が取れていたので授業をとっておらず、英語、古典、地理のみ授業を受けていた。そのため、独学で学ぶ人にとっては演習量が少ないかもしれない。また、私が使っていたものは基本的に改訂前であり、現在は内容に若干違いがあるかもしれないことをご了承願いたい。


必携英単語LEAP

竹岡先生が作った単語帳。本書ならではの特徴が多いので、箇条書きで挙げていこう。

  • 単語をライティングやスピーキングで使いこなすべき"Active Vocabulary"とリーディングやリスニングで意味が分かればいい”Passive Vocabulary”で分類している。これにより、単語の暗記が長文読解と英作文の実力強化に強く繋がり、効率的な学習ができる。

  • 単語の難易度を著者の主観ではなく、CEFRで表記している。CEFRは国際的に最もよく使われている基準の一つで、信頼性が高い。

  • 一単語あたりの情報量が非常に多い。重要だが他の単語帳ではあまり載っていない意味はもちろん、語のニュアンスや語法、語源、注意点、頻出表現、熟語、派生語など多岐にわたる。

  • 例文が意味ごとにすべて掲載されている。これにより、単語の意味はわかるのに英文だとわからなくなることが飛躍的に減る。

  • 発音の説明が手厚い。正しく発音できる能力はリスニングと密接な関係がある。音声データも豊富なので、本書でリスニング力の向上が見込める。

入試問題は勿論、市販の参考書もよく研究していらっしゃる竹岡先生らしく、細部までよく作り込まれている。一部の人から単語のレベルが『システム英単語』などと比べて若干低いと懸念されていたが、先生はそれを「いわれのない批判」と一蹴したうえで、今回の改訂で難単語を大幅に増やしたそうだ。しかし、通期の授業でたしか京大の過去問を解説したときに、LEAPに載っていないけれど覚えておかなければいけない単語の説明があった気がする。そんなわけで、上記の批判は当たらずとも遠からずと言ったところか。まあ改訂後を買う人達は気にすることはないだろうが。


英文法の核

一般的に文法書というと、『総合英語Evergreen』などの分厚い参考書や、『Next Stage』などの4択問題集が主流である。しかし、それらは「なぜそうなるのか」という説明が不足した状態で、重要なことから実用性の低いマイナーなことまで区別せずにただ列挙しただけというものが少なくない。さらに言えばほとんどの問題集は問題の配列がランダムでないので、考えなくとも答えが推測できてしまう。細かい知識が問われる私大は別として、東大や京大などの難関国立大は、基本的な文法・語法が大多数を占める代わりに文法を深く理解し、よく考えないと読めない英文が出題される。

本書は文法事項を受験に必要な内容に絞り、代わりにその部分の論理を深く解説している。といっても「英語学」のような解析的な視点ではなく、英語を英語として理解し、使いこなせるようになろうという実用的な視点で書かれており、大学受験後も役に立つ。コンパクトでありながら到達点は高く、本書の内容をマスターして演習を積めば東大英語などの足がかりとなる。

ただし、コンパクトかつ本格的な内容ゆえに、独学では通読が少々難しいと思われる。勿論不可能ではないが、紙面の問題か、基礎的な部分の説明が不足している箇所が所々見られた。実際私も、塾で習ったことのリファレンスとして使用していた。本書に手を出すのは授業などで最低限の知識をつけてからで良いだろう。


大学受験のための英文熟考

こちらは英文読解の参考書。著者は竹岡先生である。竹岡先生の読解の参考書といえば『英文読解の原則125』が有名であるが、あちらは自分には難しすぎる上に量が多く手が出せなかった。こちらは上巻で入試基礎~標準レベル、下巻でやや難~難レベルまで網羅されており、基礎からステップアップするにおいてとても快適に勉強できた。違う著者の本で新たに勉強するとなると説明の仕方が全然違って苦労することがあるので、最初から最後まで同じ著者の本で勉強できるのは非常に便利だ。
また、先生本人の解説がCDでついているのが非常にありがたかった。紙面だけだと解説がどうしても不足してしまう事があるので。

竹岡先生の授業を軽く受けたことがある生徒は、多読を重視して細かい読解は重視しない印象を持つかもしれないが、実際は違う。あの授業スタイルはあくまで読解を十分に学んだ生徒により実践的な英語力と、難問にひるまない学力を身につけさせるためにああしているのであり、そのレベルに達していない生徒には、ゆっくりでいいから英文をきっちり読めるよう指導する。

その指導法は本書にも表れており、ときに英語学的な観点から受験英語の間違いを指摘し、生徒が正しい知識をもとに英文を正確に読めるよう、極めて論理的な解説がなされている。分かりやすいのだが、かといって分かりやすさを重視しすぎて説明を簡略化したりしないのが、師の真面目な性格が表れていると思う。

本書が難しいと感じた場合はまず同著『入門英文問題精講』がおすすめだ。説明のスタイルが本書とほぼ同じでありながら教科書~入試基礎レベルをおさえているので本書との接続にちょうどよい。逆に、本書のあとにやる参考書としては『英文読解の透視図』がおすすめだ。同レベルの参考書として『ポレポレ英文読解のプロセス50』や先程挙げた『英文読解の原則125』があるが、透視図が最も解説が緻密かつ問題の数や質が優れており、一番オススメできると感じた。もっとも英文熟考の時点で東大・京大レベルまで網羅されているので、英語の長文問題で高得点を目指すのでなければ無理して取り組む必要はないと思われる。


竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本

難関大受験者の間では極めて有名であろう本。他の英作文の参考書と比べて圧倒的に分厚く、そのぶん量も質も半端ではない。レベルとしては入試標準~難レベルであり、群を抜いて難しいわけではないのだが、解説の密度が尋常ではない。正直、大学入試でここまで求められるかわからないことも書いてあったりするが、大学入試を超えたアカデミック、あるいはグローバルな世界ではいずれも知っておくべき内容であり、入試だけで終わらない本物の英語を学んでほしいという竹岡先生の思いが反映されている。

単語帳や文法書など、本書以外の参考書は別におすすめしたやつでなくても良いと思っているが、英作文は本書の代わりになる本はないと思っている。それほどまでに完成度が高い。強いて言うなら前提となるレベルが少々高いので、基礎的な英文くらいは自分でかけるようになっておくと望ましい。平均的な自称進学校の授業でやる英作文がしっかり書けるレベルならついていけると思う。


長文問題

本当なら英語長文の問題集も何かおすすめするべきだが、自分は一冊もやったことがないので何が良いのかわからない。現役時は塾でやっていたし、浪人時も竹岡先生が「共通テスト英語演習」という授業のくせにそれを無視して東大や京大、医学部の入試問題をやっていたので、あえて問題集に取り組む必要はなかったのである。誰か知っている人は教えてほしい。


過去問

数学、物理、化学と一貫して赤本の25ヵ年よりも『東大入試詳解』『京大入試詳解』をおすすめしてきたが、東大英語は『東大の英語25ヵ年』もおすすめしたい。竹岡先生が書いてるからだろ、と思われるだろうしそれもあるのだが、客観的に見ても他の赤本と比べて明らかに完成度が高い。特に、問題の正答率は他ではなかなか見られないが非常に有用な情報である。しかし、25ヵ年の欠点と言うべきか、問題の配列が大問別なのが非常に気になる。東大英語はどちらも買うのがベストだろうか。リスニングは基本的には入試詳解のほうで良い。
また、志望校とは別の大学の過去問を解くのはありだ。標準レベルの問題で言うと岡山大学は良問が多いし、過去問より下のレベルでは神戸大学や筑波大学の問題はかなり良い。最上位レベルでは、言わずもがな東京大学の問題は素晴らしいの一言である。

共通テストの過去問は皆やるだろうが、まだセンター試験から変更されてから日が浅く、過去問が少ない。共テの過去問を完璧にやり終えたらセンターの過去問をやるようにしよう。予想問題や模試の過去問も悪くはないが、問題の質が違いすぎる。センターと共テでは出題形式は若干違うが、問題の根本は同じである。私の恩師も口をそろえて同じことを仰っていたので、これは間違いないだろう。




勉強法

数学編、物理編、化学編は「理論を正しく理解して問題を分析、研究すれば自然とできるようになる」という、理系科目が得意な人間による得意な人間のための抽象的な方法論を書いてきたような気がするが、本編はどちらかと言うと苦手な人のために向けた具体論が中心になる。

単語をしっかり覚える

英語ができるようになるためには、多くの単語を覚えることが最も重要だ。河合塾の某講師が「単語帳は5冊やれ」とおっしゃっていたが、あながち間違ってはいないように思う。とはいえ流石に5冊は無理があるので、まずは1冊の単語帳を完璧に覚えるようにしよう。先ほどおすすめしたLEAP以外にも『英単語ターゲット1900』『システム英単語』『速読英単語:必修編』『鉄緑会東大英単語 鉄壁』などの有名な単語帳であれば、受験レベルなら何を使っても問題はない。ただし、"Basic"や「入門編」などがついた簡単なバージョンのものは使う必要はない。

1冊目を覚えた時点で早慶などの難関私立以外であれば基本的に十分な単語力がついている、たとえ東大や京大レベルでも時間に余裕がなければ必ずしも取り組む必要はないし、取り組んだとしても問題の性格上、コスパが悪い。もし2冊目に取り組むのであれば『速読英単語:上級編』がオススメかなと思う。

しかしながら、英語が苦手な人はそう簡単に単語が覚えられるわけではない。覚えるコツとしては、単語を何かと関連付けて覚えることだ。脳科学的に人間は丸暗記は得意ではなく、意味や理屈などの追加の情報と知識を結びつけてセットで覚えたほうが記憶に定着しやすい。だから、語源に着目するなり語呂合わせで覚えるなり例文ごと覚えるなり、一対一で覚えるのではなく、たとえこじつけでも自分なりの付加情報とともに覚えてみよう。

もう一つのコツは念入りに復習することだ。これはよく言われるが、この言葉の本質を理解している人は少ない。簡単に言えば、一周目ですべて覚えようとするなと言うことだ。何事もそうだが、1回で覚えたりできるようになるなら人間苦労はしない。できないから何度も繰り返すのだ。1周目で完璧を求めて単語帳とにらめっこするより、ある程度の暗記度で1周目を終わらせて、2周目以降で覚えられなかったところを詰めていくほうがよほど効率が良い。具体的には、単語帳は1周目を2ヶ月で終わらせてしまおう。しんどいように思えるが、見出し語はどの単語帳もだいたい2000語ぐらいなので、1日あたり30語程度で良い。そう考えると割とできそうではないか。2周目以降はかかる時間はどんどん減っていくし、最終的には1日で1周できるようになる。その頃にはほぼすべての単語が覚えられているだろう。


文法はどれくらい必要か

文法は単語の次に重要だが、意外と軽視している人が多いような気がする。海外育ちだか留学経験がある人だかが「文法知識なんて重要じゃない」と言っているのを真に受けているのだろうか。あれは文法に囚われすぎて実践的な訓練ができていない人に対して「文法を理解することは大事だけど、もっとのびのびやっていいんだよ」と言っているだけで、文法なんかどうでもいいと言っているわけではない。文法を理解できていないと、英文の意味を単語から推測することしかできず、明確な根拠に基づいて正しく読み解くことが一生できない。英語を読み、書き、聴き、話すためには、英文法の学習は絶対に外せないのだ。

ならば受験ではどうか。勿論重要なことには変わりない。ただ、マイナーすぎたり古すぎて形骸化している知識まで教えられてしまっていることもある。早慶上智やMARCHなどの私大は細かい文法知識を問うことも多いが、国公立大はたとえ東大や京大でもほとんど問われることはない。むしろ基礎的な文法をどの程度理解でき、使いこなせるかを問う傾向にある。だから、難関大受験生は「総合英語」とついた文法書を端から端まで暗記したり、4択の文法問題集を一問一答形式で解いたりするのではなく、基礎的な文法事項を他人に説明できるまで理解し、それを読解や英作文に応用する訓練をしていかなければいけないのだ。

そう考えると、文法書でおすすめできるものは本当に少ない。実力のある講師に習うのが最も良いだろう。問題集は配列がランダムなものを使うと良い。文法事項ごとに整理されているものはなんとなく答えがわかってしまう物が多く、時間の無駄である。


長文問題は精読と速読どちらも意識

知っての通り、長文問題はどの大学の入試問題でもほぼ確実に登場する上に配点が高い場合が多いので、受験生は絶対にできるようになっておかねばならない。長文といえども所詮は英文の集合でしかないので、一つ一つの英文を正確に読めれば全体としても正確に読めることになる。だから、まずは精読を心がけよう。最初のうちはいくら時間がかかっても構わない。その代わり、最初から最後まで何が書いてあるか全訳できるまで理解し、すべての問題を正答できるようにしよう。精読ができるようになるためには、大前提として一定の単語力と文法力は必要で、加えて英文読解(解釈)が重要である。倒置や省略などの文構造を捉えるには、一般的な文法学習では足りない。英文読解(解釈)の問題集で慣れておく必要がある。

それができるようになってきたら、次は速読の訓練だ。解いたことがある人はわかるだろうが、東大や早慶の入試問題は完全に時間との勝負である。上記のやり方で挑んでも、どう考えても間に合うわけがない。まあ最近はどの大学もそんな感じで、むしろ精読と和訳を重視する京大の入試問題が特殊なのだが。そんな昨今の入試問題に対応するためには、英文は早く読めなければいけない。具体的に言えば読み方を変えるのだ。
例えば雑誌なんかを読む際、一文一文を真剣に読む人はそう多くないだろう。どちらかと言うと流し読みする人のが多いはずだ。そんな感じで英文も読めばいい。適当に読めと言いたいわけではなく、マクロな視点に立って英文を読み、英語を英語のまま全体の大まかな意味を理解するということだ。もっと簡単に言うと、我々日本人が日本語を読むのと同じスタンスで英語を読むのを目指すのである。この読み方を会得するための訓練として、文章の要約をするのがおすすめだ。全文、あるいは段落ごとのどちらでも良い。実用的な面で考えても、英文を読むたびに毎回構造分析なんかしていたらきりが無い。和訳や説明を求められたところは精読し、それ以外の重要でない部分は速読するのが良いだろう。


英作文は平易な表現で書く

ほとんど見出しで完結しているが、英作文は極力簡単な表現を使おう。小難しい表現を使おうとすると単語や文法のレベルは当然上がり、語法も細かいところまで知っていなければならなくなる。浅い知識で気取って洒落た文を書こうとしても、自分ではうまく書けたつもりでも減点されてしまいもったいない。どれだけ拙い文章だろうが文法的に正しく書けていれば減点されないので、自分が確実に知っている範囲の知識だけで書くことを心がけよう。


リスニングは発音が大事

特に東大受験生はリスニング対策は必須である。技能が他と独立しているので放置されがちであるが、リスニングは日常的に訓練しないとなかなか伸びない割に落ちるのは早い。
リスニングでちゃんと聞き取れるようになるには、正しい発音を把握することが重要である。竹岡先生は「発音記号は読めなきゃいけない」とおっしゃっていたし、予備校の授業では珍しく全員に音読させていた。自分はリスニングの問題を解いたあと、書き起こしを見ながら音声と同じ速さで発音を意識して読み、同時並行で英文を和訳する、というのをやっていた。




最後に

昨今の大学入試において、英語は最も重要な科目であろう。そのため、苦手なまま放置していると相当痛い目を見ることになる。

英語が嫌いに人に読んでほしいのだが、英語ができるようになることのメリットは大きい。大学では学術書の翻訳が必ずあるわけではないし、仮にあっても原書を読む人は多いから必然的に英語は読めないといけない。また、小説も翻訳家を通さずに読んでみることで作者の伝えたいことがストレートに伝わり面白かったりする。論文を書く際は基本的に英語だし、SNSにしろ対面にしろ外国人とコミュニケーションをとる際は英語が使われることが圧倒的に多い。

このように、グローバル化が進む現在では、英語ができるということは自分の世界や居場所を広げることに直結するのである。単純に考えて、使える言語が増えるということは、それを通じていままで考えもしなかった新しい知見を得られるチャンスなのである。そう考えると、英語学習はある種最もやりがいのある勉強と言えるのではないだろうか。

今やっている英語の勉強は決して無駄になることはなく、教養という皆さんの貴重な財産になることだろう。頑張ってください。






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